同友会メディカルニュース

2022年12月号
健康増進のための8項目(Life's Essential 8)

1.はじめに

今回は米国心臓協会(AHA)が今年6月に発表した心血管健康指標8項目の “Life's Essential 8 (LE8)” についてお伝えしていきたいと思います1)。これはAHAが2010年に提示した心血管健康指標7項目のLife's Simple 7(LS7)を改訂したものです。

以前(2012年6月号)にLS7の遵守が脳卒中や心筋梗塞などの予防に極めて重要である事をお伝え致しました。これまでの研究報告から遵守によりこれらの発症を8割以上減じる事も可能であると考えられています。さらに、2022年2月号ではLS7遵守が認知症や体力・身体能力低下の予防にもつながり、健康増進や健康寿命延伸のためには若年~中年期からの遵守が鍵となる事をお伝え致しました。

2.LE8について(LS7からの変更点)

LE8はこれまでの7項目(食習慣・身体活動・喫煙・BMI・血清脂質・血糖・血圧)に「睡眠」を新たに加えた8項目からなります(表)。「睡眠」に関してはLS7策定の時点でエビデンスが十分ではないという理由により項目から漏れましたが、この10年余でエビデンスも十分となったため加えられました。ただし「睡眠」は新参の8番手の項目という意味ではありません。睡眠障害は脳卒中や心筋梗塞や認知症などに対して直接的な原因となるだけでなく、LE8の他の7項目に悪影響を及ぼす事も明らかになっており、他の7項目と同等の立場として加えられています。「睡眠」の重要性に関しましては、大分前ですが2011年8月号にも書かせて頂いておりますので参照して頂ければと思います。

LS7では各項目の理想値を示して達成できている項目数をみる形式でしたが、LE8は各項目を0~100点でスコア化しています。ボリュームの問題で各項目の細かい点数の説明は省きますが、各項目において100点となる内容について表に記載しております。そしてこれら8項目の平均値を心血管健康スコア(CVH)として算出します。このスコアが50点未満の場合は心血管の健康状態が「不良」、50~79点は「中等度」、80点以上は「高い」と判定します。心血管の健康のために、CVHの点数を高めていく事が重要となります。

〔表〕 LE8の評価項目
評価方法 100点の基準
食習慣 MEPA(米国版の地中海式遵守度)
16項目から採点する。最高点は16点
15点以上
身体活動 中強度以上の運動時間(1週間あたり) 150分以上
ニコチン曝露 喫煙と受動喫煙 生涯非喫煙+受動喫煙なし
睡眠 平均睡眠時間 7時間以上9時間未満
BMI 体重(Kg)÷身長(m)2 18.5-22.9
血清脂質 Non-HDL-C値(総コレステロール値 から HDL-C値を減じたもの) 130mg/dL未満
血糖 空腹時血糖値、HbA1c値 空腹時血糖<100mg/dL、HbA1c<5.7%
血圧 収縮期血圧、拡張期血圧 <120/80mmHg

※健診では総コレステロールではなく、LDL-Cを測定することが多いと思います。
 Non-HDL-C 130mg/dLはLDL-C 100mg/dLに相当すると便宜上考えて下さい。

3.課題について

LE8はLS7改訂版として順当にブラッシュアップされたと感じる一方で、課題も多いと感じています。まずこれはやむを得ない問題ですが、「食習慣」に関しては我々日本人にはそのまま当てはめる事が困難です。LE8では、Mediterranean Eating Pattern for Americans (MEPA)という指標で評価する事になっています。これは地中海式の米国版となります。“地中海式”の食習慣に関しましては、2015年9月号で書かせて頂いており、私自身も取り入れているものではありますが、食習慣は国ごとの文化等も踏まえる必要もあります。日本の場合は日本動脈硬化学会が推奨しているThe Japan Diet2)(図)の遵守もありとしたいところです。

〔図〕 The Japan Dietとは

アテ

また「身体活動」に関しては従来通り、中強度以上の運動時間だけでスコア化している点に課題があります。“運動”も大事ですが“日常生活活動(NEAT)”(2010年10月号参照)や“座位時間の短縮”(2016年5月号参照)も重要である事が証明されています。しかし残念ながらこれらは今回スコアに取り入れられていません。

さらに今回新たに加わった「睡眠」にも課題があります。自己申告による睡眠時間を元にスコア化していますが、途中で目が覚めている時間帯等がありますので、就床している時間と実際の睡眠時間には乖離があります。この乖離時間が短い方(睡眠効率が高くて睡眠の質が良い方とも言えます)と長い方がおられますので、同じ基準(就床時間)に当てはめて良いのかという問題があります。また睡眠効率とも関連しますが、そもそも適切な睡眠時間は個人差が極めて大きいです。しかしながら睡眠の研究自体がまだ黎明期ともいえる状況であり、そもそも睡眠の評価自体も確立していないのが実情ですので、やむを得ない部分もあります。
これらの課題に関しては、今後の改訂に期待したいところです。

4.さいごに

以上のように、新しい心血管健康指標はCVHというスコアリングシステムの導入など順当かつ革新的な改訂がなされた一方で、我々がこのまま使う事は困難であり、特に「食習慣」については日本人向けのスコア化が必要と感じます。このように課題はありますが、LE8の概念は非常に理にかなったものであり、とても参考になります。皆様の健康管理に役立てて頂ければ幸いです。

参考文献

同友会メディカルニュース / 医療と健康(老友新聞)

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