同友会メディカルニュース

2019年8月号
帯状疱疹を予防しよう

帯状疱疹(たいじょうほうしん)とは

帯状疱疹は、水痘(みずぼうそう)にかかったことのある人なら誰でもなり得る疾患です。成人の90%以上がこのウイルスに既感染だとされ、日本人では80歳までに3人に1人が帯状疱疹を発症すると言われています。頻度は加齢に伴って増加する傾向があり、全体の約7割が50歳以上とされ、発生頻度は年間1000人当たり5人程度、70歳以上では1000人当たり10人以上となります。また生涯で一度しか発症しないわけではなく、2~4%くらいの確率で再発するとも言われています。

水痘・帯状疱疹ウイルス(みずぼうそうの原因ウイルスvaricella zoster virus, 以下VZV)に初めて感染すると、水痘を発症します。主に小児期に発症する発熱と全身の発疹を伴う疾患で、予後は良好ですが非常に感染力が強く、全身に紅斑→丘疹→水疱→痂皮(かさぶた)のように段階的に皮膚病変が出現します。
学校保健安全法の第2種学校感染症にあたり、すべての発疹が痂皮化するまでは出席停止になります。また成人になってから発症したり、免疫力の低下した人(白血病や抗がん剤使用中、ステロイドや免疫抑制剤使用中など)が罹患すると重篤になることがあります。

このVZVは、水痘が治癒した後も体内の脊髄後根神経節という所に潜伏感染を続け、普段は免疫力でその活動が抑えられていますが、加齢やストレス、免疫力低下などによって再活性化され、活性化したVZVは、神経節の支配領域の皮膚上皮細胞に到達して帯状疱疹を発症させます。痛みを伴う水疱が、片側の神経分節性支配に沿って出現します。水疱は腕や胸、背中など上半身に現れることが多く、顔や首の帯状疱疹の場合、失明や顔面神経麻痺、難聴などをきたすことがあります。また発熱、倦怠感、易疲労性などの全身症状も伴います。
痛みの程度は様々で、あまり自覚のないこともあれば、極めて強い痛みの場合もあります。通常は、数日すると水疱が膿疱(うみ)化し、10日前後で痂皮化し、約3週間で治癒しますが、合併症を引き起こすこともあり、皮疹が消えても3か月以上痛みが続くものは帯状疱疹後神経痛(postherpetic neuralgia, 以降PHN)とされ、50歳以上の患者さんの約2割がPNHに移行するともいわれています。痛みが強い場合や全身状態が悪い患者さんは入院加療することもあります。

アテ

治療法

ウイルスの増殖を抑制する抗ウイルス薬(アシクロビル, バラシクロビル, ファムシクロビル)が治療薬として用いられます。原則として皮疹出現後72時間以内に飲み始めることが望ましく、7日間内服します。
ただし、皮疹出現5日以降であっても新規の皮疹出現が続いている場合や、合併症を伴う場合、帯状疱疹後神経痛(PHN)発症リスクが高い場合には、抗ウイルス薬を投与した方が良いと考えられます。また、痛みに対しては鎮痛剤や抗うつ薬を使用したり、皮疹の部分には外用薬を塗布したりします。外用薬は、皮疹をカバーし周囲への感染を抑える効果もあります。帯状疱疹が、発熱などなく皮疹だけの局所的症状であっても、水痘に免疫をもたない周囲の人に感染すると、水痘を発症させてしまうため、注意が必要です。
治療によって、ウイルス排出期間の短縮・新たな皮膚病変出現の抑制・皮膚病変の治癒の促進効果などが期待されます。

アテ

予防法

昔は子供のころに皆、水痘に罹患して自然免疫を獲得することが多かったのですが、2014年10月から水痘は日本でも定期予防接種の対象となり、生後12~36か月の間に3か月以上(標準的には6~12か月)の間隔を空けて水痘ワクチンを2回接種することが推奨されています。国立感染症研究所による2017年の感染症流行予測調査によると、20歳以上の成人のVZVに対する抗体保有率は95.2%であり、多くの人は成人になるまでに水痘の免疫を獲得していることになります。
一方で、水痘の流行が減少し高齢者が普段の生活でVZVに接する機会が減少すると、ブースター効果(体内で1度作られた免疫機構が、再度抗原と接触することによってさらに免疫機能が高まること)を得る機会も減少します。また、日本の高齢化が進むことで、今後さらに患者数が増えることも予想されます。

現在可能な予防法としては、水痘ワクチンがあります。わが国で通常小児に対して使用されている乾燥弱毒生水痘ワクチン「ビケン」を、「50歳以上の者への帯状疱疹予防」のために使用することが2016年3月に承認されました。米国で60歳以上の約40000人を対象に施行された無作為化二重盲検プラセボ対照試験では、帯状疱疹生ワクチン接種後平均3.12年の追跡期間中の帯状疱疹発症頻度は51.3%減、PHN発症は66.5%減、重症度も61.1%減少したと示されていますので、ある程度効果が期待できます。現在50歳以上の方が帯状疱疹の予防をするには、この水痘ワクチンを受けていただくことになります。VZVの抗体価について検査することも可能ですが、特に抗体価は確認せずワクチン接種が可能です。

一方でこの水痘ワクチンにはまだ課題もあります。生ワクチン(病原体となるウイルスや細菌そのものの毒性を弱めて病原性をなくしたものを原料に作られている)のため、免疫不全者や妊婦には禁忌になります。そして、70歳以上の方ではワクチンの効果自体が低下する(米国のデータでは有効率37.6%)とされており、また長期追跡調査では、60歳以上での有効率は3.3~7.8年で39.6%に、4.7~11.6年では21.1%に低下することが報告されています。
そこで新しいワクチン候補として、アジュバント添加遺伝子組換えサブユニットワクチンというものが開発されました。VZVそのものではなくその一部を抗原とした成分と、その働きをサポートする成分(アジュバント)を合成して作られています。50歳以上の成人に対し、2か月間隔で2回、筋肉内接種します。この新規帯状疱疹サブユニットワクチン(以下、HZ/su)は、第Ⅰ,Ⅱ相試験で、HIV患者などの免疫抑制患者での安全性が確認されており、また第Ⅲ相試験は日本を含むアジア、アメリカ、ヨーロッパ18ヵ国の50歳以上の健常人約37000人に対して2つの大規模国際共同試験が行われ、帯状疱疹および帯状疱疹後神経痛(PNH)の発症を90%以上減少させ、70歳以上における4年目の有効性は87.9%と、高い値を維持していました。また、この共同試験に参加していた日本人約1000人でも同様の結果が出ており、日本人集団でも、少なくとも4年間は高い有効性が持続すると考えられています。
新規ワクチンHZ/suはすでに米国・カナダでは承認、使用されており、日本でも2018年3月に承認されていて、近い将来に接種可能となる予定です。米国疾病管理予防センター(CDC)の予防接種の実施に関する諮問委員会(ACIP)では2017年10月25日、帯状疱疹および関連合併症の予防目的としては、生ワクチンよりもサブユニットワクチンの方が望ましいとの声明を出しました。現在使われている弱毒生ワクチンとの使い分けや、何年毎に接種を推奨するのか、定期接種や公費補助の対象とするのかなど、まだまだ議論の余地はありますが、今後の動向が注目されます。
尚、現状では、水痘の罹患歴・ワクチン接種歴のない成人の方は、水痘の予防のために水痘ワクチン接種を、50歳以上で免疫不全のない方は、帯状疱疹の予防として弱毒生ワクチン(=通常の水痘ワクチン)の接種を検討されるとよいと考えられます。日常的には、免疫力を低下させないことが重要ですので、バランスのよい食事や十分な睡眠をとり、持病のある方はその管理、そして疲れやストレスをためないようにすることがもちろん大切になります。

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同友会メディカルニュース / 医療と健康(老友新聞)

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