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同友会メディカルニュース

2011年7月号
たかがコレステロール、されどコレステロール
― 閉経後女性の高コレステロール血症をどう扱うか? ―

人間ドックを受診される女性の多くはコレステロールのことをとても気にされている方が多いように感じています。閉経することで卵巣機能が低下し女性ホルモンの一つであるエストロゲンが減少すると、(悪玉)コレステロールが上昇しやすくなると言われています。面談していると「ここ一年間脂ものは全くといってよいほど控えてきたので、コレステロールが下がったのですね!」とか、「食事に気をつけて頑張ったのに…だめでしたか」などと、一喜一憂の会話が繰り広げられることも多いのも事実です。日本人間ドック学会ではこうした悩みを解決しようと、閉経後の女性を対象にして高コレステロール血症の予後調査を行いました。先月の雑誌でその内容(*1)が公開されましたので、概要をお知らせいたします。

この調査は2002年度から始まりました。40~75歳の閉経後の受診者で、血清コレステロール値が220~259mg/dlの方を対象にして5年間経過をみたのです。男性の方は対象外ですので、注意して読んでください。220~239mg/dlの人をA群、240~259 mg/dlの人をB群として5年間フォローしました。参加した人数は4000人余りですので、そこそこの規模の調査です。ただ、全員がフォローアップされた訳ではなく、その間にコレステロール値が260mg/dlを超えた方や人間ドックを受診されなくなった方は除外してあります。結局5年間経過を見ることができた方は1065名でした。

気になる結果ですが、以下の通りです。高コレステロール血症があった場合に一番問題となる心イベント(心筋梗塞、狭心症、心臓死など)はB群の1名だけで、A群では皆無でした。逆にA群では一過性脳虚血発作、脳梗塞を起こした人が各1名でした。我々は昨年の12月に配信した記事(*2)で、中性脂肪高値、non-HDL-C高値の女性では心筋梗塞になりやすい、中性脂肪だけが高い人は脳梗塞になりやすいというデータを紹介しました。non-HDL-Cというのは総コレステロールからHDL-コレステロールを引いた値です。ただ、人間ドック学会の調査では当初の総コレステロール値だけを問題にしており、中性脂肪とHDL-Cを加味して調査している訳ではないので単純に比較はできません。この調査では中性脂肪の平均値はA群では87mg/dl、B群でも102mg/dlと基準値の範囲内でしたし、non-HDL-C の値で190mg/dlを超えた方の多くは調査対象外になっていると思われました。つまり、経過観察した対象者は、コレステロールだけからみると、治療を要するような高いレベルでもないが、かといって基準値の範囲内にも入っていないという人と解釈できます。本研究では、総コレステロール値で220~259mg/dlまでの方に対して、薬物治療は必要ないのではないかと結論づけられていました。現在日本動脈硬化学会のガイドラインでは、総コレステロールではなくLDL-コレステロールを基準として、高血圧症、糖尿病、喫煙などの危険因子がない場合の管理目標値を160mg/dl未満としています(*3)。このLDL160mg/dlは総コレステロール240mg/dlにほぼ相当しますが、今後閉経後女性のコレステロール値管理目標値についてはもう少し緩和されるかもしれません。

強調しておきたいのは総コレステロールがわずかに高くても、高血圧症、糖尿病などの因子がなければ、脳梗塞、脳出血などの脳血管障害、心筋梗塞や狭心症などの虚血性心疾患などの発生は決して高くはないという事実が判明したことです。人間ドック受診者は健康志向の強い集団であるため、薬を服用するよりは食事をしっかり気を付けるなど、何とか高コレステロール血症を改善したいという意向が強かったのではないかと論文には述べてありました。

気になる食事療法ですが、医師が10人いれば10通りの方法があるかもしれません。私は次のように勧めています。まず、標準体重に近づけること。ただし標準体重より10kg以上太っている方には2~5kgの減量を試みること、標準体重以下の方にはもちろん減量は必要ないと指導します。一日の総カロリー量を抑えることに主眼を置き、そのために、まず間食をなくすこと。主食は軽めにして、野菜は毎食しっかりと摂取すること。逆に卵や脂肪分を全く摂らないようにすることは勧めてはおりません。あと念のために頚動脈超音波検査を受けて、動脈硬化の程度を評価しておくことも大事なことですし、判定に従って定期的にコレステロール値をチェックしておくことも必要です。

「高血圧症や糖尿病もなく、頚動脈の超音波検査でも動脈硬化の所見はありません。煙草を吸われるわけでもありません。ですから、あなたはコレステロールが少々高くても大丈夫ですよ。」と言う事も多々あります。「たかがコレステロール」ですが、「それでも心配なのです」と返されることもしばしば。「されどコレステロール」です。少々気にかけて食事療法で頑張る程度の方が一番健康かもしれないと思うこの頃です。

同友会からのご案内

引用文献、サイト:

  • *1 山門 實、他:人間ドックにおける閉経後高コレステロール血症についての予後研究調査(閉経後高コレステロール血症予後調査):人間ドック25、771-777、2011
  • *2 https://www.do-yukai.com/medical/index_2010.html
  • *3 http://www.nmt.ne.jp/~nagioo/sclerosis.htm

イラスト

同友会メディカルニュース / 医療と健康(老友新聞)

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