コラム

家庭血圧は重要です

家庭血圧は重要です

血圧は心臓から送り出される血液が動脈を流れる時に血管の内側の壁にかかる圧力のことです。血圧が高い状態(高血圧)が長く続くと動脈硬化の進行が早くなり狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患、脳出血や脳梗塞などの脳卒中、さらに心臓肥大を起こし心不全など命に係わる病気を引き起こす危険性が高くなります。

そのため、血圧の状態を正確に把握して出来るだけ早い時期から血圧を高くしないことが重大な疾患の発症を防ぐために大変重要です。しかし、高血圧は自覚症状に乏しく一日の中でも常に変動し、気温、ストレスなどいろいろな環境因子でも変化するため一度の測定だけで血圧値の傾向を詳しく知ることは出来ません。また、健康診断、クリニックや病院での血圧値は高くなることが一般的で、診察室での血圧は必ずしも普段の血圧を反映していません。

近年市販の血圧計の精度が向上し、医療機関で測定することだけでなく家庭での血圧測定が非常に重要だと考えられるようになりました。家庭で血圧を測るメリットとしては1)環境や時間をほぼ一定にして同じ条件で測定できること2)血圧の変化を把握することでデータ管理が出来て健康意識が高まること3)気持ちが安定した状態で測ることが出来るので、より正確な数値がわかること4)クリニックや病院での数値と比べることで白衣性高血圧(白衣を見ると血圧が上昇すること)などの存在を知る手掛かりになることなどがあげられます。

さて、家庭血圧測定の注意点ですが、血圧計は上腕(二の腕)で測定する機器を選ぶことが大切です。手首や指で測る機器は正確性に問題があります。毎日同じタイミング、朝ですと起床後1時間以内で朝食や服薬前、夜ですと就寝前が推奨されます。測定前にトイレを済ませて、椅子に座って足を組まず、背もたれにリラックスした状態で1-2分安静にしてから測りましょう。なお、血圧計を巻いた腕は心臓と同じ高さにすることも必要です。一つのタイミングで2回測りその平均値を記録することです。また、出来れば1週間毎日測定してその平均を出すことも推奨されます。

家庭血圧における高血圧の基準は、“収縮期血圧(上の血圧)が135mmHg以上、かつ/または拡張期血圧(下の血圧)が85mmHg以上”です。そのため基準値以上の血圧が続く場合は早めに医療機関(内科)を受診することがとても大切です。

血圧は年齢に連れて上昇する傾向があり、男女ともに50歳を超えると半数以上が高血圧になると言われています。男性は女性より早く発症する傾向があるため、男性は30歳から女性は40歳から家庭での血圧を測定することが推奨されています。ある調査によれば血圧計の保有率は50歳代で38.0%、60-70歳代で65.5%と比較的高いのに対して、40歳代では26.5%、20-30歳代は10%台と保有率が低いのが現状です。しかし、血圧が高くない段階から血圧の状態を正確に知り、高血圧を発症させないことや早期に血圧の治療を始めることは生活習慣病を予防し健康寿命を延ばすことに極めて大切なことです。

体温計や体重計だけでなく血圧計も備えて日ごろからの健康管理を行うようにしましょう。

産業医 佐藤 潤一