同友会メディカルニュース

2019年6月号
GISTについて~胃のGISTを中心に~

1.GISTとは

GIST(ジストと発音)という病気についてご存知でしょうか。最近著名人でGISTが原因で亡くなられた方の報道がありましたが、その際にGISTという病名を耳にした方もいらっしゃるのではないかと思います。

GISTは比較的まれな病気であり、多少複雑な疾患概念であるため一般的には少し理解しにくい病気ではないかと思われますが、基本的にはがんと同様の悪性腫瘍に分類されるため、注意が必要な疾患です。

GISTとはGastro-intestinal stromal tumorの略(下線部を順番に並べたもの)で、日本語では消化管間質腫瘍といいます。消化管は口腔から食道・胃・小腸・大腸を経て肛門まで連続する一本の管であり、この管を構成する壁は基本的に内側から粘膜・粘膜筋板・粘膜下層・固有筋層・漿膜(食道と直腸の一部では外膜)という構成でできています。GISTと同じ悪性腫瘍であるがんは粘膜から発生しますが、GISTは粘膜より下の間質と呼ばれる部分(主に固有筋層)から発生することががんと異なります(図1)。

[ 図1 ] 消化管壁の構造とGISTの発生部位

図1 消化管壁の構造とGISTの発生部位

(参考文献4より改変)

GISTはその間質(主に固有筋層)中の消化管の運動に関与する細胞から発生した腫瘍で、細胞の増殖に関わるKITという異常な蛋白質が産生されることにより生じます。一般的にはKITを腫瘍の組織から検出することでGISTと診断され、GISTの95%以上に検出されますが、最近はこのKIT蛋白以外にも様々な物質(CD34やDOG1)がGISTの診断に用いられています。

GISTの発生臓器としては胃が最も多く50~70%、小腸が20~30%、大腸が10%で食道はまれです。

2.腫瘍の良性・悪性とGISTの悪性度について

腫瘍という言葉は異常な細胞の増殖を示していますが、悪性と良性の違いは、悪性は増殖する能力が高く周囲や血管・リンパ管などに浸潤し他の臓器などに転移をきたす能力を持つ腫瘍を、良性はある程度以上は大きくならずに局所にとどまる腫瘍を指します。さらに腫瘍はその起源となる細胞により上皮性(体表や、消化管など外界に開く管の内面を覆うものを上皮といいます)と、それ以外の非上皮性に分けられ、上皮性の悪性腫瘍の代表ががんであり、非上皮性のものには肉腫やGISTが含まれます。

胃や大腸の上皮(粘膜)から発生する腫瘍では、悪性(癌)と良性(ポリープや腺腫など)の区別が病理検査(顕微鏡で細胞・組織を観察する検査)の所見によって基準がはっきりしています。GISTは基本的には悪性腫瘍ですが、その病理所見だけでは悪性度(転移や再発の起こしやすさ)の評価が困難です。GISTの悪性度は再発の危険(リスク)が高いか低いかで分類され、再発の危険が高いものは腫瘍径が大きい場合や細胞分裂の数が多い(=増殖が盛ん)場合とされています。GISTと診断されれば、手術で完全に病変が切除された後も、がんの術後と同様に再発の監視のために定期的な経過観察が必要で、再発のリスクが高い場合は手術後に抗がん剤による治療が必要となる場合もあります。

3.GISTは粘膜下腫瘍として発見される

ここからGISTの発生臓器としては最も頻度の高い、胃のGISTを例に説明します。

GISTは粘膜より下の間質から発生するため、胃のバリウム検査や内視鏡検査などでは表面が正常の粘膜に覆われた腫瘍(粘膜下腫瘍)として発見されます(図2)。

[ 図2 ] 胃の粘膜下腫瘍

図2 胃の粘膜下腫瘍

胃の粘膜下腫瘍。腫瘍の表面は周囲と同様の正常粘膜に覆われており、通常の生検では腫瘍組織の採取は困難。

粘膜下腫瘍という言葉は、病変の形態的な異常、つまり正常粘膜に覆われた隆起病変(胃の内腔に突出するような病変)を示すもので、本質的な診断名(GISTやがんなど)とは異なります。腫瘍でないもの(例えば他の臓器による胃壁の圧迫など)も含まれるため、正確には粘膜下腫瘍様病変という場合もあります(表1)。現在、日本では胃がん検診目的の内視鏡検査で0.1%、胃内視鏡検査例全体では約3%に胃の粘膜下腫瘍がみられるといわれており、胃の粘膜下腫瘍自体はそれほどまれな所見ではありません。

表1

4.GISTの症状

GISTは10万人に1~2人と比較的稀な腫瘍です。発症の男女差はなく、中高年に好発(60歳代でピーク)します。GISTには現在のところ胃がんに対するピロリ菌のような、発症に関与する危険因子は推定されていません。

GISTは粘膜下腫瘍の形態をとるため、出血をきたすことも少なく症状に乏しいとされていますが、腫瘍が大きくなればその表面が崩れて潰瘍を形成して吐血や下血などの消化管出血の症状をきたしたり、腫瘍を腹壁から触れるようになったり、消化管を圧迫することによる通過障害などの症状が出るようになります。

日本では胃の検診が広く普及しているため、5cm以下の無症状のGISTが多くみられますが、欧米では胃の検診が日本ほど普及していないことから、症状が出現してからはじめて検査を行い発見されることが多く、10cm以上の割合が多くなります。GISTは腫瘍が大きいほど悪性度が高くなり、欧米では日本よりも再発率が高いとされています。

5.GISTの診断

GISTと診断するためには腫瘍組織を確実に採取することが必要となりますが、一般的に粘膜下腫瘍では消化管の深い部分に腫瘍の本体があるため、通常の内視鏡検査の時に行う生検では診断は困難です(図2)。そのため手術による腫瘍切除を行った後での病理組織検査や、超音波内視鏡(=以下EUSと略。通常の内視鏡スコープの先端に超音波装置が装着されており、粘膜下腫瘍の診断に使用されます)をガイドにして腫瘍に針を穿刺して腫瘍組織を採取する穿刺吸引生検法(以下EUS-FNABと略)という特殊な技術により診断されます。

EUS-FNABは粘膜下腫瘍の診断に大変有用な方法ですが、専用の内視鏡装置や熟練した手技、さらに検体処理のため細胞診技師や病理医の同席などが必要で、現状では施行できる施設が限られます。EUS-FNABでGISTと診断されれば手術による切除の適応となりますが、日本ではバリウム検査や内視鏡などの胃がん検診で粘膜下腫瘍として発見され、そのうち腫瘍径が大きい場合や経過観察により増大傾向のある場合に手術を実施し、切除した腫瘍の病理検査の結果でGISTと診断されることが多いと考えられます。

そのため、GIST診療ガイドラインでは臨床の現場に即した粘膜下腫瘍の治療方針が記載されています(表2)。手術などでGISTと確定診断された後、の増殖する能力と腫瘍の大きさから再発のリスク、すなわちGISTの悪性度を判断します(表3)。

[ 表2 ] 胃粘膜下腫瘍の治療方針

胃粘膜下腫瘍の治療方針

(参考文献1より改変)

[ 表3 ] GISTのリスク分類
大きさ(cm) 核分裂像数(/50HPFs)
超低リスク <2 <5
低リスク 2~5 <5
中リスク <5 6~10
5~10 <5
高リスク >5 >5
>10 Any
Any >10

(参考文献1より引用)

6.GISTの診断のために

GISTは比較的稀な腫瘍ですが、EUS-FNABのような特殊な診断法によるか、手術的に切除されないと確定診断が困難なため、切除されないような小さな腫瘍を含めれば実際の頻度はもう少し多いのではないかと考えられています。

GISTは生活習慣上の予防方法などにはっきりしたものはありません。GISTは大きくならないと症状が現れないことが多く、その発見についてはまずバリウム検査や内視鏡検査での胃の検診を受診することが大切です。もし胃に粘膜下腫瘍が発見された場合、大きくなる傾向があるか否かを判断するために定期的な検査による経過観察が重要と考えます。

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同友会メディカルニュース / 医療と健康(老友新聞)

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