同友会メディカルニュース

2017年9月号
暑さ指数(WBGT)をもっと活用しましょう

例年、真夏になると日本のどの地域で最高気温が何度まで上がったとか、熱中症で何人搬送されたといったニュースをよく耳にします。今年も7月の熱中症による搬送者は統計開始以降最多になったと総務省消防庁からの発表がありました。8月に入って中旬までは比較的涼しい日が続きましたが、例年ですとお盆明けから9月にかけてもまだまだ熱中症になる方は多く、引き続き注意が必要です。

ところで、報道や天気予報を見ていると日中の「最高気温」にどうしても目が行きがちですが、実は熱中症の指標として気温よりも重要な「暑さ指数(WBGT)」というものがあることをご存じでしょうか?

暑さ指数(湿球黒球温度:WBGT=Wet Bulb Globe Temperature)は、1954年にアメリカで提唱された、熱中症を未然に防ぐことを主目的とした指標です。今では労働環境の指針としてその有効性が広く認められ、国際的に規格化されています。単位は気温と同じ摂氏度(℃)で表記されるのですが、実際のところその値は気温とはかなり異なります。

具体的には、WBGTは温度と湿度、輻射熱(ふくしゃねつ=地面や建物、体から出る熱)、風(気流)を総合的に評価したもので、構成比率は温度:湿度:輻射熱=1:7:2ぐらいなので、温度よりも湿度や輻射熱の方が大きく影響します。過去に東京で実際にあった2日間を比較してみると、最高気温が低くてもWBGTが高い日の方が熱中症で搬送された人がずっと多い事が分かります(図1)。

[ 図1 ] 2011年7月18日と8月15日の例(東京)
  7月18日 8月15日
最高気温 34.8℃ 33.2℃
最小湿度 42% 54%
WBGT 28.6℃ 30.2℃
熱中症搬送数 56人 100人

WBGTは日常生活に関する指針が定められていて(図2)、28度を超えると熱中症患者の発生率が急増することが知られています。都内では年0.4度の割合で上昇が続いていて、このままだと2020年東京オリンピックの開催期間は34度を超えるとする予測もあり、対策の必要性が指摘されています。

WBGT値を知るにはその場にWBGT温度計があれば一番正確ですが、環境省の熱中症予防サイトにある「暑さ指数(WBGT)の実況と予測」で自分が滞在する地点を調べたり、あるいは気温と湿度が分かれば関係表(図3)を用いて簡易的に算出することも出来ます。

[ 図2 ] 熱中症におけるWBGTの日常生活に関する指針
温度基準
(WBGT)
注意すべき
生活活動の目安
注意事項
危険
(31℃以上)
すべての生活活動でおこる危険性 高齢者においては安静状態でも発生する危険性が大きい。外出はなるべく避け、涼しい室内に移動する。
厳重警戒
(28~31℃)
すべての生活活動でおこる危険性 外出時は炎天下を避け、室内では室温の上昇に注意する。
警戒
(25~28℃)
中等度以上の生活活動でおこる危険性 運動や激しい作業をする際は定期的に充分に休息を取り入れる。
注意
(25℃未満)
強い生活活動でおこる危険性 一般に危険性は少ないが激しい運動や重労働時には発生する危険性がある。

日本生気象学会「日常生活における熱中症予防指針Ver.3」(2013)より

[ 図3 ] WBGT値と気温、湿度の関係表

WBGT値と気温、湿度の関係表

厚生労働省労働基準局より

仕事をする際には、「身体作業強度等に応じたWBGT基準値」が厚生労働基準局から示されている(図4)ので、基準を超える場合は冷房や除湿によって作業場所のWBGT値を低下させたり、現場のWBGT値でも許容しうる身体作業強度の低い作業に変更することが推奨されます。

[ 図4 ] 身体作業強度等に応じたWBGT基準値

身体作業強度等に応じたWBGT基準値

厚生労働省労働基準局より

気温だけを見て熱中症に備えようとすると、湿度や熱、換気等に対する注意がおろそかになり、今日は猛暑日ではないからと油断して危険な状態に陥りかねません。お出かけや屋内外で作業をするときは、これからは最高気温の予想だけではなく、暑さ指数(WBGT)がどれくらいになりそうかにも注意を払って対策を怠らないようにしてください。

参考になる情報サイト:

同友会メディカルニュース / 医療と健康(老友新聞)

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