同友会メディカルニュース

2014年3月号
さだまさしさんの歌に思う - 鉄欠乏性貧血の話 -

無縁坂
「母がまだ若いころ 僕の手をひいて
この坂を登る度 いつもため息をついた
(中略)
笑っていた白い手は とてもやわらかだった」

これは「さだまさし」さんの「無縁坂」という曲の出足です。まだ私が医学部の学生だった頃の流行歌。当時はまだ寄生虫疾患が問題になっていました。その中で、「ズビニ鈎虫」という寄生虫に寄生されると、極度の貧血になるのが特徴で、農家のおばさん達が坂を登る体力もなくなり、坂の登り口の所でため息をつくものだと講義で教えられたことを思い出します。「無縁坂」の歌詞を口ずさんでいるうちに、「若いのに坂を登るのに躊躇していたなんて・・あれっ、この曲のさださんのお母さんは貧血だったのではないか?」と感じた訳です。今回は貧血の原因として頻度の多い、鉄欠乏性貧血のことを取り上げましょう。

血の色が赤いというのは赤血球の影響だということは皆さまご存知でしょうか?赤血球は身体の各部分に酸素を運ぶ役割を持っています。貧血というのは文字通り、この赤血球が少なくなっておこる疾患です。もちろん事故などで体外に血液が出てゆくと貧血になりますが、その他に様々な原因で貧血という病気は起こります。貧血になると細胞に十分に酸素を運搬することができにくくなり、息切れのような症状を起こすようになります。その他の症状としては動悸・めまい・たちくらみ・冷え性などが一般的でしょうか。あと身体的所見として爪が薄くなり、割れやすくなったり、舌が萎縮し、ものが舌にしみるなどの症状があるとも聞きます。ただ、貧血の状態が長く続いた場合、体はそれに慣れてくるのか、ほとんど症状が出現しない場合もありますので、血液検査の数値を気にかけるなどの注意は必要です。

当会での貧血検査に関する基準値を表1に示しますが、男性と女性とでその値は異なります。貧血の頻度は男性が受診者の5%、女性が7%。男性では70歳以上が最も多いのに対して、女性では30~50歳が多くなっています(図1)。男性と女性で基準値が異なりますので、もし同じ基準で判断したら、女性でもっと所見のある人が増えるかもしれません。比較的若い女性に貧血が多いのは生理による出血の影響があるためで、高齢の男性に多いのは造血機能が年齢とともに衰えてくると予想されます。もちろん年齢の影響は女性にもありますが、そもそも基準が男性に比べて低いため、同じ値でも女性なら「軽度の変化、問題なし」男性なら「要二次検査」という判定になる可能性が高いという訳です。

表1.当会における貧血関連項目の基準値

  男性 女性 単位
赤血球数 438~577 376~516 /mm3
ヘモグロビン 13.6~18.3 11.2~15.2 g / dl
ヘマトクリット 40.4~51.9 34.3~45.2 %
血清鉄(Fe) 60~210 50~170 μg / dl

図1当会人間ドック受診者における貧血症の割合

血清の鉄分を測定された方はその値が低ければ、鉄欠乏性貧血の可能性が高まります。生理のある年齢ですと月に一定量の血液が失われますので、子宮筋腫などがあり、出血量が多くなれば、貧血になりやすくなるのは容易に頷けます。一方、男性で急に貧血になった場合は消化管からの出血を疑った方がよいかもしれません。

鉄欠乏性貧血と診断された方は食事の内容に気をかける必要がありましょう。以前はレバーだとかほうれん草など、鉄分の含有量が多いとされるものをすすめていましたが、最近ではそれに加えて、蛋白質を中心にしっかりと食べること、ビタミンCを十分に摂ることがすすめられております。ビタミンCは鉄分を変化させる(詳しく言うと、3価の鉄を2価に還元する)ことにより消化管からの吸収を効率的にする役割があると考えられております。また、食事の内容が、カロリーは多いけれども、鉄分が少なめなファーストフードやジャンクフードに偏っていると貧血になる方もおられるようで、栄養士はその辺りの事情を聞きながら、肉や魚、野菜類を含めて、しっかり食べるように指導しています(図2)。

図2貧血症の食事療法

今回は鉄欠乏性貧血のみを取り上げましたが、貧血の原因は多岐にわたります。症状がない場合でも放置せずに、必ず指示に従うことをおすすめします。

同友会メディカルニュース / 医療と健康(老友新聞)

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