同友会メディカルニュース

2020年8月号
COVID-19を含めた感染症の予防についての豆知識

1.はじめに

世界全体では新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大に歯止めがかかっていません。日本でも患者数が一時減少しておりましたが、7月に入ってからは再び増加している状況です。皆様も「新しい生活様式」にもとづいて、不安を抱えつつ自衛しながら過ごされていることと思います。

COVID-19に関する全体的な内容に関しては、他の先生が非常にわかりやすくまとめて下さっています。読んでいない方はまずご一読下さい。

新型コロナウイルス感染予防対策

今回はこの内容を深掘りする形で、COVID-19を含めた感染症の予防に焦点を当てたいと思います。

2.COVID-19の感染伝播に関して

まだわかっていない事も多いのですが、やっかいなCOVID-19、特徴がだいぶ解明されてきました。COVID-19の原因ウイルスはSARS-CoV-2ですが、このウイルスに感染すると、5日前後の潜伏期をへて発症します。感染性(他の方にうつす可能性)に関しては発症2日前から生じて発症前後がピークになり、その後徐々に低下していきます1)。この感染性の特徴は非常にやっかいです。風邪の症状が続くから他の方にうつさないように気をつけるという考え方はCOVID-19の場合は全く間に合わないのです。症状の有無に関わらず、一人一人が日頃から感染症対策を常に意識して行っていくことが重要です。

3.手洗いについて

感染症対策の基本の1つである「手洗い」ですが、正しい方法として、「十分な量の洗浄剤(ハンドソープ等)をとり、しっかりもみ洗いを行い、十分な流水で洗い流す」といった事がよく言われています。しかし具体的に何秒かければよいのか?薬用石鹸でなくてもよいのか?など疑問を感じる方もおられるのではないでしょうか。

コロナウイルスを対象にした研究ではありませんが、ハンドソープは十分に泡立てられる量であればそれ以上増やしても効果は同じで、もみ洗い時間は適切な方法であれば10~20秒で十分でした2,3)。そして2度洗いがより効果的でした。具体的にはウイルス量は流水すすぎ(15秒間)のみでも約1/100となり、ハンドソープで10秒もみ洗いの上で流水すすぎを行うと約1/1000になり、2度洗いでは約1/1000000となりました。ハンドソープは界面活性剤を含んでおり、手洗い時に洗浄作用を発揮して細菌やウイルスの除去効果がさらに向上するためと思われます。また薬用石鹸である必要性はなく、普通のハンドソープで十分です4)。

SARS-CoV-2はしぶといウイルスです。プラスチックやステンレスや紙幣上で数日以上感染性を維持するなど、感染持続時間は長い事がわかっています5)。また、拡散性も高いです。医療機関内におけるウイルス拡散をシミュレートした研究6)では、ベッドの手すりに付着させたウイルスが、10時間後には院内の様々な場所に設置したサンプルの41%に拡散していました。ウイルスに汚染された所に触れることでご自身の手に付着し、その手で口や鼻や眼などの粘膜面を触ることでウイルスは体内に侵入します。そして我々は意外と顔をよく触っています。豪州の研究7)では、1時間に平均23回顔を触っており、うち10回は粘膜面を触っていたと報告しています。

手洗い
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気をつけていても感染のリスクは常に存在しています。少量のウイルスであれば生来からある自然免疫で退治できると思われるので、必要以上に恐れることはありませんが、正しい手洗いを面倒くさがらずにこまめに行う事を習慣化しましょう。

4.マスクについて

通常のマスクは目の粗さがウイルスよりも大きく、効果が低いとする研究報告もありますが、これらは研究室レベルでの報告です。臨床(実生活)での報告では、ウイルス感染に対しマスク着用は効果があるとする報告がほとんどです。コロナウイルスを対象にした44件の研究を総合的に解析した報告8)でも効果があり、マスク着用で感染リスクが85%減少しました。なおN95マスクの方がより効果が高い傾向を認めましたが、サージカルマスクや布マスクでも十分な効果を認めています。

コロナウイルスに感染した方の発声や息遣いからもウイルスを含んだ飛沫が排出されます。マスクを着用して頂くと飛沫(5マイクロメートル超)だけでなく小さな飛沫(5マイクロメートル以下)由来のウイルスも排出を大幅に防げる事が報告されています9)。

北京でのSARS-CoV-2二次感染について検証した研究10)では、家庭内初発者の発症前からマスク着用で家庭内での二次感染を79%防ぐことが出来たと報告しています。一方で、発症後からのマスク着用は効果が認められませんでした。やはり日頃からの感染症対策が重要と言えます。

5.さいごに

今後懸念される第2波を含め、COVID-19との戦いはまだまだ続きます。しかし、必要以上に恐れたり不安になるべきではありません。そもそも感染症はCOVID-19だけではなく、将来別のウイルスが流行するかもしれないのです。ゆえに、新しい生活様式にもとづいて、個々人が日常生活における感染症対策をしっかりと継続していく事が重要なのです。今後も3密を出来るだけ避け、こまめな手洗いやマスク着用などを心がけて頂きたいと思います。

参考文献

  • Xi He, et al. Temporal dynamics in viral shedding and transmissibility of COVID-19. Nat Med 2020;26:672
  • Dane A. Jensen, et al. Quantifying the effects of water temperature, soap volume, lather time, and antimicrobial soap as variables in the removal of escherichia coli ATCC 11229 from hands. J Food Prot 2017;80:1022
  • 森功次 他. Norovirusの代替指標としてFeline Calicivirusを用いた手洗いによるウイルス除去効果の検討. 感染症学会誌 2006;80:496
  • Kim SA, et al. Bactericidal effects of triclosan in soap both in vitro and in vivo. J Antimicrob Chemother 2015;70:3345
  • van Doremalen N, et al. Aerosol and surface stability of SARS-CoV-2 as compared with SARS-CoV-1. N Eng J Med 2020;382:1564
  • Rawlinson S, et al. COVID-19 pandemic - let’s not forget surfaces. J Hosp Infect published online May 20, 2020
  • Kwok YL, et al. Face touching: A frequent habit that has implications for hand hygiene. Am J Infect Control 2015;43:112
  • Chu DK, et al. Physical distancing, face masks, and eye protection to prevent person-to-person transmission of SARS-CoV-2 and COVID-19: a systematic review and meta-analysis. Lancet 2020;395:1973
  • Leung NHL, et al. Respiratory virus shedding in exhaled breath and efficacy of face masks. Nat Med 2020;26:676
  • Wang Y, et al. Reduction of secondary transmission of SARS-CoV-2 in households by face mask use, disinfection and social distancing: a cohort study in Beijing, China. BMJ Glob Health 2020;5:e002794

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