コラム

救急車を呼ぶ前に

救急車を呼ぶ前に

9月9日は“救急の日”、そしてその日を含む1週間は“救急医療週間”とされ救急医療に関する様々なイベントが全国で開催されます。

救急出動件数は年々増加傾向にあり、今後人口が減少しても出動件数は増加を続けると予測されています。因みに東京消防庁管内における2021年の出動件数はおよそ74万件で、1日平均2038件、42秒に1回救急車が出動していました。出動件数が増えるにつれ現場までの到着時間も病院へ収容される時間も長くなっています。また、救急車で搬送された人の重症度を調べると約45%が入院の必要がない軽症でした。このことは、救急車を必要でない人の利用が多く、真に緊急を要する重症者への対応が遅れてしまった可能性も示唆されます。そのため救急車の適時・適切な利用が極めて重要です。

そこで、”救急車を呼ぶか” “今すぐ病院に行った方がいいか” などの判断に迷った時は、先ず救急安心センター事業の電話相談窓口(#7119)に電話をして専門家の判断を仰ぐことをお勧めします。窓口では “緊急性がある症状なのか” “すぐ病院へ行く必要性があるか” などを判断します。緊急性が高い場合は救急出動に繋ぎ、緊急性が高くないと判断された場合は受診可能な医療機関や受診のタイミングなどをアドバイスしてくれます。その他 “どこの病院へ行くのかがわからない” 時にも受診可能な医療機関を紹介してくれます。

#7119は救急車の適正利用に繋がるだけでなく、隠れた重症者を発見して手遅れにならないように救急搬送を行う役割も担っています。しかし#7119が利用出来ない地域もあります。その際は、全国版救急受診アプリ(Q助;キュー助)、東京版救急受診ガイド、こども医療でんわ相談(#8000)などを利用しましょう。

なお、次の様な場合は至急救急車の要請が必要です。

  • 意識障害:意識がない(返事がない)、意識がおかしい(もうろうとしている)
  • けいれん:けいれんが止まらない
  • けが・やけど:大量の出血を伴うけが、広い範囲のやけど
  • 吐き気:冷や汗を伴うような強い吐き気
  • 誤飲:物をのどに詰まらせ呼吸が苦しい、あるいは意識がない
  • 事故:交通事故、転倒・転落で強い衝撃を受けた、水に溺れている
  • 頭:突然の激しい頭痛、突然の高熱、立っていられない急なふらつき
  • 顔:顔半分が動きにくい、しびれる、笑うと口や顔の片方がゆがむ、上手く話せない
  • 視野:見える範囲が狭くなる、物が二重に見える
  • 胸・背中:突然の激痛、胸の圧迫感・締め付けられる痛み、急な息切れ、呼吸困難
  • 手足:突然のしびれ、片方の腕や足の脱力(力が入らない)
  • おなか:突然の激しい腹痛、吐血(血を吐く)、下血(便に血が混じる)、黒色便
  • その他、いつもと様子が違う場合

判断に迷う時は、直ちに#7119に連絡して相談することがとても大切です。

産業医 佐藤 潤一