同友会メディカルニュース

2012年1月号
食習慣改善はお菓子やジュース類を減らす事から始めましょう

外来などで、「どうやって減量したら良いのか」というご質問を良く受けます。真っ先に食事内容をどうするかを考える方も大勢いらっしゃいますが、その前にまず確認すべき事があると思います。以前のMedical News(2011年3月号)でも書きましたが、まず気をつけて頂きたいポイントを“7つのあ”とご説明しています。これは①甘いもの、②アルコール、③歩かない、④朝ご飯を抜く、⑤安眠の不足(睡眠不足)、⑥あまりもの・いただきもの、⑦脂っこいもの、です。今回は①甘いもの(お菓子・菓子パン・ジュースなど)についてのお話です。

肥満がない方を対象に、様々な生活習慣の要素が体重の増減にどの程度関係するのかを検討した研究結果が今年の6月に発表されました(*1)。飲酒や睡眠不足・過剰、テレビ視聴、運動量の減少なども体重増加に関わっていましたが、当然ながら食習慣は体重変化に大きく関わっていました。食習慣の要素で体重増加原因のトップ3はポテトチップス、ジャガイモ(特にフライドポテト)、加糖飲料でした。皆さんが真っ先に予想する赤肉は第4位でした。食事内容の改善も勿論大事ですが、それより先にジュース類やお菓子の問題を解決した方が良い事を示唆させる結果だと思います。

肥満の問題は全世界的な大問題であり、肥満対策のため、糖分や塩分、脂肪を多く含む食品に課税する動きが出てきています。ハンガリーでは今年9月よりスナック菓子や清涼飲料水など塩分や糖分が多い食品に課税する通称「ポテトチップス税」が導入されました。デンマークでは、今年10月から飽和脂肪酸が多い食品に課税する通称「脂肪税」が導入されていますが、糖分の多い食品に対しては2010年から課税をしています。肥満大国の米国では、コロラド州では糖質を含む清涼飲料水に対して課税をする、通称「ソーダ税」が2010年5月から開始されており、他の地域でも導入が検討されています。なお米国の研究でソーダ税による減量効果は、糖質入りの清涼飲料水全てに40%課税した場合で、1年間当たり平均0.59Kgの減量効果と試算されています(*2)。

日本人の肥満は増加しています(特に男性)。食の欧米化が原因であるとよく言われますが、沖縄県の現状はこれを端的に表しています。沖縄県は急激に食習慣が変化した結果、肥満も急激に増加しており、男性の半数近くが肥満です(日本全体では28.9%)。肥満は脳卒中や心筋梗塞といった動脈硬化性疾患や悪性腫瘍(肺がんなど一部を除く)を増加させます。このため、長寿の県であった沖縄県も今や平均寿命で全国平均を下回っています。“食の欧米化”と言うとまず“魚中心から肉中心への変化”ととらえる方も多いと思います。それもありますが、肥満増加の主犯はジャンクフードにあると思います(ジャンクフードには、ハンバーガーなどのファストフードだけでなく、ドーナッツ、ポテトチップス、ポップコーンなどのスナック菓子全般や糖質入りの清涼飲料水も含まれます)。これらのジャンクフードを「欲しくなってつい食べてしまう(飲んでしまう)」、「食べ始めると止まらない」という経験をした方は私を含め、かなりおられるのではないでしょうか?ジャンクフードを摂取していると薬物中毒にも似たジャンクフード中毒とも呼ぶべき状況になる可能性が示唆されています。動物実験ですが、ネズミを通常の餌とジャンクフードと同等の餌を与えるグループに分け、電気ショックを合図に食餌を中止するようにしたところ、通常餌では電気ショックで食餌を止めたもののジャンクフード餌では電気ショックを受け続けても食餌を続けました(*3)。現代ではジャンクフードの全くない食生活は考えにくいのですが、可能な限り減らしていくようにするのが減量の第一歩だと思います。私自身、過去に30Kgの減量経験がありますが、ジュース類とお菓子を摂取しないようにした事が最も効果が高かったと実感しています。

最後に人工甘味料について触れたいと思います。糖質入り清涼飲料水が肥満の元である事をお話ししてきましたが、では人工甘味料を使用したカロリーゼロの清涼飲料水ならば、お茶や水のようにいくら飲んでも太らないのでしょうか?それ自体はカロリーが非常に少ないので問題はあまりないように感じてしまいますが、実はそうではありません。動物実験では、ネズミを通常の餌と人工甘味料を添加した餌を与えるグループに分けて飼育した所、人工甘味料を添加したグループは食餌摂取量が増えて体重もより増加したと報告しています(*4)。あくまで動物実験ですので、これがそのまま人に当てはまるとは言えませんが、人工甘味料の問題として、甘味が強いもののカロリーがなく満足感を得にくいため、人工甘味料を取り過ぎると甘味を求めるようになってお菓子などを食べてしまったり、食事の味付けに影響したりして結果的に糖分をより多くとってしまう事が想定されています(*5)。人の研究でも人工甘味料が減量に有効とする確証は不十分であり、逆に肥満につながる事を示唆させる研究結果も散見します。カロリーが低いからと言って人工甘味料を頻回に摂取するのは控えた方がよいと思います。人工甘味料は上手に適度に利用しましょう。

イラスト

参考文献:

  • *1. Mozaffarian D, Hao T, Rimm EB, et al. Changes in Diet and Lifestyle and Long-Term Weight Gain in Women and Men. N Engl J Med 2011; 364: 2392-2404
  • *2. Finkelstein EA, Zhen C, Nonnemaker J, et al. Impact of Targeted Beverage Taxes on Higher- and Lower-Income Households. Arch Intern Med 2010; 170: 2028-2034
  • *3. Johnson PM, Kenny PJ. Dopamoine D2 receptors in addiction-like reward dysfunction and compulsive eating in obese rats. Nature Neuroscience 2010; 13: 635-641
  • *4. Swithers SE, Davidson TL. A role for sweet taste: Calorie predictive relations in energy regulation by rats. Behavioral Neuroscience 2008; 122: 161-173

同友会メディカルニュース / 医療と健康(老友新聞)

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