同友会メディカルニュース

2022年1月号
循環器病対策、心不全治療の新たな展開

メディカルニュース2018年3月号では「心不全の予防とケアを推進しよう!」と題して、心不全が増加している事や心不全に対する予防・治療について概説しました。この記事の後にも、心不全をはじめとする循環器病疾患対策は進み、2019年12月には「脳卒中・循環器病対策基本法」が施行されました。同基本法は脳卒中、心筋梗塞、心不全などの循環器病の予防推進と治療体制の整備を進めることで、人々の健康寿命を延ばし、医療・介護費の負担軽減を図ることを目的としています。同基本法に基づいて2020年10月には「循環器病対策基本計画」(図1)が閣議決定され、今後はこの基本計画に従って、全国で循環器病対策が推進されていくことになります。

〔図1〕循環器病対策基本計画

図1 心不全治療アルゴリズム
(出典:厚生労働省、2020年)厚生労働省「循環器病対策基本計画」PDFを開く

循環器病には多くの疾患が含まれますが、心臓の機能がなんらかの障害を受けることで最終的に生じる「心不全」の予防や治療は大きな課題となっています。心不全パンデミックとも言われる中では、いかに心不全を悪化させず、入院治療へ至らずに済むようにできるかが大切になります。予防が重要であることは変わりありませんが、心不全になってしまった場合には、投薬によって状態をコントロールすることも重要です。

この慢性的になった心不全に対する経口薬のラインナップは、最近まで20年近く大きな変化がないままに経過してきたのですが、2019年にHCNチャンネル遮断薬であるイバブラジン(商品名:コララン)、2020年にアンジオテンシン受容体・ネプライシン阻害薬(ARNI)のサクビトリルバルサルタン(商品名:エンレスト)とSGLT2阻害薬のダパグリフロジン(商品名:フォシーガ)が新たに心不全の治療薬として保険収載され、心不全治療の実際に大きな変化をもたらしています。

この変化は心不全の日常診療に直結し重要な内容であったことから、日本循環器学会(JCS)と日本心不全学会(JHFS)が2018年3月に合同で発表した「急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)」を次回の改定を待つことなく「2021年JCS/JHFSガイドライン フォーカスアップデート版 急性・慢性心不全診療」として発表するに至っています。このガイドラインに示されている心不全治療のアルゴリズムを図2に示します。薬物治療の中で基本薬に加えてARNIへの切り替えやSGLT2の追加が示され、併用薬の中にはイバブラジンも入りました。

〔図2〕心不全治療アルゴリズム

図1 心不全治療アルゴリズム
画像をクリックすると大きな図が開きます

また、非薬物治療の中にある経皮的僧帽弁接合不全修復術は、僧帽弁という心臓の弁が逆流してしまう状態をカテーテル治療で治す方法になります。心不全では心臓が大きくなるために、弁が引き延ばされてしまう等により弁がきちんと閉まらなくなることで血液の逆流が生じ、そのことがさらに心不全を悪くしてしまうことがあります。経皮的僧帽弁接合不全修復術では、開胸術に比べて負担の少ないカテーテル治療で弁の逆流を治すことができ、COAPT試験という研究では心不全による入院を薬物治療に比べて47%減少したという結果も出ています。日本では2018年4月に保険適応となり、心機能が低下して重症な僧帽弁逆流がある方には、このような非薬物療法も検討していく必要があります。

この様に、心不全治療に新たな展開が起きていますが、基本は心不全にならないように予防していくことが大切です。喫煙や肥満対策はもちろんですが、健診による早期発見と危険因子の早期治療を行い、心疾患の最終形ともいえる心不全を防いでいきましょう。

参考文献

  • 2021年JCS/JHFSガイドライン フォーカスアップデート版 急性・慢性心不全診療
  • 日本循環器学会/日本心不全学会合同ガイドライン
  • Stone GW, Lindenfeld J, Abraham WT, et al. COAPT Investigators. Transcatheter Mitral-Valve Repair in Patients with Heart Failure. N Engl J Med 2018; 379: 2307-2318.

同友会メディカルニュース / 医療と健康(老友新聞)

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