同友会メディカルニュース

2011年9月号
ひとりひとりが認知症に対する備えを

お聞きになった事がある方も多いと思いますが、現在日本では世界で類を見ないほど急速に高齢化が進んでいます。そうなると避けて通れないのが認知症の問題で、65歳以上の人で10人に1人、80歳以上で5人に1人、85歳以上になると3人に1人が認知症になると言われていますから、長寿国家日本においては誰にとっても決して他人事ではありません。認知症についてはこのメディカルニュースでも2010年8月号で一度取り上げていますが、今回は前回お伝えしきれなかった最近の知見と、認知症の早期発見に取り組む私たち春日クリニックの活動についてご紹介したいと思います。

前回もお伝えしたように、「認知症」と一言でいっても原因によって様々なタイプがあります。昔は動脈硬化などによって脳の血管が詰まって、脳の機能が低下することで痴呆症状が現れる「脳血管性認知症」が多いと考えられていたのですが、その後の研究で実は脳の神経細胞が何らかの原因で次第に壊れる(変性といいます)「アルツハイマー型認知症」が最も多く、認知症全体の6割以上を占める事が分かってきています。

脳血管性認知症にならないためには動脈硬化を防ぐ事が必要ですから、まずは何と言っても糖尿病や高血圧、脂質異常といったいわゆる生活習慣病をきちんと管理する事が重要です。アルツハイマー型認知症でも、詳しいメカニズムは分かっていませんが同様に運動不足や喫煙、高血圧、肥満、糖尿病などと強い相関がありますので、認知症の原因に関わらず予防には生活習慣の改善が大切といえます。

具体的には、魚料理や地中海料理が認知症を予防するとの報告はいくつも見られ、魚を週に1回摂取すると認知症の発症を40%減少させるとも言われています。やはりニシンやサバ、イワシといった青魚を積極的に摂るように心がけた方がよさそうです。また少量の飲酒も全く飲まないよりは認知症の発症を抑えるとされていて、特に赤ワインに含まれるポリフェノールはアルツハイマー型認知症に関係しているとされるアミロイドという物質を脳に蓄積しにくくすると言われています。ただし摂取し過ぎると逆に認知症の発症を増やす危険もあるので、あくまで「たしなむ程度」であることが大切です。他にも適度の運動、カロリー制限、緑茶の摂取、禁煙などで認知症の予防に効果があったとされています。

このようにまず生活習慣で予防に努め、それでも認知症になった場合には治療が必要になります。1999年にアルツハイマー型認知症の治療薬として塩酸ドネペジル(商品名:アリセプト)が登場してからは認知症を出来るだけ早期に発見し治療を開始することによって認知機能の改善と症状進行を遅らせることが期待出来るようになりました。しかしそれでも全員に著効するわけではなく、この12年間でアリセプトの有効性とともにその限界も次第に分かってきたのですが、2011年に入って3種類の認知症治療薬が次々と登場してきました(表1)。診療の現場での評価はこれからですが、アリセプトからこれらの新薬に切り替えや併用することで治療効果が高まる事が期待されています。

表1 アルツハイマー型認知症の治療薬

認知症の兆候を出来るだけ早期に、かつ負担をかけずに捉えることを目的に、私たちのクリニックでは人間ドックオプション検査の「認知症早期スクリーニング」として「かなひろいテスト」と「頭部CT検査」を組み合わせて評価を行っています。これらの検査は比較的時間もかかりませんし、これまでに蓄積したデータを検証した結果、かなひろいテストの点数が低いほど頭部CTで脳萎縮が強い傾向が認められ(図1)、私たちのスクリーニング法が実際に認知症の早期発見につながる可能性を示すことが出来ました。この結果は直近の人間ドック学会学術大会でも発表しています(※1)。

図1 かなひろいテストと脳萎縮の相関関係

予防と早期発見の重要性は認知症も決して例外ではありません。まずは生活習慣をしっかり見直した上で、節目の年齢を迎えられたり最近少し物忘れが気になり始めたりしている方は、人間ドックを受診された際にオプションの認知症検査を受けてみることをおすすめします。

(※1)認知症早期スクリーニング検査の試み:同友会春日クリニック

第52回日本人間ドック学会学術大会 脳・神経部門1-6-4

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