同友会メディカルニュース

2024年1月号
働く女性の健康管理について

女性の健康課題について

ご存じのようにわが国では世界でも異例の速さで少子高齢化が進んでおり、特に生産年齢(15歳から64歳)人口の減少が社会経済の活力を失わせることが危惧されています。これからの日本を支えていくためにも女性の労働参加率を高めて個人の多様な能力を社会に向けて発揮してもらうことが期待されています。

我が国の女性の生産年齢人口就業率は2020年時点で70.6%と、OECD(経済協力開発機構)加盟38か国の中では13位であり近年は上昇傾向にありますが、労働生産年齢の女性はホルモン分泌量の変化が大きい年代とも重なります。女性ホルモン(エストロゲン)は心身両面から女性を守る作用が大きく、周期的に低下する排卵後・月経前や、年齢とともに低下しやすい更年期、また出産後には心身ともに不安定になりやすいことが知られています。女性の労働参加率が高くなればなるほど、その健康管理は職場の課題として看過できないものとなってきています。

女性の健康課題について

女性の健康課題について

代表的なものとして以下のようなことが知られています。

1.月経随伴症状

月経随伴症状とは月経中や月経前に生じる症状の総称で、月経困難症と月経前症候群を合わせた概念です。

・月経困難症(月経痛)
月経期間中に、月経に伴って起こる病的症状を月経困難症と言い、下腹部痛、腰痛、腹部膨満感、嘔気、頭痛、食欲不振、下痢といった身体症状のほか、疲労・脱力感、イライラ、憂うつといった精神症状を来すこともあります。月経困難症の原因は器質性(子宮内膜症、子宮腺筋症、子宮筋腫など)と機能性(子宮の過収縮)に分けられ、器質性に対してはその原疾患に対する治療が、機能性に対しては鎮痛剤や低用量ピル、漢方などが用いられます。
・月経前症候群(PreMenstrual Syndrome,PMS)
月経前3~10日の間に体調不良を自覚し、月経が来ると改善・消失するものを月経前症候群(PMS)といいます。のぼせ、下腹部膨満感や下腹部痛、腰痛、頭重感、乳房痛といった身体症状や、イライラ、怒りっぽい、憂うつなどの精神症状を認めます。PMSの原因は排卵後の女性ホルモンの急激な変化が関係していると考えられていますが、まだ解明されていません。ピークは30歳代と言われており、治療はそれぞれの症状に応じた対処療法が基本で、低用量ピルや精神安定剤、漢方薬、ビタミン剤などが使われます。

2.更年期症状

更年期とは閉経を挟んで前後約5年ほど、合計約10年間を指しますが、この期間に年齢を重ねて卵巣機能が徐々に低下し、エストロゲンの分泌が急に減少することでホルモンバランスが崩れ、心身に様々な不調が現れやすいことは御存じの方も多いと思います。よく見られる症状はのぼせ、ほてり、発汗といったホットフラッシュですが、その他にも手足の冷え、頭痛、耳鳴り、肩こり、関節痛、倦怠感、不眠、イライラ、憂うつなど、多様な症状を呈することが知られています。治療は食事・運動を中心とした生活改善に加えて、ホルモン補充療法や漢方、症状によっては抗不安薬・抗うつ薬を用いることもあります。(なお更年期症状は女性に限ったことではなく、最近は男性においても指摘されることが増えているようです。)

女性の健康課題が社会に与える影響について

月経随伴症状は排卵周期に伴う性ホルモンの作用であり、周期的に繰り返すため生活の質に影響を及ぼし続けることになります。栄養状態や少産化・晩産化といったライフスタイルの変化によって昔より生涯月経回数が10倍も多くなったと言われる中で顕著になってきた現代の病ともいえ、現在の生活様式に見合ったサポートが求められます。調査によると86%の女性が月経随伴症状は仕事に影響を与えていると考えており1)、月経不調による労働損失は年間4,911億円に及ぶと報告されています2)。

更年期症状についても、働く女性およそ3,000万人のうち36歳から55歳までの約半数以上が何らかの更年期症状を抱え、40~50代女性の9.4%が更年期症状を理由に退職を経験しています3)。その経済的損失は約4,200億円に上るというデータもあります4)。仮に退職までは至らなくても、更年期症状が理由で昇進を辞退したか、辞退するか悩んだことがある女性は40%と、女性のキャリア形成において大きな阻害要因になっていることが伺えます5)。

また月経や更年期とは別に、不妊治療を理由に離職を決断する人も決して少なくはなく、同様に看過できない問題です。

これからの社会に求められること

冒頭でも申し上げたように、女性の心身の健康増進は個人の健康管理の観点はもとより、女性の労働参加を今後一層推進していく中で高い生産性を維持するためにもますますその重要性が高まってきています。

まず女性自身が「月経や更年期は仕方なく我慢するものではなく、受診や治療を通じて積極的に取り組んでコントロールするもの」という意識を持つことが大切ですし、会社や周囲の人もそのことをよく理解して、実現しやすい環境を構築することが社会全体として求められていると思います。自分自身にも、周りにもそうした目を向けて、活力の保たれたより良い共同(協働)社会を目指していきましょう。

同友会からのご案内

参考文献

  • 1)ルナルナ「生理痛やPMSの仕事への影響とピルの服薬に関するアンケート」
  • 2)Tanaka E, Momoeda M, Osuga Y et al. J Med Econ 2013; 16(11): 1255-1266
  • 3)日本ヘルスケアアドバイザーズ「更年期の実態調査2017
  • 4)NHK「更年期と仕事に関する調査2021」
  • 5)大塚製薬「働く女性の健康意識調査2021」

同友会メディカルニュース / 医療と健康(老友新聞)

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