感染性胃腸炎はウイルスや細菌などの感染で消化器症状を起こす病気の総称です。
一年中発症しますが、ノロウイルスなど低温と乾燥を好むウイルスでは、毎年11月から発生が増え1月をピークに3月過ぎまで流行が続きます。
主な感染経路は、1)汚染された二枚貝(カキ、アサリなど)を生食あるいは十分に加熱調理しないで食べた場合、2)感染者が食品を扱った際に、その人の手から食べ物にウイルスが付き、それを食べた場合、3)感染者の嘔吐物や便を触った手や手で触れたもの(ドアノブ、手すりなど)を介して口に入った場合です。さらに、感染者の便や嘔吐物が乾燥して空気中にウイルスがまき散らされて、それを吸い込み感染する場合もあります。最近では食品から感染することより、感染した手指や環境を介して感染することの方が多くなっています。
潜伏期間は病原体により異なりますが、ノロウイルスでは1-2日です。ノロウイルスによる胃腸炎の主な症状は吐き気、嘔吐、腹痛、下痢、発熱であり、小児では嘔吐、成人では下痢が多い傾向があります。そしてそれらの症状はおよそ24-48時間続きます。
治療方法は特別なものはなく、安静にして、脱水にならないように水分を補給すること、整腸剤など対症療法が基本です。なお、幼小児や高齢者では下痢などで脱水症を起こすことや、嘔吐物が喉に詰まり窒息することや気管に入り誤嚥性肺炎を起こす危険性もありますので体調の変化に注意が必要です。症状が酷い場合は、早めに医療機関に連絡して受診などの相談をすることが必要です。
予防方法の基本は手洗いをこまめに行うことです。外出から帰った時、調理や食事の前、排便後などは必ず石鹸を付けで20秒以上かけて丁寧にすり込み、流水で洗い流し、清潔なタオルなどでふき取りましょう。
また、カキなどの二枚貝は中心部まで十分に加熱(中心温度85度以上で90秒以上)すること、調理器具は熱湯消毒や塩素消毒をするようにしましょう。さらに、野菜や果物などの生鮮食品は十分に洗浄することも大切です。
2次感染予防のため、処理の際はマスクや手袋を着用し、便や嘔吐物には直接触れないこと、使用した器具などは塩素消毒するなどの注意が必要です。
感染性胃腸炎にかかった場合、法律では登校・登園、出社停止などの定めはありません。しかし、症状が回復しても1週間から長い場合は1か月間も腸内にウイルスが留まっており大便とともに体外に出て第三者に感染する可能性があります。人から人への感染力は極めて強く施設内などで爆発的に流行することがあります。そのため、自覚症状が治まっても体調が十分に回復するまでは自宅安静が望ましいと考えられます。
産業医 佐藤 潤一