同友会メディカルニュース
魚を食べると血管は元気
メタボリックシンドロームが有名となり、動脈硬化という言葉も大分認知されてきました。動脈硬化は日本人の主要死因の第2位を占める、狭心症や心筋梗塞といった冠動脈疾患、脳梗塞の原因です。日々の生活でこれらを予防、早期発見することが大切であり、食生活や運動などの生活習慣に気を配っていられる方も多いのではないでしょうか。
動脈硬化を予防するために最近は肉よりも魚を摂取することが勧められています。特に青魚の油にはEPA(エイコサペンタエン酸)、DHA(ドコサヘキサエン酸)というn-3多価不飽和脂肪酸が多く含まれており、これらに抗動脈硬化作用があるとされているため積極的な摂取が勧められています。 以前よりこの成分は注目されており、肉食中心の欧米諸国と比し魚食の多い日本で心臓病が少ない理由とされていました。今回はこの魚油についての知見をご紹介したいと思います。
戦後生まれの日本人は食事などの生活習慣が欧米化し、冠動脈疾患の発症危険因子とされている総コレステロール、血圧といった値は米国同様となりました。しかし冠動脈疾患による死亡率は日本では欧米よりも低い値を維持しています。このことから、日本人は冠動脈疾患発症の危険を低下させる 何か防御因子を有している可能性があるとされていました。 これを明らかにするため、CT検査や超音波検査を用い冠動脈や頸動脈の動脈硬化を評価し、その日米での程度の違いと動脈硬化危険因子を比べる研究が行われました(*1)。平均45歳の日本人、米国人、日系アメリカ人3〜4世を合わせて比較検討したところ、まず魚油由来の不飽和脂肪酸濃度は、日本人では米国人や日系人の2倍も多いことが判りました。そして米国人の26.1%、日系人の31.4%には冠動脈に動脈硬化である石灰化が認められたのに対して、日本人ではわずか9.3%しか石灰化が認められませんでした。さらに日本人では魚由来の不飽和脂肪酸濃度が高ければ、頸動脈と冠動脈の動脈硬化は反比例してより軽度であることが分かったのです。しかしこの現象は米国人や日系人ではみられなかったため、日本人は人種的にではなく、後天的に魚油の摂取にて高い不飽和脂肪酸濃度を保ち、抗動脈硬化作用を得ていることが明らかとなったのです。
また日本人内で魚摂取と心筋梗塞の発症にどのくらい差があるかを検討した調査も行われています(*2)。魚の摂取が少ない(週1回,約20g/日)人に比べ、より大量に摂取する(週8回,約180g/日)人では心筋梗塞の危険は47%に減少することがわかりました。また不飽和脂肪酸の摂取量換算で検討したところ、1日0.3g摂取と2.1gの摂取群では、やはり心筋梗塞は1日2.1g摂取群で43%に減少していることが解ったのです
他にも、日本人ですでに高脂血症の治療を代表的なコレステロール低下剤にて受けている人を対象とした研究もなされています(*3)。コレステロール低下剤に加えてEPAを追加投与した研究では、冠動脈が詰まることによる狭心症や心筋梗塞の発症が、EPA投与により19%も低下を認めたとの報告もあります。
このようにわが国には魚(魚油)を摂取する伝統があるために、欧米諸国に比べて動脈硬化による病気を防いでいる可能性が大きいのです。近年食の欧米化が進んでいますが、今後も積極的に魚を食べて心筋梗塞や脳梗塞を予防していきましょう。
*1 Sekikawa A et al for the ERA JUMP study group Marine-derived n-3 fatty acids and atherosclerosis in Japanese, Japnese-American and white men: a cross-sectional study. J Am Coll Cardiol 2008;52: 417-24
*2 Iso H et al JPHC Study Group. Intake of fish and n3 fatty acids and risk of coronary heart disease among Japanese: the Japan Public Health Center-Based (JPHC) Study Cohort I. Circulation. 2006 Jan 17;113(2):195-202. Epub 2006 Jan 9.
*3 Yokoyama M et al for the Japan EPA lipid intervention study (JELIS) investigators: Effects of eicosapentaenoic acid on major coronary events in hypercholesterolaemic patients (JELIS): a randomised open-label, blinded endpoint analysis. Lancet. 2007; 369: 1090-8

