同友会メディカルニュース

2014年6月号
世界肝炎デーご存知ですか?

世界保健機構(WHO)は、2010年にウイルス性肝炎の蔓延防止、感染予防と感染者に対する差別偏見の解消を目的に7月28日を”World Hepatitis Day”(世界肝炎デー)と定めて、肝炎に対する啓蒙活動を世界中に呼びかけています。2014年の世界肝炎デーのテーマは、“Think Again”です。今回は7月28日を前にウイルス性肝炎についておさらいをしてみたいと思います。

肝炎は、肝臓に炎症がおこり、肝細胞が壊されて行く病気です。肝臓に炎症を起こす原因によって、ウイルス性肝炎、アルコール性肝炎、自己免疫性肝炎、薬剤性肝炎、脂肪沈着による非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)などがあります。また発症の仕方により、急性肝炎、発症後8週間以内に重篤になる劇症肝炎、6ヶ月以上炎症が持続する慢性肝炎に分類されます。

肝炎ウイルスには、A型、B型、C型、D型、E型などがあり、A型・E型肝炎ウイルスは主に水や食べ物を介して感染し、B型・C型・D型肝炎ウイルスは主に血液・体液を介して感染します。

WHOが世界肝炎デーで取り上げているのは、慢性化し放置すると肝がんや肝硬変となりうるB型とC型ウイルス性肝炎です。全世界でB型肝炎ウイルス感染者(体内にウイルスがいる人)は20億人、B型肝炎の罹患者(肝炎を発症している人)は5億人とされ、C型肝炎罹患者は1500万人に上ると試算されています。また年間150万人がB型、C型肝炎に関連して亡くなっていると推計されています。わが国の肝炎の原因の80%以上はウイルス性肝炎です。わが国の肝炎ウイルスの感染者はB型110-140万人、C型190-230万人と言われています。またその90%以上は40歳以上が占めています。B型でもC型でも急性肝炎の時には食欲不振、嘔気嘔吐、発熱、全身倦怠、黄疸などの症状がありますが、慢性肝炎ではほとんど自覚症状がないまま病気が進行し、かなり進行した状態で発見されることがあります。B型とC型肝炎ウイルスは共に血液を介して感染しますが、慢性化の頻度や肝がんの発生状況、治療法、予防法などに違いがあります。

B型肝炎ウイルス

主に血液・体液を介して感染します。以前は、B型肝炎の主な感染ルートは母子間(垂直感染)でした。乳幼児期にB型肝炎ウイルスに感染すると、ウイルスの持続感染者(キャリア)となることがあります。キャリアの10-20%が慢性肝炎へと進行して行きます。わが国では1986年にB型肝炎の母親から生まれてきた子供に対し、ワクチン接種が開始されて以来、母子感染は激減しました。また、輸血については1972年以降、針の使い回しによる集団予防接種は1988年から感染予防策が取られ、医療行為による感染はほとんどなくなりました。現在B型肝炎ウイルスの感染は、子供の場合は、父親などから家庭内での感染がおこることがあります(母親がB型肝炎感染者の場合は、ワクチン接種されています)。大人ではB型肝炎ウイルスに感染したパートナーとの性的接触がほとんどと考えられています。もちろん血液に直接接触する行為、歯ブラシ、剃刀の共用や医療従事者の針刺し事故などでも感染します。従来わが国ではB型肝炎ウイルスが免疫機能の正常な成人に感染した場合は、90%は急性肝炎を経て治癒し、慢性肝炎に移行するのは10%でした。しかし近年、健康成人が感染しても慢性化しやすい欧米型のB型肝炎(ジェノタイプ A)が、特に性的接触等により増加しています。わが国では年間約10000人の新規感染者がいると言われています。B型肝炎ウイルスに対するワクチンがあり、多くの方でワクチン接種によるウイルスの感染予防が可能です。家族内にB型肝炎ウイルス感染者がいる場合、血液や体液に接する可能性の高い職種の人(医療従事者、消防、警察官など)などはワクチン接種が望ましいです。慢性B型肝炎では、ウイルスの排除は困難で、ウイルスの増殖を抑え肝炎を沈静化することが目標になります。抗ウイルス薬としてインターフェロンを使用しますが、ウイルスを増殖性の弱い型に変異させて肝炎を沈静化させることを目的にしています。核酸アナログ製剤という直接ウイルスの増殖を抑える薬もありますが、内服を中止すると肝炎が急性増悪するため長期間内服を継続しなくてはなりません。定期的な注意深い経過観察が必要です。B型肝炎は、肝硬変に至らない状態でも肝がんを発症することがあり、定期的な超音波検査などの肝がんスクリーニングが必要です。

C型肝炎ウイルス

B型と同じく、主に血液を介して感染します。以前は輸血による感染が非常に多く問題となっていましたが、1992年以降高感度ウイルス検査導入により、輸血による感染はほとんどなくなりました。B型と異なり性的接触による感染は少なく、血液に直接接触することがなければ、通常の日常生活ではまず感染はしません。剃刀、歯ブラシの共用や、入れ墨(タトゥー)等の針の使いまわし、不衛生なピアス処置、針治療などにより感染の可能性がありますが、わが国のC型肝炎ウイルス感染者の約半数は感染源が不明のままです。C型肝炎ウイルスは残念ながら予防ワクチンはありません。また血液を介して一旦感染すると70%は、身体からウイルスが排除されず慢性化します。慢性化し治療が行われず肝の炎症が持続すると5-10年の経過後、約60%が肝硬変へと進展し、肝硬変後は年間7〜8%が肝細胞がんを発症します。B型肝炎と異なり肝硬変に至る前は肝細胞がんへの発症率は低いとされています。C型肝炎の治療は、まず抗ウイルス療法(インターフェロン、リバビリン、ペグインターフェロン)によりウイルスを排除することです。ウイルスの排除が困難な場合は、内服薬(ウルソデオキシコール酸)や注射(グリチルリチン配合剤)などにより、肝炎の沈静化により肝硬変への進行を防ぐ治療を行います。

まずはご確認ください

まずはご自身の健診結果をご確認ください。肝炎ウイルスの検査は受けていますか? B型、C型肝炎ウイルスの感染は、血液検査で肝機能が正常でもあり得ます。慢性肝炎では症状がないことが通常です。もしB型、C型肝炎ウイルスに感染していた場合は、肝機能が正常でも必ず専門医(消化器内科あるいは肝臓内科)を受診してください。ウイルス性肝炎の治療は近年目覚ましいものがあり、ウイルス性肝炎は治癒、あるいはコントロール可能になり、肝硬変や肝がんへの進行を食い止められるようになってきました。

今一度ご自身の肝炎ウイルスの感染の有無をご確認ください。

肝炎イラスト

同友会メディカルニュース / 医療と健康(老友新聞)

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