近年スマートフォンの普及により多くの人がヘッドホンやイヤホンで音楽を聴くこと、動画を観ること、ゲームをすることなどを行っています。ある調査によれば直近1か月間でヘッドホンやイヤホンを使った人は約45%、特に20歳代では61%、30歳代で52%と回答しています。また、使用頻度は“ほぼ毎日”が最も多く、次いで“週4-5日”と“週2-3日”が同率の結果でした。
しかし、ヘッドホンやイヤホンを使い大きな音を長時間聞くと耳の奥(内耳)にある音の振動を脳に伝える役目をしている細胞(有毛細胞)が徐々に壊れ、最終的には死滅してしまい聴力低下(ヘッドホン・イヤホン難聴)が起こります。一度損傷した有毛細胞は再生しないため、聴力低下は基本的には回復しません。
このようなヘッドホン・イヤホン難聴は世界中で問題となっており、WHOによれば世界の若者(12-35歳)の約半数にあたる11億人が難聴になる危険性があると指摘しています。我が国でも最近10年間で10-30歳代の聴力が低下傾向であるとの報告があります。
ヘッドホン・イヤホン難聴は進行が穏やかで気が付かないうちに聴力が低下していくことが特徴です。そのため発見が遅れがちで自覚症状が出た段階ではかなり聴力が落ちていることが少なくありません。そのため、常日頃からの注意が非常に大切です。
WHOは安全なリスニング習慣としてヘッドホン・イヤホンの最大音量の60%以下に設定して80dB(15-34歳の若年者では75dB)の音量で1日6時間程度(週40時間)を上限とすることを推奨しています。因みに75dBは掃除機、80dBは走行中の電車内や救急車のサイレンの音に相当します。音量の目安としては、周囲の会話が聞こえる程度、周囲の人が話しかけた時に気が付けるレベルを維持しましょう。また、連続して聞かないように1時間に10分程度はヘッドホンやイヤホンを外して耳を休ませることも必要です。さらに、騒音下でも音量を上げずにすむ“ノイズキャンセリング”機能の付いたヘッドホンやイヤホンを選ぶことや、音量を確認できるアプリを使用することも効果的です。
なお、鼓膜を介さず頭蓋骨を振動させて内耳に音を伝える“骨伝導イヤホン”は従来のイヤホンより難聴になるリスクは少ないものの、大音量で長時間使用することで内耳にダメージを与え難聴や耳鳴りの原因になることもあります。いずれにしても注意して使用することが必要です。
ヘッドホン・イヤホン難聴の初期症状は高音域の音が聞こえにくくなることが一般的です。そのため、鳥の鳴き声や電話の着信音などが聞こえにくく感じます。また、周囲からの呼びかけに気が付かない、テレビの音を大きくしないと聞こえないなどの症状も現れます。また、スマートフォンの聴力を測定出来るアプリでもチェックが出来ます。日ごろから聴力の状態を確認するようにしましょう。
症状が現れる、セルフチェックで異常が認められた際には速やかに耳鼻咽喉科を受診して詳しい検査を受けることが必要です。
3月3日は“耳の日”です。聞こえ方に気を配るようにしましょう。
産業医 佐藤 潤一




























