同友会メディカルニュース

2021年9月号
のどの違和感:咽喉頭異常感症について

1.咽喉頭異常感症とは

のどに何か異物があるような感覚や何かがつまっているような感覚は比較的多くみられる症状で、耳鼻咽喉科の外来を受診される方の5~10%を占めるともいわれています。そのような症状がみられた場合、医学的にはひとまず咽喉頭異常感症という診断名となります。咽喉頭異常感症には原因として様々な疾患が考えられる一方、検査を行っても全く異常がないこともあり、がんに対する不安感などの精神的な問題が原因となっている場合もあります。
今回はこの咽喉頭異常感症についてお話をしてみたいと思います。

2.頚部の解剖と咽喉頭異常感症の分類

のどの周囲は医学的には頚部といい、解剖学的にも機能的にも複雑です。図1に頚部の解剖図を示します。喉頭は発声を行う声帯を含み、気管に連なり呼吸の際に空気の通り道となります。咽頭は鼻腔や喉頭・食道と連なる部分で上・中・下咽頭の3か所に細分化されており、空気と食物の通り道となります。他にも頚部食道や気管、甲状腺や頚部のリンパ節、扁桃腺などがあります。様々な検査を行った結果、これらの臓器に咽喉頭異常感症の原因となるような客観的な異常があるものを症候性咽喉頭異常感症、検査では全く異常がみられない場合を真性咽喉頭異常感症といいます。

〔図1〕 頚部の解剖

頚部の解剖

3.症候性咽喉頭異常感症の原因疾患

症候性の場合、原因疾患としては頚部の臓器に原因がある場合と、全身的な疾患に原因がある場合とに分けられます。

局所的な要因の場合は図1に示した諸臓器(喉頭・咽頭・頚部食道等)のがんなどの腫瘍、逆流性食道炎などの炎症や喉頭アレルギーなどのアレルギー疾患が原因として考えられ、全身的な要因としてはドライアイ・ドライマウスをきたすシェーグレン症候群などが原因として考えられます。

腫瘍の診断に関しては頚部超音波検査や頚部のCT・MRI検査も有用ですが、喉頭内視鏡検査や上部消化管内視鏡検査(いわゆる胃カメラで、咽頭と喉頭・食道なども観察可能です)ではより早期の状態のがんの診断が可能です。

炎症性疾患としては逆流性食道炎が代表的で、上部消化管内視鏡検査で診断されます。近年肥満の増加などに伴い増加傾向にあり、主症状は胸やけや呑酸症状(胃酸逆流により口の中に酸っぱいものがあがってくること)ですが、咽喉頭異常感を伴うこともあります。

他にも炎症性疾患には逆流性食道炎と部分的に重なる咽喉頭逆流症(laryngophageal reflux disease:以下LPRD)もあります。LPRDは胃内容の咽喉頭への逆流によって引き起こされる疾患群で、咽喉頭異常感や声がかれたり、慢性的な咳、喉頭肉芽腫(声帯周囲に炎症を繰り返すことによって腫瘤が生じる)などの症状がみられます。逆流性食道炎を合併することもLPRDの兆候のみを示す場合もあります。LPRDの発生機序として①直接傷害説(逆流した胃内容物が咽喉頭粘膜に直接粘膜傷害を起こす)、②反射説(逆流した胃内容物によって下部食道の神経が刺激された反射として咽喉頭症状が引き起こされる)の2つが挙げられています。内視鏡検査で咽頭の発赤や腫脹があれば客観的に診断が可能となりますが、異常を示さないことも多くみられます。その場合、24時間下咽頭食道多チャンネルpHインピーダンス検査(鼻から下咽頭・食道に管を挿入し24時間継続で逆流を計測する検査)が精密検査法としてはあるものの普及度が低く、患者さんへの身体的負担が大きいため専門施設以外では行われていません。他には診断的治療としてPPIテスト(プロトンポンプインヒビターという制酸剤を一定期間内服して症状が改善するか否かを観察する)が行われることがあります。

アレルギー疾患で咽喉頭異常感症としての症状をきたすものとしては、慢性喉頭アレルギーが挙げられます。これは主にアレルギー体質の人に痰を伴わない咳と咽喉頭異常感を呈する疾患で、季節性と通年性の2つがあります。

4.真性咽喉頭異常感症の病態

症候性咽喉頭異常感症を念頭に置いて十分な精査を行っても全く異常がみられない場合、真性咽喉頭異常感症と診断されます。

真性咽喉頭異常感症の主な原因の一つとしてストレスがあります。ストレスが生じると交感神経という緊張した時に無意識に作動する神経の働きが強まり、それにより咽喉頭周囲の筋肉が過剰に収縮し違和感が生じるもので、不安や緊張状態があるときに症状が出やすいといわれています。その他にも、がんに対する不安を抱えている場合も咽喉頭異常感が出やすいとされています。

真性の場合は経過の特徴として異常感の程度が変化せずに続くことが多く、液体を飲み込むときに違和感が出現しやすく固形のものを飲み込むときには違和感が生じないことが多いといわれています。

5.咽喉頭異常感症の治療

症候性咽喉頭異常感症はその原因に対する様々な治療を行います。例としては咽頭がんや喉頭がん、食道がんであれば病変部の外科的切除や放射線治療などが行われます。咽頭や食道の早期のがんであれば、近年は内視鏡的切除も行われています。ある程度進行した咽頭・喉頭・頚部食道がんに対して喉頭摘出術が選択されることがありますが、喉頭が切除されると声帯も切除されることになるため発声が不可能になり、かなり生活が制限されます。この点からもがんに対しては早期発見がやはり重要と考えられます。

逆流性食道炎やLPRDの治療としてはライフスタイルの改善(肥満の改善と早食い・過食の是正、就寝前の食事を避ける、刺激物を避ける、頭側挙上もしくは左側臥位での就寝)と制酸剤、消化管運動機能改善薬などを使用します。喉頭アレルギーに対してはアレルギーを抑制する抗ヒスタミン剤が有効です。全身性疾患が原因と考えられる場合には原疾患の治療が行われます。

真性の場合は病態の理解と経過観察が重要です。真性の診断に至るまでには様々な検査で異常がないことが必要ですが、どのような疾患が明確に否定されるのか、同じ症状が悪化せずに継続するときには腫瘍などの進行性の病気は考えにくいこと、症状が継続する場合には定期的な経過観察が必要であること、などを理解していただくことが重要と考えられます。その上で不安などが背景にある場合、抗不安薬や抗うつ剤、漢方薬が症状の改善に有効なことがあります。

参考文献

  • “のど・はな・みみ”の内科学. Medicina. 2021 vol.58 No.7 医学書院
  • 胃食道逆流症(GERD)診療ガイドライン2021 改訂第3版 日本消化器病学会編集 南江堂
  • 生涯教育シリーズ アレルギー疾患のすべて 日本医師会雑誌 第145巻 特別号 2016. 6月 監修:足立 満、斎藤博久 編集:小川 郁、片山一朗、山口正雄
  • 咽喉頭逆流症―診断・治療のポイントー ENTONI no.238 2019年11月 編集企画 梅野博仁 全日本病院出版会

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