同友会メディカルニュース

2015年7月号
コレステロールの摂取制限について-脂質の摂取は量だけでなく質が大事-

2015年2月に米国の保健福祉省と農務省が発表した「米国人の食生活に関するガイドライン」、そして同年3月に日本の厚生労働省から報告された「日本人の食事摂取基準(2015年版)」の両者で、今まであったコレステロールの摂取制限を設けないことが示されました。

国民健康・栄養基礎調査によれば、日本人の20歳以上における一日平均コレステロール摂取量は、男性338mg、女性282mgです。そして、これまで日米それぞれのガイドラインや食事摂取基準におけるコレステロールの一日摂取量上限は、米国では300mg、日本では男性750mg、女性600mgとなっており、さらに、日本動脈硬化学会では、2012年度版のガイドラインで動脈硬化性疾患予防のための食事として、コレステロール摂取量は200mg/日未満に抑えることを推奨しています。このような摂取上限が今回の改定によってなくなれば、卵や牛肉などのコレステロールが多く含まれる食品を気にせず食べられるのではないか、という意見が出てきてもおかしくありません。

水に溶けにくく、有機溶媒に溶けるものを脂質と言いますが、脂質は中性脂肪などの単純脂質、分子中にリン酸や糖を含む複合脂質および誘導脂質にわかれます。コレステロールは誘導脂質の一つで、細胞膜の重要な構成成分であり、またホルモンの原料となるなど、生体内で重要な役割を担っています。一方、過剰になったコレステロールは動脈硬化の進展に関係するとして、血液中のコレステロール値が高い場合には、その値や動脈硬化のリスクに応じて治療の対象となります。

今回コレステロールの摂取制限の上限が撤廃された理由には、摂取量を減らしても血中コレステロール値が低下するという証拠が十分でないということがあげられています。実際、食事から摂られるコレステロールは、体内で合成されるコレステロールの1/3~1/7を占めるのに過ぎず、たとえ摂取を減らしても体内での合成が増えるような仕組みになっていることが知られています。また、過度にコレステロールなどの脂質を制限することで、炭水化物などの糖質が多く摂取され、肥満や糖尿病発症が助長されることも懸念されています。

しかし、これで脂質全体の摂取制限が無くなったというわけではないことに注意しなければなりません。キーワードは、様々な脂質の構成成分となっている「脂肪酸」です。脂肪酸は、分子の中の炭素の鎖すべてに水素が結合し飽和されている「飽和脂肪酸」と、一部飽和されずに炭素同士が二重結合を作っている「不飽和脂肪酸」に分類されます。このうち飽和脂肪酸は、肉などの動物性脂肪やバターなどに多く含まれ、血中コレステロールの増加や動脈硬化の進行に関与していることが報告されており、今回のガイドラインでも摂取過剰は望ましくないとされています。

また、不飽和脂肪酸は、炭素の二重結合の周りの構造の違いで、トランス型とシス型の二つに分かれます。天然の不飽和脂肪酸はほとんどシス型ですが、加工食品ではその製造過程においてトランス型の不飽和脂肪酸である「トランス脂肪酸」が生成されます。トランス脂肪酸は、ポテトチップスやマーガリンなどに含まれ、LDL(悪玉)コレステロールを増加させたり、虚血性心疾患のリスクを高めたりすることが知られており、なるべく摂取を控えることが大切です。そして、米食品医薬品局(FDA)は2015年6月16日、トランス脂肪酸の食品添加物を2018年6月から原則禁じると発表しました。今後日本でも削減に向けた取り組みがすすむと考えられます。

一方で、不飽和脂肪酸の中でも、青魚に多く含まれるDHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)などのn-3系多価不飽和脂肪酸は、摂取量を増やすと冠動脈疾患や脳卒中のみならず、糖尿病、乳がん、大腸がんなどにも予防効果を示す可能性が報告されており、飽和脂肪酸の摂取を抑制するとともに、魚を中心とした食事による不飽和脂肪酸摂取がすすめられます。

この様に、脂質にも様々な種類があり、コレステロールもそのうちの1つです。コレステロールを多く含む肉類や卵類等の食材は、飽和脂肪酸も含んでいることが多く、またその含有率は食材ごとに異なります。コレステロールの摂取制限がなくなったとしても、食材によっては大量に摂取すればコレステロールだけでなく飽和脂肪酸の摂取量が増加するため、結果的にリスクは増加することになります。

従って、食事による脂質摂取においては、コレステロールの量という観点ではなく、脂肪酸の種類と量をバランスよく摂ることに主眼を置くことが大切です。そのためには、日本動脈硬化学会が推奨している「伝統的な日本食(The Japan Diet)」や、心血管疾患を抑制する事が報告されている地中海食など、食生活を包括的に改善する方法が有用です。

コレステロールの多い食品ベスト30
1 たまご(卵黄) 1,400 11 しらす干/半乾燥 390 21 豚肉(レバー) 250
2 ピータン 680 12 いか(焼) 380 22 豚肉(胃/かつ) 250
3 あんこうのきも 560 13 鶏肉(レバー) 370 23 エクレア 250
4 すじこ 510 14 しらこ 360 24 シュークリーム 250
5 キャビア 500 15 たらこ(生) 350 25 しらす干/微乾燥 240
6 いくら 480 16 うに 290 26 ほたるいか(生) 240
7 うずら卵(生) 470 17 ししゃも 290 27 牛肉(レバー) 240
8 うなぎ(きも) 430 18 粒うに 280 28 牛肉(第一胃/ミノ) 240
9 たまご 420 19 めんたいこ 280 29 豚肉(小腸/ひも) 240
10 たらこ(焼) 410 20 いか(生) 270 30 うなぎ(かば焼) 230
  • ※食品100g当たりのコレステロールの含有量 単位mg
  • 成人男子目標量:750mg未満
  • 成人女子目標量:600mg未満
飽和脂肪酸の多い食品ベスト30
1 生クリーム/乳脂肪 27.62 11 ココナッツミルク 13.20 21 たまご(卵黄) 9.22
2 ホイップクリーム/乳 23.51 12 輸入牛ばら肉 13.05 22 ラクトアイス/普通 9.11
3 クリームチーズ 20.26 13 豚肉(ばら) 12.95 23 生クリーム/植 9.01
4 鶏肉(皮) 16.30 14 レバーペースト 12.93 24 輸入牛リブロース 8.79
5 牛サーロイン肉 16.26 15 牛肉(ギャラ) 12.78 25 フランクフルト 8.78
6 チーズ(プロセス) 16.00 16 牛肩ロース肉 12.19 26 あんこうのきも 8.23
7 和牛リブロース 14.92 17 牛肉(小腸) 11.82 27 あいがも 8.02
8 カマンベールチーズ 14.87 18 珈琲ミルク/液/乳 11.57 28 豚ロース肉 7.84
9 ベーコン 14.81 19 ウインナー 10.11 29 ホイップクリーム/植 7.84
10 牛肉(尾) 13.20 20 和牛ランプ肉 9.71 30 ラム(肩) 7.62
  • ※食品100g当たりの飽和脂肪酸の含有量 単位g
多価不飽和脂肪酸の多い食品ベスト30
1 油揚げ 17.43 11 鶏肉(皮) 6.54 21 だいず(ゆで) 4.93
2 いわし(油漬) 13.96 12 ほんまぐろ/脂身 6.41 22 アップルパイ 4.86
3 フレンチドレッシング 13.42 13 みそ(豆みそ) 6.29 23 さんま(生) 4.58
4 サウザンアイランドドレッシング 12.99 14 すじこ 6.17 24 はまち(生) 4.52
5 ツナ缶(油漬) 12.16 15 厚揚げ/生揚げ 5.95 25 レバーペースト 4.42
6 がんもどき 9.22 16 あいがも 5.66 26 フライドポテト 4.32
7 あんこうのきも 8.47 17 納豆 5.39 27 豚肉(ばら) 4.03
8 さば(開き干し) 7.42 18 ひきわり納豆 5.39 28 まいわし/焼 3.97
9 ゆば(生) 7.06 19 たまご(卵黄) 5.39 29 さんま(開き) 3.94
10 しめさば 7.05 20 いくら 4.97 30 たちうお 3.87
  • ※食品100g当たりの多価不飽和脂肪酸の含有量 単位g

※簡単!栄養andカロリー計算HP
http://www.eiyoukeisan.com/
栄養素別食品一覧の表より(一部改変)

同友会からのご案内

参考文献:

  • RH, et al. 2013 AHA/ACC Guideline on Lifestyle Management to Reduce EckelCardiovascular Risk. Circulation 2014;129(25 Suppl 2):S76-99
  • USDA. Scientific Report of the 2015 Dietary Guidelines Advisory Committee. February 2015.
    http://www.health.gov/dietaryguidelines/2015-scientific-report/
  • 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2015年版)」策定検討会報告書
  • 日本動脈硬化学会. 動脈硬化性疾患予防ガイドライン2012年版
  • 日本動脈硬化学会. 脂質異常症治療ガイド 2013年版
  • 国民健康・栄養基礎調査(平成25年) 厚生労働省
  • コレステロール摂取量に関する声明 日本動脈硬化学会
    http://www.j-athero.org/outline/cholesterol_150501.html

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