コラム

11月14日は World Diabetes Day

11月14日は World Diabetes Day

現在世界各国で糖尿病の患者数は増加の一途をたどっています。2021年の時点で糖尿病の成人は世界でおよそ5億3700万人おり、これは世界の成人の10人に一人の割合です。今後さらに増え続け20年後の2045年には7億8300万人に達すると予測されています。2021年の統計では糖尿病が原因で670万人が死亡しており、5秒に一人が糖尿病に関連する疾患で命を落としていることになります。さらに、糖尿病の治療や人工透析など合併症の管理にかかる医療費は9660億ドル、世界のGDPのおよそ1%を占めています。これは我が国の2022年度予算の1.5倍に相当する金額です。

このような糖尿病の脅威に関する国連決議が2006年に採択され11月14日をWorld Diabetes Day(WDD)にすると定めました。膵臓から分泌されるインシュリンというホルモンが血糖値を下げることを発見したフレデリック・バンティング博士の誕生日に因んでいます。WDDのシンボルはブルーサークル(青色の輪)ですが、国連のシンボルカラーとどこまでも続く空を表すブルー(青色)と団結を表すサークル(輪)で、“糖尿病に対して団結しよう”ということを意味しています。WDDを周知する目的で毎年11月14日には世界各国の有名な建物がブルーにライトアップされます。我が国でもライトアップとともに市民向けの啓発イベントなどが全国各地で開催されます。

さて、2019年の厚生労働省の調査によれば男性の19.7%、女性の10.8%、全体ではおよそ1000万人が“糖尿病が強く疑われる”と判定され、予備軍も含めると2000万人いると推定されていますが、実際に治療を受けている人は580万人に留まっています。

健康診断で血糖値が高く要受診と判定された方の23%が未受診、受診をしたものの治療をしていない或いは治療を中断した未治療群と合わせるとおよそ4割の人が放置しており、中でも30歳代では6割におよぶとの報告があります。

糖尿病は初期の段階では自覚症状がないことが多いですが、経過とともにさまざまな症状が現れてきます。現在我が国で人工透析導入や失明の原因疾患の1位が糖尿病です。また、糖尿病の合併症として虚血性心疾患(心筋梗塞など)や脳卒中(脳梗塞など)も認められますが、いずれも重症の場合は重い後遺症や命に係わる危険性も少なくありません。そのため、早期発見、早期治療をすること、更に治療を継続することが極めて重要です。

WDDの機会に先ずご自分の健診結果を確かめること、すでに糖尿病で治療を受けている方も今までのデータを見直すことが糖尿病の発症予防や進行阻止に役立ちます。糖尿病と旨く付き合い健康寿命を長くしましょう。

産業医 佐藤 潤一