同友会メディカルニュース

2012年10月号
機能性胃腸障害について

人間ドックを受診される方の中にも、『なんとなく胃の調子が悪い』という症状のある方が多くいらっしゃいます。実は胃もたれ、膨満感、胃の痛み、不快感などで外来を受診する患者さんはかなりの部分を占めていて、今回は「機能性胃腸障害」についてお話したいと思います。

機能性胃腸障害(Functional dyspepsia)とは、内視鏡などの検査ではっきりと目に見える病気がないのに(胃潰瘍や胃がんなどの器質的病気がないということ)胃の症状が出る病気のことを言います。「NUD(non-ulcer dyspepsia)=潰瘍のない胃腸障害」とも呼ばれていた時代もありますが、1990年ごろからアメリカの消化器病学会で提唱されるようになった比較的新しい概念です。

機能性胃腸症(FD)の診断規準は次の通りです。(表1)胃もたれを中心とする食後愁訴症候群と、胃の痛みを中心とする心窩部痛症候群に分けますが、いずれも週に1回以上おこり症状が6か月以上前から発症し、最近の3か月は比較的症状が続いているものです。機能性胃腸障害の「むねやけ」を主体とする「逆流型」が少し前は存在しましたが、現在ではそれは胃食道逆流症(GERD)として独立した疾患単位として取り扱われています。

必須条件(以下の項目が1つ以上)
1.つらいと感じる食後のもたれ感
2.早期膨満感
3.心窩部痛
4.心窩部しゃく熱感
①食後愁訴症候群
1.普通の量の食事でも週に数回以上つらいと感じるもたれ感がある
2.週に数回以上、普通の量の食事でも早期膨満感で食べきれない

補助:張った感じ、食後のむかつき、げっぷを伴うことがある。心窩部痛症候群を併存することがある

②心窩部痛症候群
1.心窩部に限局した中等度以上の痛みが週に1回以上
2.間欠的な痛み
3.腹部全体にわたる痛み(限局した痛みではない)
4.排便や放屁で改善しない
5.機能性胆嚢の診断基準を満たない

※①②いずれも6か月以上前からの症状があり、最近3ヶ月間は上記基準を満たしていること

機能性胃腸障害の原因には生活上のストレスなどの心理的・社会的要因と関係があると言われています。胃の機能は、食べたものを伸びて溜め込む、消化する、順次送り出すという大切な作業を繰り返しているわけですが、精神的ストレスから胃の貯留機能が障害されると、少量の食べ物によって胃の内圧上昇により早期飽満感が引き起こされたり、胃酸に対して過剰に痛みを感じることがあります。脳で不快な経験として知覚(認知)し、その反応がさらに消化管機能異常を悪化、慢性化するという脳-腸相関(悪循環)の関与が知られています。

機能性胃腸障害

では、どんな治療法があるのでしょうか?生活の質が大きく損なわれることになるので、適切な治療が必要です。しかしながら特効薬はなく治療効果は限定的です。胃酸を抑える薬(プロトンポンプ阻害薬やH2拮抗薬)や運動機能改善薬(胃のガスの調節やぜん動をよくする薬)や漢方薬などがあります。一番効果の高い潰瘍治療薬(胃酸を抑える薬)も、実際には効果が期待できるのは50%程度です。しかし何もしないよりも様々な薬剤の組み合わせで上乗せ効果があります。適宜精神安定剤などを追加したり、それぞれの患者さんに合う薬を相談していきます。一方、ピロリ除菌の効果に対しての臨床研究は数多く行われてきたが、それほど劇的な効果は期待できません。

まずは、十分な睡眠とストレスをため込まない生活で、ゆっくりと食事の時間をとることも大切になります。

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参考文献:

  • * A randomized trial comparing omeprazole,ranitidine,cisapride,or placebo in HPnegative,primary care patients with dyspepsia ;the CADET –HN study
    Am. J. Gastroenterol.100, 1477(2005)
  • * Why dyspepsia can occur without organic disease: pathogenesis and management of functional dyspepsia Gastroenterol. 2012 Aug;47(8):862-71

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