季刊誌「お元気ですか」アーカイブ

2023年10月号

お元気ですか2023年4月号

「私の健康法」

旅先での出会いやその土地の文化に触れること。
それがライフワークであり、曲作りの「本線」なんです。

作曲家・歌手
弦 哲也さん

――今回は作曲家の弦哲也さんにご登場いただきました。「ふたり酒」「天城越え」など数々の大ヒット曲を生み出し、日本作曲家協会の会長を退任後、現在は日本音楽著作権協会の会長を務められるなど、常に日本の音楽業界のトップに立ち続けている弦さんに、作曲家になられたきっかけや曲作りに対する思いなどをお話しいただきました。

子供の頃から好きだった
「古賀メロディー」が原点

 小学校に上がる前から歌とギターが好きで、よくちゃぶ台に乗って、ギターの代わりにホウキを持ってメロディーを口ずさんでいました。6年生のある時、初めておばあちゃんにギターを買ってもらいました。古賀メロディーっていうのが好きで、あの前奏のギターの音色がいいんですよ。でも、アルバイトをしたって自分で買える金額ではありません。それをおばあちゃんが買ってくれたんです。学校に行く時も、帰ってきても、一時も離さなかったですね。東京に出てくる時もそのギターを持って。もちろん今でも持っていますよ。
 「弦哲也」というのは師匠が付けてくれた名前です。デビュー当時は「田村進二」という芸名でしたが、売れない時期が続き、もっと目立つ名前が良いと言われ「お前はギターを持ってるから、ギターの弦を名前にしろ。徹夜で考えたから弦哲也だ」という理由で今の芸名になりました(笑)。

「歌手だけが道ではない」
北島三郎の一言で作曲家に

 売れない歌手時代にカミさんと結婚して共稼ぎをしていました。私は歌手とは名ばかりで、ナイトクラブとかバーとか、そういう所で弾き語りをやっていました。カミさんもアルバイトに行って帰りは夜遅く、そういう生活をしてる時に子供が生まれたんです。生活力がないのに子供ができて、子供を授かった喜びよりも不安の方が大きかったんです。そのうち両親が見かねて「この子は私たちが育てるから、お前たちはお前たちの生活をしっかりやれ」と言われ両親に子供を預けたんです。「息子を迎えに行ける日までなんとか頑張ろう」とは思いましたが、なかなかその結果が出なくて。
 そんなある時、北島三郎さんから「歌手を目指すのも男の夢かもしれないが、やっぱり家族を食わしていかなきゃいけないだろう。音楽の道は歌だけではない。作曲っていう道もあるぜ。こんな俺でも歌作りをしてるんだよ」そう言って私のギターを弾きながら聞かせてくれた歌があったんです。それが実に心に染みてね。歌を歌うことで聴く人の心に何かを届ける歌手という仕事だけではなく、自分が作ったメロディーが人の心の中に染み込んで感動させるという作曲家の仕事もあるんだということを知りました。それから無性に曲作りへの興味が強くなりました。
 ちょうどその頃、私が裏方としてアルバイトをしていた番組のスタッフが囲碁・将棋の番組も担当していて「将棋の棋士を歌手にしてデビューさせちゃおうよ」っていう話になったんです。当時は異色歌手がずいぶん出た時代だったんですね。それで棋士の内藤國雄九段に作った僕の作曲家としてのデビュー作『おゆき』が幸運にもヒットしたんです。
 ヒットすると当然印税が入ってきて、夜の弾き語りの稼ぎの何十倍という印税が入ってきて「これだったら子供を迎えに行けるね」ということで子供を迎えに行ったんですよ。4か月で預けた子供が5歳になっていましたね。

出逢いを求めて旅を続ける
島唄作りがライフワーク

 休みの間は旅に出ることが多いです。旅ってのは景色であったり、あるいは郷土料理であったり地酒を頂戴したり、そういう楽しみもあるんですけれど、一番の楽しみはその土地の人との出会いですね。そのため一度行っただけという場所はあまりないですね。何回も足を運んで「また来たよ」っていう感じの旅が多いんです。最近は島巡りの魅力に取り憑かれています。日本列島北から南まで、有名無名の島がいっぱいあるんですけど、それぞれ歴史や文化など、みんな違います。その島に古くから伝わる民謡であったり踊りだったり伝統芸能があって、そういうものに出会えたり触れ合ったりできるんです。せっかくだから島それぞれの歌を作っちゃおうということで、北は北海道奥尻島から始まって、それから佐渡、もうちょっと南に下って島根県の隠岐の島、伊豆諸島の中の御蔵島、瀬戸内の小豆島からもちろん沖縄まで。そういう場所を全部自分が実際に旅をして歌を生みだしているんですよ。これが私のライフワークになっているんです。ライフワークっていうのを持つと、歌手には一つの「本線」ができる。その本線を持つっていう事はすごく大事なんです。もちろんそれを守り抜くこともの難しさもありますよ。

今の夢は歌手を育てること
格好よく言うと「ロマン」

 30年くらい前に、旅先で血圧が一気に上がった時がありました。今は定期的に人間ドックに行って、3か月に1回は血液検査と尿検査もしていて、一番弱い薬を飲み続けて安定しています。実は今、ひとつ夢を持っているんです。それを実現させるためには、まだまだ健康でいなくちゃいけませんから。
 大御所と言われている作曲家の人たちは、やっぱりスターを育てているわけですよね。私の所からも何人かデビューさせました。挫折して田舎に帰っちゃった子もいますが、売れていなくてもこの世界に残る人もいます。そんな人には「継続が力なんだから頑張れ!」と応援しています。私が果たせなかった歌手という夢を、代わりに果たしてくれる人を育てたいというか、格好よく言うと「ロマン」。それが今の僕の夢なんです。
(談)

弦哲也(げんてつや)さん

<プロフィール>
弦哲也(げんてつや)さん
1947年生まれ。千葉県出身。
1965年に東芝レコードから「田村進二」として歌手デビューし、1968年に「弦哲也」と改名。その後北島三郎氏にすすめられて作曲活動を開始。1986年より作曲活動に専念。以降、美空ひばりや石原裕次郎、石川さゆり、細川たかし、都はるみなど数多くのスター歌手に曲を提供し、その数は2500曲を超える。2022年には日本音楽著作権協会(JASRAC)会長に就任した。

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