同友会メディカルニュース

2026年10月号
肺炎球菌ワクチン接種 – アップデート2026 –

はじめに

肺炎は、日本人の死因として2025年では「5番目」になります(図1)1)。成人の市中肺炎で「最も頻度が高い原因菌」は肺炎球菌とされています。肺炎球菌感染症の内、髄液や血液など本来無菌である部位から検出された場合、侵襲性肺炎球菌感染症(IPD)と言われ、死亡率が増加します(成人患者の約22%死亡)。また、肺炎の罹患率は特に65歳以上で上昇し、死亡率も増加します。

図1主な死因の構成割合(2025年)
図1:主な死因の構成割合(2025年)

肺炎球菌とは

肺炎球菌は、人の鼻やのどにすみつきやすい細菌で、多くの人が気づかないまま「保菌」していることがあります。唾液などのしぶきでうつり、主に肺炎、中耳炎、副鼻腔炎、髄膜炎、菌血症などの重い感染症になり得ます。 特に、乳幼児と高齢者、免疫が弱っている人で重症化しやすいことが知られています。

予防とワクチン

肺炎球菌感染症はワクチンである程度予防できます。小児向けワクチンと高齢者向けワクチンを国が定期接種として位置づけており、日本ではワクチン導入後、重い肺炎球菌感染症の患者数が大きく減ったと報告されています。

どんなワクチンか

肺炎球菌ワクチンは、肺炎や敗血症、髄膜炎などの重い「肺炎球菌感染症」を防ぐためのワクチンです。特に高齢者や持病のある人、小さな子どもで重症になりやすいため、日本では定期接種として広く使われています。日本では成人用に「ポリサッカライドワクチン」と「結合型ワクチン」があります(図2)。

図2ポリサッカライドワクチンと結合型ワクチンの相違点
項目 ポリサッカライド 結合型
抗原 多糖体のみ 多糖体+タンパク質
免疫反応 T細胞非依存性 T細胞依存性
乳幼児への効果 弱い 強い
免疫記憶 つきにくい つきやすい
医師のイラスト

肺炎球菌のコンジュゲートワクチンは抗体をつくることに加えて、
体内にメモリーB細胞をつくり「免疫記憶」をつけることができます。

図2:ポリサッカライドワクチンと結合型ワクチンの相違点
  • これまでに肺炎球菌に感染したことがあり、体内にメモリーB細胞が存在する場合、ポリサッカライドワクチンの接種によってIgG抗体が産生されることがあります。
  • 抗体にはIgMやIgGなど複数の種類がありますが、好中球などが肺炎球菌をより食べやすくなるようにはたらいてくれるIgG抗体が重要です。
  • 矢田純一:「2章 4. 免疫グロブリン」「2章 5. 免疫グロブリン各クラスの特性」「7章 8. 抗体産生」「12章 1. 好中球の貪食作用」
  • Pollard, A. J. et al.: Nat Rev Immunol 9(3): 213, 2009
  • 医系免疫学 改訂16版, 中外医学社: 23, 27, 236, 509, 2021

ポリサッカライドワクチン

多糖体だけをそのまま使ったワクチンで23価肺炎球菌ワクチンは莢膜ポリサッカライドだけを抗原にしています。主にB細胞が直接多糖体を認識する「T細胞非依存性」の免疫反応で、免疫記憶がつきにくく、時間とともに抗体が下がりやすく、再接種してもブースター効果が弱いことがあります。{注:ブースト、ブースター効果は、一度作られた免疫機能が再度抗原に接触することにより、さらに免疫機能が高まること(ブースト)を期待する追加免疫効果(ブースター効果)}

結合型ワクチン(コンジュゲートワクチン)

多糖体をタンパク質に結合させることで「T細胞依存性」の免疫反応に変え、抗体が上がりやすく、複数回接種でしっかりブーストされます。集団で広く接種すると、保菌が減り「間接効果」として他の年齢層の発症も減らすことが知られています。生後2か月などの乳児からでも有効に働くよう改良されています。

定期接種

2014年10月1日より23価肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチン(PPSV23, ニューモバックス®NP)の成人を対象とした予防接種法に基づく定期接種が開始され、65歳の者及び60歳以上65歳未満で日常生活が極度に制限される程度の基礎疾患を有する者等を対象に、PPSV23を1回接種することとなりました。その後、2024年10月から20価結合型肺炎球菌ワクチン(PCV20,プレベナー20®)が小児定期接種ワクチンとなり、2025年10月23日に開催された第71回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会予防接種基本方針部会において、カバーする血清型の割合、有効性、安全性及び費用対効果の知見を踏まえ、定期接種ワクチンからPPSV23を除きPCV20を用いることが結論されました2)。

肺炎球菌ワクチンの血清型カバー率

肺炎球菌性肺炎の国内多施設共同研究では、2011〜14年、2016〜17年、2018〜20年の3期間におけるPCV13、PCV15およびPCV20の血清型カバー率が報告されており、PCV13では52.7%、30.4%、38.5%、PCV15では55.8%、34.5%、43.3%、PCV20では71.0%、50.0%、59.6%でした3)。また、2019年〜22年の肺炎球菌性肺炎におけるPCV15、PCV20、PPSV23およびPCV21の血清型カバー率は、全年齢でそれぞれ28.0%、43.7%、44.1%および71.9%であり、65歳以上ではそれぞれ28.2%、42.8%、42.6%および72.3%でした4)。PCV15,PCV20,PPSV23,PCV21の血清型カバー率はPCV21がPCV15,PCV20,PPSV23より約30%高く、IPDにおいてはPCV20はPCV13およびPCV15より高く、PCV21は更にPCV20より高かったです。

65歳以上の成人に対する肺炎球菌ワクチン接種に関する考え方

(日本呼吸器学会 感染症・結核学術部会ワクチンWG/日本感染症学会ワクチン委員会/日本ワクチン学会・合同委員会)5)

今回、2026年度から高齢者の定期接種ワクチンがPPSV23からPCV20に切り替わることを受け、「65歳以上の成人に対する肺炎球菌ワクチン接種に関する考え方」第8版が公表されました。これは今後、定期接種ワクチンが変更されるまでの考え方を示すものです。

  1. 2026年度からPPSV23が定期接種ワクチンから外れ、PCV20が定期接種ワクチンになりました。
  2. 65歳の者及び60歳以上65歳未満で日常生活が極度に制限される程度の基礎疾患を有する者等を対象とした定期接種率を高めるため、接種対象者に対し医療関係者が医学的観点に基づき積極的に定期接種を勧奨することが必要です。
  3. 21価結合型肺炎球菌ワクチン(PCV21, キャップバックス®)が2025年8月に国内で高齢者とハイリスク者に対して薬事承認され、現在、定期接種化に係る検討が行われています。

2026年4月以降の肺炎球菌ワクチン接種の実際(図3)

1)肺炎球菌ワクチン未接種者について

PPSV23、PCVいずれも未接種で、65歳の者等及び60歳以上65歳未満で日常生活が極度に制限される程度の基礎疾患を有する者がPCV20の定期接種の対象となります。定期接種対象とならない未接種者では、任意接種としてPCV20またはPCV21の接種が考えられます。また、図中には示していませんが、PCV15-PPSV23の連続接種の選択肢も考えられます6)。PCV15とPPSV23の接種間隔については、1年から4年が適切と考えられます6)。第7版以降、高齢者におけるPCVの利用が拡充されたことから、PPSV23接種後の同ワクチンの再接種を原則として選択肢としません。

図365歳以上の成人に対する肺炎球菌ワクチン接種の考え方(2026年4月)

(日本呼吸器学会/日本感染症学会/日本ワクチン学会 合同委員会)

図3:65歳以上の成人に対する肺炎球菌ワクチン接種の考え方(2026年4月)

2)肺炎球菌ワクチン既接種者について

過去に定期接種としてPPSV23を接種した者は、原則として定期接種の対象外となります。PPSV23あるいはPCV13/PCV15/PCV20を接種した場合、接種から1年以上の間隔を置いて、PCV20あるいはPCV21を接種することができます7)。また、過去に任意接種による肺炎球菌ワクチン接種歴のある65歳の方で、個別通知が送付されていない場合は、定期接種を受けることができるかどうかについて、居住する市区町村へお問い合わせください。

文献

  1. 厚生労働省政府統計:令和7(2025)年人口動態統計月報年計(概数)の概況https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/nengai25/index.html
  2. 第71回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会予防接種基本方針部会 (2025年10月23日).高齢者に対する肺炎球菌ワクチンについて(https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001589553.pdf)
  3. Maeda H, et al. Long-term impact of pneumococcal conjugate vaccines for children on adult pneumococcal pneumonia in Japan; two multicenter observational studies from 2011 to 2020. Vaccine. 2022;40:5504–12.
  4. Maeda H, et al. Serotype-distribution among adults with community-acquired pneumonia in Japan between 2019 and 2022: A multicenter observational study. Human Vaccin Immunother. 2025;21:2518847.
  5. 日本呼吸器学会 感染症・結核学術部会ワクチンWG /日本感染症学会ワクチン委員会/日本ワクチン学会・合同委員会.「65歳以上の成人に対する肺炎球菌ワクチン接種に関する考え方(第8版2026年6月15日)
  6. Azuma M, et al. Safety and immunogenicity of sequential administration of PCV13 followed by PPSV23 in pneumococcal vaccine-naïve adults aged ≥65 years: comparison of booster effects based on intervals of 0.5 and 1.0 year. Vaccine. 2023;41:1042-9.
  7. Kobayashi M, et al. Use of 21-valent pneumococcal conjugate vaccine among U.S. Adults: Recommendation of the advisory committee on immunization practices–United States. MMWR Morb Mortal Wkly Rep. 2024;73:793-8.

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