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老友ニュース


秋、こんなおじいさんになりたい!
 

 お年寄りに喜んでもらおうと、東京都豊島区の「区民ひろば・千早」という地域の寄り合い所が、近所に住む落語家に声をかけた。寸志で快諾してくれたという。

 三遊亭円窓は「権兵衛狸」を終わりに短く演じただけで、身近な話に終始して、およそ一時間も、大入りの客席を沸き返らせた。

 円窓とさかんに掛け合っていた93歳の老婆は「こんなに笑ったのは久し振りだよ」と、大きな声を上げた。「もう、落語をしなくてもいいよ、十分だよ」

 彼が真打に成り立ての頃、上野鈴本演芸場で、客席の酔った客を叱ったのを目撃した記憶がある。客と交流するなど、信じられないことだった。年輪を重ねた功績に違いない。「今日はお年寄りだったからね」と、こともなげに言ってはのけたけれども。

「認知症の予防には、笑うのが一番。テレビはいけませんよ。ぼーっと見てるだけだから」

 しかし、そのテレビも、ぼーっと見てるだけに終わらせない、考えさせるものもある。

 NHKの「プロフェッショナル」100回記念番組に、柳家小三治が出演。毎回のプロフェッショナルと違って、まるで力みがなく、にんまりと「リウマチになったおかげ。人の痛みがわかるようになった、いや、ほんとに痛いんだ」

 私事で恐縮ながら、楽屋へ出入りできるようになって、うれしがっていた頃、「あんまり来ない方がいいよ。来ているときは、みんな、よいしょしてるけど、帰った後は、みんな、手の裏を返したような、悪口なんだから」と、忠告してくれた、真面目青年だった。円窓も「家が鉄工所だから」といって、にこりともしない堅物だった。

 小三治が、さん治、円窓が、吉生を名乗って、二つ目だった時代、もうなくなった上野本牧亭で、「二人会」を開いていて、将来を嘱望されていた。いま、ともに68歳になった。

生き仏になり、やがて、仏様になって

 「70歳代は最高だと思いますよ。いろんなことがわかって、体力はなくなって……」と、「生活ほっとモーニング」という番組(NHK)に出て、笑っていた緒形拳が71歳で亡くなった。70歳代に入ったばかりで――これが人生というものなのだろう。「いまを生きようと思う。過去でもなく、未来でもなく」といっていた言葉が重い。

 最後の出演となったテレビドラマ「帽子」(NHK)を観た。老いが主題だった。

 「どう演じるか、何も演じないことです。下手だなあなんていわれるようだと、最高ですよ」

 どう笑わせるかを長年追い求め続けた小三治も、その答は「笑わせようとしないことだ」と、悟ったそうだ。「笑わせよう、笑わせようとして、笑ってもらうんじゃなくて、自分なりに、自然に話していて、それを聞いていて、ふっと笑ってしまったとき、お客さんは幸せなんだと思うんですよ」

 小三治と緒形拳がいっていることは同じこと。加齢が得させた知恵といえるのではないだろうか。

 老いて、こういう、含蓄のある至言を吐けてはじめて、長いこと生きて来た意味がある。こんな年寄りになって、「長老」と呼ばれてみたい気がする。

(の)