同友会メディカルニュース

2016年1月号
脳動脈瘤について

近年、MRI(磁気共鳴画像)機器の発達と脳ドックの普及などにより、脳動脈瘤が発見される頻度が急激に増加しております。今回は、脳動脈瘤について解説させていただきます。

1.脳動脈瘤とは

脳動脈瘤とは、脳の動脈の一部分がふくらんだものです。その形から嚢状(袋型)と紡錘状に分けられます。脳動脈瘤は、血管が枝分かれした部分にできることが多いです。脳動脈瘤の多くは無症状ですが、脳動脈瘤が破裂すると「くも膜下出血」を起こします。くも膜下出血が起こると、約4割の方が死亡し、約3割の方は重い障害が残り社会復帰できない状態となります。くも膜下出血の原因の約8割が、脳動脈瘤の破裂です。

図1

2.脳動脈瘤の保有率

2011年に発表された、Vlakらによる21か国94912人を対象とした調査結果では、成人の3.2%に脳動脈瘤が発見されました。女性は男性の1.6倍の頻度であり、50歳以上ではその比は2.2倍でした。
また、我が国のHisayama Studyの結果によりますと、久山町における1962年から30年間にわたる1230例の剖検(剖検率80%以上)では、27例(2.2%)に脳動脈瘤が発見されました。
その他に、Rinkelらが、剖検と脳血管造影での発見率を述べた23論文を解析した結果によりますと、成人の脳動脈瘤の発生頻度は全体で2.3%、脳動脈瘤に注目して行われた検討では、剖検で3.6%、脳血管造影で6.0%となっています。
これらの結果から、脳動脈瘤の保有率は、成人の2-6%と推定されます。

3.脳動脈瘤の危険因子

Vlakらは、脳動脈瘤がある方とない方の違いについて研究をおこない、現在の喫煙、高血圧、脳卒中の家族歴は、脳動脈瘤がある方に多く、週3回以上の運動をしている方では、脳動脈瘤の発生が少ないことを報告しました。
つまり、現在タバコを吸っている方は禁煙する、高血圧のある方は治療を受ける、
また、適度な運動を続けることによって、脳動脈瘤の発生を減らすことができる可能性が示されました。

4.脳動脈瘤の原因

脳動脈瘤の多くは、先天的なものと考えられています。その他の原因としては、頭部の外傷、高血圧、動脈硬化、喫煙、コカインなどの薬物、感染、腫瘍などがあります。

5.脳動脈瘤の部位別頻度

脳動脈瘤の好発部位は、前交通動脈、内頚動脈、中大脳動脈の三か所です。日本脳神経外科学会の主導により行われた、日本未破裂動脈瘤悉皆調査(Unruptured Cerebral Aneurysm Study Japan ; UCAS Japan)の結果によりますと、部位別の頻度は、中大脳動脈(36%)、内頚動脈(34%)、前交通動脈(16%)の順でした。

図1

6.脳動脈瘤の破裂率

UCAS Japanは、日本の283施設にて2001年1月から2004年4月までに新規に発見された脳動脈瘤を観察し、5720人、6697個の脳動脈瘤が解析の対象となりました。その結果、全体の破裂率は0.95%/年でしたが、大きくなればなるほど破裂率は高くなっていき、3-4mmの小さな動脈瘤と比べて、7-9mmでは3.4倍、10-24mmでは9.1倍、25mm以上では76.3倍の破裂率でした。

7.破裂の危険因子

UCAS Japanでは、脳動脈瘤の破裂のリスクは、動脈瘤の大きさ、場所(前交通動脈、後交通動脈)、形状(不整形)に影響されることが明らかとなりました。7mm以上の動脈瘤の部位別破裂率は、後交通動脈が4.99%/年と最も高く、次いで前交通動脈が3.28%/年でした。

表1. 破裂の危険性(%/年)
部位 <7mm ≧7mm 全体
前交通動脈 0.85 3.28 1.31
内頚動脈 0.10 1.37 0.31
中大脳動脈 0.25 2.57 0.67
後交通動脈 0.58 4.99 1.73
合計 0.40 3.01 0.95

8.治療

「脳ドックのガイドライン2014」では、5-7mm以上の動脈瘤は、治療を検討することが推奨されています。また、5mm未満の小さな動脈瘤であっても、症状(頭痛、眼痛、視野異常など)があるもの、前交通動脈や内頚動脈―後交通動脈分岐部のもの、不整形などの特徴を持つものは、治療を検討することが推奨されています。

現在、脳動脈瘤の治療は、開頭によるクリッピング術と血管内治療によるコイル塞栓術の二つがありますが、第一選択は開頭クリッピング術です。しかし、頭蓋骨を開けて行う手術が困難な場合は、血管内コイル塞栓術が適用されます。

治療の適応を決める際は、個別の症例に応じた判断が欠かせませんので、脳神経外科専門医の外来を受診してください。

9.経過観察の方法

多くの小さな動脈瘤では、外科的な治療を行わずに保存的に経過観察することが主な選択肢となります。その場合、「脳ドックのガイドライン2014」では半年または一年ごとにMRA(磁気共鳴血管画像)などでフォローすることが推奨されています。また、禁煙、節酒、高血圧の治療が必須です。経過観察中に増大するものは年2%弱であり多くはありませんが、増大した動脈瘤の年間破裂率は約18%と極めて高いため、注意深い経過観察が必要です。

10.まとめ

ご家族に脳卒中を起こされた方がいらっしゃる方、高血圧の方、喫煙されている方、脂質異常症や糖尿病や肥満があり動脈硬化を心配されている方などには、是非、頭部MRI検査および頭部MRA検査をお受けになることをおすすめいたします。

  • 参考文献・サイト:
  • 1) Vlak, et al: Prevalence of unruptured intracranial aneurysms, with emphasis on sex, age, comorbidity, country, and time period: a systematic review and meta-analysis. Lancet Neurol 10: 626-636, 2011.
  • 2) Iwamoto H, et al: Prevalence of intracranial saccular aneurysms in a Japanese community based on a consecutive autopsy series during a 30-year observation period. The hisayama study. Stroke 30: 1390-1395, 1999.
  • 3) Rinkel GJ, et al: Prevalence and risk of rupture of intracranial aneurysms: a systematic review. Stroke 29: 251-256, 1998.
  • 4) Morita A, et al: The natural course of unruptured cerebral aneurysms in a Japanese cohort. N Engl J Med 366: 2474-2482, 2012.
  • 5) 日本脳ドック学会脳ドックの新ガイドライン作成委員会(編):未破裂脳動脈瘤の対応. 脳ドックのガイドライン2014, p71-84, 響文社, 2014.
  • 6) 日本脳卒中学会脳卒中ガイドライン委員会(編):未破裂脳動脈瘤の治療. 脳卒中治療ガイドライン2015, p230-235, 協和企画, 2015.
  • 7) Inoue T, et al: Annual rupture risk of growing unruptured cerebral aneurysms detected by magnetic resonance angiography. J Neurosurg 117: 20-25, 2012.

同友会メディカルニュース

同友会メディカルニュース

2017年12月号
長引く咳の原因についてNEW
2017年11月号
人工知能の医療への応用
2017年10月号
膀胱炎の正しい知識と治し方
2017年9月号
暑さ指数(WBGT)をもっと活用しましょう
2017年8月号
サルコペニアご存知ですか?
2017年7月号
認知機能障害について
2017年6月号
心房細動と診断されたら
2017年5月号
逆流性食道炎とバレット食道について
2017年4月号
頭痛について
2017年3月号
汗っかきに潜む怖い病気
2017年2月号
睡眠時間確保のすすめ
2017年1月号
食塩摂取量気にしていますか?
2016年12月号
高LDL-C血症(俗にいう悪玉コレステロール)について
2016年11月号
最近のがん免疫治療の話
2016年10月号
乳房超音波検査で乳がん発見率の向上を
2016年9月号
骨粗鬆症(こつそしょうしょう)について
2016年8月号
夜中に足がつることはありませんか?
2016年7月号
ピロリ菌検査で「陰性」であっても気を付けて欲しいこと
2016年6月号
お薬手帳利用していますか?
2016年5月号
「座りっぱなし」をなくしましょう!
2016年4月号
歯周病、喫煙と乳がんとの関係
2016年3月号
血圧はどこまで下げればよいのか?
2016年2月号
過敏性腸症候群について
2016年1月号
脳動脈瘤について
2015年12月号
長時間労働は心・脳血管障害の大きなリスク
2015年11月号
「胆管がん」ってどんな病気?
2015年10月号
慢性膵炎についてご存知ですか?
2015年9月号
地中海食をもとに健康的な食習慣について考えましょう
2015年8月号
乳がん検診を受けましょう!
2015年7月号
コレステロールの摂取制限について
2015年6月号
アサーショントレーニング
2015年5月号
~胃の寄生虫、『アニサキス』について~
2015年4月号
うつ病について
2015年3月号
「体を動かすということ」をもう一度考えて...
2015年2月号
進歩する内視鏡検査
2015年1月号
高血圧について
2014年12月号
甘く見てはいけないインフルエンザ
2014年11月号
リンパ球と癌の関係
2014年10月号
HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)について
2014年9月号
睡眠時無呼吸症候群:いびきだけではない危険な病気
2014年8月号
小腸カプセルとダブルバルーンの話
2014年7月号
大動脈弁狭窄症の新しい治療法 -TAVI-
2014年6月号
世界肝炎デーご存知ですか?
2014年5月号
「胆石」の事をよく知って正しく付き合いましょう
2014年4月号
食習慣と腸内細菌の関係~代謝異常の視点から~
2014年3月号
さだまさしさんの歌に思う-鉄欠乏性貧血の話-
2014年2月号
データヘルス計画が始まります
2014年1月号
『胸やけ、げっぷ』ありませんか?
2013年12月号
「潜在性甲状腺機能低下症」ってご存じですか?
2013年11月号
肺がん検診のススメ
2013年10月号
大腸がん検診受けていますか?
2013年9月号
ピロリ菌除菌治療の保険適用が拡大されました。
2013年8月号
今一度、低炭水化物食(糖質制限食)について考えてみましょう。
2013年7月号
片足立ちで靴下を履けますか?
2013年6月号
腹部大動脈瘤も人間ドック・健診で早期発見を
2013年5月号
アルコールと消化器疾患について
2013年4月号
糖尿病とがん・糖尿病治療とがんの関係
2013年3月号
最近の禁煙事情
2013年2月号
膵臓(すいぞう)がんについて知っておいてほしいこと
2013年1月号
遺伝的なリスクはその後の行いで変えられるかもしれません
2012年12月号
血尿とIgA腎症
2012年11月号
動脈硬化疾患予防ガイドラインについて
2012年10月号
機能性胃腸障害について
2012年9月号
ドライアイのリスクと治療
2012年8月号
高血圧のタイプ別心血管・脳血管疾患リスクについて
2012年7月号
遺伝情報を用いたオーダーメイド医療の時代が、すぐ近くまで来ています。
2012年6月号
今の生活習慣が老後を決めてしまうかもしれません
2012年5月号
がん治療の最前線
2012年4月号
骨粗鬆症の予防について
2012年3月号
高血圧とは ガイドラインを中心に
2012年2月号
消炎鎮痛剤とがんの意外な関係
2012年1月号
食習慣改善はお菓子やジュース類を減らす事から始めましょう
2011年12月号
日本人はなぜ平均寿命が世界でトップクラスなの?
2011年11月号
大腸がん対策について
2011年10月号
生活習慣改善の目標と方法
2011年9月号
ひとりひとりが認知症に対する備えを
2011年8月号
よい睡眠が健康にはとても重要です
2011年7月号
たかがコレステロール、されどコレステロール
2011年6月号
肺がんには胸部CTが有効です
2011年5月号
動脈硬化を調べましょう
2011年4月号
「脂肪肝なんて」と軽く考えていませんか
2011年3月号
減量に最適なカロリーバランスは?
2011年2月号
血清抗p53抗体に関する話題
2011年1月号
関節リウマチの話題

お元気ですか

季刊誌

2017年7月号NEW
・私の健康法 前橋育英高等学校 硬式野球部監督 荒井直樹/・膵がんについて 順天堂大学 肝胆膵外科 准教授 吉本次郎/・むし歯予防の日/管理栄養士 花里 映里/・夏バテに注意しましょう 管理栄養士 花里映里/・肩こり予防・解消のペット ボトル体操 ヘルスケアトレーナー 原田 健/・ステキな素足ライフを 保健師 野中未夏/・歩いて健康 文京巡り 第10回「駒込富士神社」/・医療情報 第4回「健康と経営を考える会」シンポジウム開催
巡回健診・巡回レディース健診
巡回健診
巡回レディース健診
全国対応健診
全国ネットワーク健診

全国健康増進協会

有料老人ホーム
長寿の森
高齢者向け新聞
老友新聞社
社会活動
学術活動・セミナーのご案内
同友会グループの社会貢献
がん検診企業リアクション
日本乳がんピンクリボン運動
目指せ東京パラリンピック2020 瀬立モニカ選手を応援しています
広報
取材に関するお問合せ
取材に関するお問合せ

ページトップ