同友会メディカルニュース

2013年10月号
大腸がん検診受けていますか?

我が国の2011年のがん死亡者数のうち大腸がんによる死亡数は、男性では肺、胃に次いで第3位、女性では第1位です。大腸がん患者の多いアメリカでは、行政の対策が奏功し大腸がん検診の受診率は、我が国と医療制度が異なり、地域格差、経済格差があると指摘はされていますが、2010年のデータでは65.4%で、大腸がんによる死亡率は20年以上前から低下し続けていることが報告されています。一方我が国では厚生労働省による国民生活基礎調査のがん検診の受診状況によると、大腸がん検診の受診率は、男性では平成19年27.5%、平成22年27.4%と減少、女性も同様に22.7%から22.6%に減少していました。大腸がんの早期発見は、一人一人の豊かな人生のためにも、これから益々増え続ける医療費抑制のためにも非常に重要かつ緊急の課題で、国、自治体によりがん検診受診率50%以上を目標に対策が行われていますが、残念ながら現在のところ大腸がんについては目立った成果が現れていないようです。

大腸がん検診といえば、まず便潜血検査です。便潜血検査は大腸がんの発見に有用とされ、大腸がんの死亡率低下に有効な手段であることが世界的に認められています。これは便に血液が含まれるかどうかを検査するものです。以前行われていた化学的便潜血検査は食物に含まれる動物の血液にも反応するため検査前の食事制限が必要でしたが、現在我が国で多く行われている検査は、免疫学的便潜血検査といわれヒトの血液にのみ反応するため事前の食事制限などはありません。鼻出血や胃などの出血に対しては、大腸に到達するまでに血液が消化液により変性し反応しなくなるため、陽性になりにくくなりますので、大腸由来の出血に特異的とされています。がんの表面はもろく、出血しやすいため微量の出血が便に付着しやすく、この便に付着した血液を検出するのが便潜血検査です。

もちろん痔がある場合にも、大腸の粘膜が炎症を起こしてただれている場合にも陽性になります。あくまでも便に含まれる血液の有無を検出しているだけで、大腸がんの発見のためには、大腸内視鏡検査などの検査を行う必要があります。しかし症状も何もないすべての人に大腸の内視鏡検査などを行うことは現実的ではありませんので、まず便潜血検査を行って大腸内視鏡検査などの二次検査を行う方を絞り込むのです。一般に感度を上げるため便潜血検査は2回法(異なる日の排便を用いて2回検査する)で行われます。この免疫学的便潜血検査2回法の大腸がんに対する感度(大腸がん患者さんのうち便潜血検査が陽性となる頻度)は、進行がんで85.6%, 早期がん(早期がんの中でもやや進行した(SM)がん)で61.3%と報告され、感度の良好な検査です。1)

しかし逆に言えば進行がんの14.4%、やや進行した早期がんの38.7%の方は便潜血陰性となっていることを意味します。便潜血陰性は必ずしも大腸がんなしを意味するものではありません。便潜血陽性のとき再度便潜血検査を行うことは意味がありません。一度でも陽性の時は、二次検査を受けることが重要です。便潜血検査2回法の陽性率は約5%で、そのうち約2%に大腸がんが見つかるとされています。つまり1000人の便潜血検査を受けた方のうち約50人が陽性となり、二次検査により1人の大腸がんが発見されることになります。年齢によっても大腸がん罹患率は異なりますが、40歳以降増加し始め、50歳以降からは年々急増します。40歳以降の方の大腸がん検診はより重要です。一方便潜血陽性で大腸内視鏡検査を受けた方のうち、30-40%の方には明らかな異常が認められません。また30-40%に大腸ポリープが発見されます。

昨年春日クリニックで大腸内視鏡検査をうけた方のうち、34%に大腸ポリープが認められ、ポリープを切除しました。大腸ポリープにもいくつかの種類がありますが、大腸がんの多くは腺腫という良性のポリープからがんに変化するとされ、ポリープが10mmより大きくなるとがんが発生する確率が高くなるといわれています。すべての腺腫ががんになるのではなく、一部の腺腫ががんになるのですが、がんになる前は、どの腺腫が将来がんになるか区別がつきません。見つけた腺腫をすべて切除する(クリーンコロンといわれます)と、がんの予防になることが推測され、これを証明するための研究が日本で行われています。もうすぐその解析結果が公表される予定です。ポリープ切除には出血や穿孔などの偶発症のリスクがあることや、5mm以下の小さなポリープは、万一がん化するに場合にも5年以上はかかることが推測されていることなどを考慮して、ご本人のご希望、状態にあわせてポリープを切除するかどうかを判断しますが、現在は、大腸がんの予防をする目的もあり少なくとも5mm以上の大きさのポリープに対しては、積極的にポリープの切除をお勧めしています。

大腸がん検診の最大の問題は、低い検診受診率の改善もさることながら、便潜血陽性の受診者のうち、大腸内視鏡などの二次検査を受ける人が約半数しかいないということです。せっかく検診をうけても、陽性のとき、痔があるからとか、2回のうち1回だけだからとか、大変そうだからとかで、二次検査を受けなければ、不安が残るだけで、大腸がんも見つからないばかりか、大腸ポリープもみつかりません。大腸がんは早期に発見すれば、ほとんど治癒します。進行すれば進行する程その治療は大変です。

大腸がんの予防、早期発見のためには、まず便潜血検査を毎年受けていただくこと、そして1回でも陽性の場合は、きちんと二次検査の大腸内視鏡検査を受けていただくことが重要です。二次検査まで受けていただいて初めて大腸がん検診になります。ちなみに大腸内視鏡検査は、大腸をきれいにするために下剤を飲んでいただく必要がありますが、検査自体は通常20分ほどで終了します。ほとんどの方は、痛みなどなく検査可能です。二次検査についてお知りになりたいことなどありましたら、まずは春日クリニック外来にご相談ください。

同友会からのご案内

参考文献:

  • Hisamichi S, Fukao A, Fujii Y, Tsuji I, Komatsu S, Inawashiro H, Tsubono Y.;Mass screening for colorectal cancer in Japan.Cancer Detect Prev. 1991;15(5):351-6.
春日クリニック  内視鏡センター新設
内視鏡検査:胃や大腸の内部を電子スコープで観察消化管内部の色調や微細粘膜の変化などを高精度に診断ができ、必要に応じて書式検査も可能です。充実の先進機器を駆使して、より多くの方々に制度の高い 内視鏡検査を実施いたします。
※内視鏡センターには個室の前処置室・リカバリー室も設置されているのでリラックスした状態で検査に臨んでいただけます。
  • 内視鏡センター1
  • 内視鏡センター2

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