コラム

夜の睡眠の先取り、パワーナップの効果

夜の睡眠の先取り、パワーナップの効果

食事の後に眠たくなることがよくあります。食事をするとレプチンというホルモンが分泌され消化吸収を促進するとともに脳の働きを抑えるため眠気が起こるのです。体内時計が作り出す睡眠・覚醒リズムは、夜中の午前2時から4時と午後2時から4時ごろに覚醒リズムが低下して睡眠を促します。午前中の活動による疲れ、レプチンの作用、そして体内時計の影響が重なることで昼食後に強い眠気が現れます。昼食後の睡魔と戦うことは、思考回路や作業効率などに悪い影響を与えるだけでなく、怪我や事故を起こす危険性もあるため好ましいことではありません。

近年パワーナップと呼ばれる昼間に短時間の睡眠を行うことが認知能力、注意力、疲労回復などに有効であることが実証されています。さらにパワーナップはストレスの解消、血圧の低下作用、心疾患や認知症などの予防効果もあることが報告されています。

さて、パワーナップは単に昼寝をすればよいことではなく、効果的に行うための注意点が幾つかあります。

一つ目は夕方近くになると夜の睡眠に影響するため、昼食後、遅くても午後3時までに行うことが重要です。また睡眠時間は20分程度が最も効果が現れます。30分以上になると深い睡眠となり寝覚めが悪くなるとともに、夜の睡眠にも悪影響を与えます。スマホなどのタイマーをかけて確実に目覚めることが大切です。また、カフェインは飲んでから覚醒効果が出るのに20-30分程度かかるためパワーナップの直前にコーヒーや緑茶などを飲むと気持ちよく目覚めることが出来ます。コーヒーなどが好きな方にはお勧めです。

次に場所はどこでも構いませんが、机に伏せたり椅子にもたれかかるなど楽な姿勢をとること、ネクタイを外したり衣服や髪を緩めたり靴を脱いだりして身体の締め付けを減らしましょう。照明を暗くして、うるさすぎず静かすぎない環境が良いのですが、オフィスなど多くの人がいる場合は、アイマスクの着用やイヤホンなどで静かな音楽を聴くことが推奨されています。

最後にパワーナップの終了時にストレッチや軽い運動をすること、冷たい水で顔を洗うこと、さらに日の光は覚醒効果を強くしますので可能であれば屋外に出ることをお勧めします。

一般的に睡眠のリズムは12時間周期ですので、パワーナップは生体リズムに沿った自然な眠りと考えられます。また、パワーナップで眠気が減り午後の活動量が増えると脳と身体が疲れます。これらの結果からパワーナップを行った日は夜の睡眠の質が高くなり、翌朝の寝覚めも良くなると言われています。

熱帯夜で寝苦しい季節ですがパワーナップを行い夜の睡眠を先取りして健康に過ごしましょう。

産業医 佐藤 潤一