同友会メディカルニュース

2024年7月号
HPVワクチン接種のすすめ

子宮の下から約1/3を子宮頚部といい、ここに発生するがんが子宮頚がんです。性交渉によって感染するHPV(ヒトパピローマウイルス)が原因とされており、20代~30代という若い世代での発症が以前に比べて増加してきています。日本では毎年約10,000人(2019年は10,879人)が罹患し、約3,000人(2020年は2,887人)が死亡しています。

メディカルニュースでは2020年5月号で「HPV(ヒトパピローマウイルス)と子宮頚がん」というタイトルで取り上げています。その時には子宮頚がんの予防としてHPVワクチンの効果が高いことと、一方で当時はまだワクチン接種の積極的勧奨が中断されたままであるということが書かれています。

HPVワクチンは2009年10月に厚生労働省によって承認され、2013年4月に予防接種法に基づく定期接種となりましたが、同年6月には接種後の副作用の訴えが相次ぎ、接種の積極的勧奨が中止されるという経緯がありました。しかしその後の審議会での検証により、安全性・有効性に関する近年の主要なエビデンスが示され、現在のエビデンスによれば、ワクチンの安全性についての特段の懸念は認められないことが確認されました。またHPVワクチン接種後に生じた症状に苦しんでいる方に寄り添った支援やHPVワクチンに関する情報提供についての議論が集約され、2021年10月にようやく厚生労働省専門部会が積極的勧奨の再開を了承し、翌年度から再びワクチン接種が積極的に勧奨される状況が各市区町村で整ってきました。

〔表1〕 HPVワクチンをめぐる経緯
         
2009年10月 厚生労働省が子宮頚がんワクチンを初承認
2013年4月 予防接種方に基づく定期接種に
2013年6月 接種後に全身の痛みなどの訴えが相次ぎ、
厚労省は接種の積極勧奨を中止
2016年7月 副反応を訴える女性らが国などを一斉提訴
2021年10月 厚労省の専門部会が積極勧奨の再開を了承

実際に、このHPVワクチン接種率の推移(グラフ1)を見ると、生まれ年度が1994年から1999年までの「接種世代」は接種率が高かったのですが、接種勧奨が中止された「停止世代」以降については接種率が非常に低い状態が続いていました。

〔グラフ1〕 HPVワクチン接種率の推移

HPVワクチン接種率の推移

海外の研究結果からは、接種をされていた世代の方は子宮頚がんの発症が予防されると推察されていたわけですが、昨年、実際に昭和大学などの研究グループから日本におけるHPVワクチンの子宮頚がん予防効果について初めて報告がされました。

この研究グループでは、「全国がん登録データ」と「日本産婦人科学会腫瘍登録データ」の2つを年齢層別に統計解析をしたところ、HPVワクチンを接種していた年代である20代の女性(グラフの赤線)だけ、これまでずっと増加していた子宮頚がんの罹患率が一転して減少している事が両方のがん登録データから示されました(グラフ2、グラフ3)。

〔グラフ2〕 年齢層別子宮頚がん罹患率の年次推移
(全国がん登録データ 1975-2019年)

年齢層別子宮頚がん罹患率の年次推移:全国がん登録データ 1975―2019年

〔グラフ3〕 年齢層別子宮頚がん患者数の年次推移
(日本産婦人科学会腫瘍登録データ 2003-2020年)

年齢層別子宮頚がん患者数の年次推移:日本産婦人科学会腫瘍登録データ2003―2020年

さらに、HPVには様々な型があり、ワクチンで予防が可能である16型と18型という2つのタイプの感染状況を見てきたところ、この型のHPV罹患率も20代で下がっているということも分かりました(グラフ4)。つまり、このワクチンを接種した世代は、HPVの陽性率も下がっており、なおかつ、がんの罹患率も下がっているので、やはりワクチンの効果がしっかり現れているということが日本国内でも証明されたのです。

〔グラフ4〕 子宮頚がんにおける年齢別HPV16/18陽性率の推移

子宮頚がんにおける年齢別HPV16/18陽性率の推移

あらためてHPVワクチンの接種が重要ということが示されたのですが、ワクチン接種の積極的勧奨が再開されても、接種率は以前のようには高くないというのが現状です。接種に適切な世代の方はぜひHPVワクチンの接種をすすめていただければと思います。

接種が推奨されなかった世代に対しては、厚生労働省が「キャッチアップ接種」というものを実施しております。ワクチン定期接種の対象年齢である小学6年生から高校1年生相当の間に接種を逃した方を対象に、あらためて接種の機会を提供するという取り組みです。成人になってからのワクチン接種でも効果があることがわかっていますので、接種を逃してしまった方はぜひこの制度を使って接種されることをおすすめいたします。現在は平成9年度生まれから平成19年度生まれの女性に対して提供をされるようになっております。詳しくは厚生労働省のサイトをご覧ください。またワクチンや子宮頚がん全般に関するQ&Aも示されているので、こちらも併せてご覧ください。

参考文献

  • 昭和大学プレスリリース「昭和大学などの研究グループが、日本で初めてHPVワクチンの子宮頸がん予防効果を報告―HPVワクチン接種の促進、子宮頸がん予防推進に期待―」2023.09.13

同友会メディカルニュース / 医療と健康(老友新聞)

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