新緑が眩しく風薫る5月は明るく健康的なイメージがあります。しかし、実際には何となく気怠い、気分が落ち込むなど健康不良を訴える人が少なくありません。春は学校では入学、進級、クラス替え、社会人では入社、転職、転勤、異動など生活環境が大きく変わる季節です。
人は環境が変化した際には新しい環境に早く適応出来るように無意識のうちに無理をしていてストレスが生じます。通常は自律神経である交感神経と副交感神経がバランスを取りながら心身の状態を調整していますが、ストレスが大きすぎると自律神経のバランスが崩れ倦怠感、疲労感、不安感、食欲低下、睡眠障害など様々な症状が出てきます。
4月の生活環境の大きな変化で生じた過度なストレスの結果、ゴールデンウイーク明けごろから所謂“5月病”と呼ばれる健康障害が起こります。さらに、この様な体調不良は実際に転職や異動した人だけでなく、新人や転入者を迎え入れる、上司が交代したことなどで環境が変わった人にも起こることがあります。
5月病などの健康障害はどの年代にも起こりますが、男性では30歳代が最も多くおよそ3割、20歳代の女性では何と4割の人に経験があるとの報告もあります。
さて、生活環境が大きく変わった際に健康障害を防止するためにはストレスをため込まない事が基本です。
先ず睡眠不足にならないこと、ウォーキングなど適度な運動を続けること、ストレッチなど筋肉を弛緩させる運動も効果的です。朝食をしっかり食べることや栄養のバランスを考えた食事をすることも重要です。お風呂はシャワー浴ではなく湯船にゆっくり浸かることも疲労回復、リラクゼーションに有効です。休日はしっかり休み、趣味やスポーツなど好きなことに取り組みオンオフを切り替えましょう。また、家族や仲の良い人とおしゃべりをすることや、健康状態について相談することも大切です。
しかし、このような予防策を行っても症状が改善しない場合、特に“気持ちが落ち込み一日中悲しい” “物事に何も興味が湧かない” “眠れない” ことが2週間以上続く、遅刻や欠勤が目立つ、日常生活に支障が出ているような場合は適応障害やうつ病などメンタル疾患に進行している可能性があります。そのため、心療内科、精神神経科など専門の医療機関を早めに受診する必要があります。
大きな環境の変化があれば誰にでも5月病などの健康障害を生じることがあります。ご自分だけでなく体調不良を疑う人がいた際には声をかけて話を聞いてあげることがとても大切です。なおその時には聞き役に徹し自分の考えを押し付けないこと、一人で解決出来ない場合は専門家に繋ぐことがとても大切です。
早めの気づきで5月を爽やかな季節にしましょう。
産業医 佐藤 潤一