同友会メディカルニュース

2016年12月号
高LDL-C血症(俗にいう悪玉コレステロール)について

1.はじめに

筆者は外来だけでなく健保などでも業務をしております関係上、働いている方で心筋梗塞や脳卒中を発症されて入院したという報告をしばしば受けます。そして防げたのに勿体ないという思いにいつもなります。なぜなら65歳以下で心筋梗塞を発症される方のほとんどが、無治療の高LDL-C血症(加えて喫煙歴あり)を有されているからです。高LDL-C血症は治療効果が非常に得やすい疾患ですので、防ぐチャンスがあったのに、その機会を逸していてもったいないと日々感じております。今回はそのような想いから高LDL-C血症について書かせて頂きます。

2.高LDL-C血症に対する世界の流れ

膨大な臨床研究結果を背景に、今年8月に欧州動脈硬化学会と欧州心臓病学会が合同で新しいガイドライン1)を発表しました。従来のガイドライン(日本も含め)では脂質検査は空腹時を原則としてきましたが、新しいガイドラインでは、食後など随時での採血にも正式に対応した事が特徴的です。その随時採血において、LDL-C 115mg/dl以上を高LDL-C血症としています(日本では高LDL-C血症は140mg/dl以上です。120~139mg/dlを境界域高コレステロール血症としています)。このガイドラインでは、動脈硬化性疾患の危険度で4段階の管理区分(低、中、高、非常に高)に分けています。糖尿病、慢性腎臓病、家族性高コレステロール血症(LDL-Cが180mg/dl以上の方は可能性あり)、心血管疾患の既往のある方などは高リスク以上となります。これらの条件に合致しない40歳以上の方は、SCOREというチャートを用いて、年齢・喫煙・総コレステロール・血圧からリスクを算出し、治療の必要性を判断する事になっています。高リスク以上の方に対しては薬物治療を積極的に行う事を推奨しており、LDL-Cの目標値として、非常に高リスクの場合は70mg/dl未満、高リスクの場合は100mg/dl未満としています。なお、低・中リスクの方に対して薬物治療は必ずしも必須とはしていませんが、LDL-C値の目標は115mg/dl未満としています。

日本のガイドラインは来年改訂される予定ですが、最新のものは2012年に発表されたものとなります。詳細は同友会メディカルニュース2012年11月号に書かれていますのでご参照下さい。欧州のガイドラインとある程度数値の違いはありますが、4段階の管理区分とするなど類似点が多いです。治療目標に関して、欧米諸国は日本に比べて心筋梗塞など心血管疾患が多い事もあり、欧州のガイドラインは日本のものよりもさらに厳しい値となっていますが、LDL-C値が低下するほど心血管疾患発症リスクが低下する事が証明されています。

今年、厚生労働省研究班から心筋梗塞と脳梗塞のリスクを予測する式が報告されました2)。藤田保健衛生大学のホームページに詳細とともにリスクチェック3)が出来ますので参考にして下さい。

3.LDLには量と質の問題が存在します

そもそもLDL-Cとは何でしょうか。コレステロールや中性脂肪などの脂質は、そのままでは血液に溶け込めないため、図1のようなリポ蛋白という粒子を形成して血液に溶け込んでいます。LDL-Cとは、この粒子中に含まれるコレステロール量のことを指しています。

[ 図1 ]

コレステロール:細胞膜やホルモン(一部)の材料

LDLは動脈硬化の主犯格ですので、LDLの数が多い事も問題となりますが、LDL粒子の大きさが極めて重要です。小型のLDL粒子は血管を傷害する力が非常に強く、いわば超悪玉です。LDL粒子数が多くなると、LDL-C値は高くなりますが、小型のLDL粒子が多くなるとLDL-C値は下がります(小型のLDL粒子はコレステロール量が少ないため)。よって同じLDL-C値でも危険性が全く異なるケースが生じます。図2の2例は同じLDL-C 140mg/dlですが、Bパターンでは非常に動脈硬化が進みやすくなります。LDL粒子の小型化には生活習慣が非常に強く影響します。例えば、肥満、脂肪肝、高中性脂肪血症、飲酒習慣などがあると、LDL粒子が小型化しやすくなります。是非、肥満や脂肪肝のある方は減量、飲酒習慣のある方は節酒をし、Aパターンに近づけるようにして下さい。

[ 図2 ]

同じLDL-C 140mg/dlでもリスクは全く異なる

4.さいごに

動脈硬化は長い年月をかけて進行していきますが、それ自体は症状がありません。そしてある日突然、心筋梗塞や脳卒中を起こすことになります。生活習慣改善と必要に応じた治療によって脳卒中や心筋梗塞は90%以上防げる事が解っています4,5)。動脈硬化性疾患の中でも、狭心症や心筋梗塞は今回お話し致しました高LDL-C血症の影響が極めて大きいです。

健診等で高LDL-Cを指摘されたら必ず受診をするようにして下さい。治療を敬遠する方も多いのですが、気づかないうちに血管が傷んでいる事も多いので、動脈硬化の評価を含め検査し、必要に応じて治療を受けるべきです。安易な治療は慎むべきですが、治療によって動脈硬化性疾患の発症は確実に大きく減らせるので、その機会を逃すのは非常にもったいないと思います。受診先としては、循環器科か代謝内科(糖尿病内科と表記されることもあります)をお勧め致します。

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参考文献:

  • Catapano AL, et al. 2016 ESC/EAS Guidelines for the Management of Dyslipidaemias. Eur Heart J 2016;37:2999
  • Yatsuya H, et al. Development of a Risk Equation for the Incidence of Coronary Artery Disease and Ischemic Stroke for Middle-Aged Japanese. Circ J 2016;80:1386
  • 国立がん研究センターによる「多目的コホート研究」HPより
        http://epi.ncc.go.jp/jphc/
  • Anand SS, et al. Risk factors for myocardial infarction in women and men: insights from the INTERHEART study. Eur Heart J 2008;29:932
  • O’Donnell MJ, et al. Global and regional effects of potentially modifiable risk factors associated with acute stroke in 32 countries (INTERSTROKE): a case-control study. Lancet 2016;388:761

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