同友会メディカルニュース

2017年7月号
認知機能障害について

1.日本における認知症の推移

日本では認知症の方が増加しています。2012年時点では約462万人と推定されており、2025年には約730万人となり、認知症の予備群とも言える軽度認知障害(MCI)の方を含めると1300万人を超えると推測されています。これは国民の9人に1人が認知機能低下を有する事を意味しています。また、65歳以上の方に限れば、3人に1人にあたります。

四半世紀前(1992年頃)には認知症の方は90万人程度でした。なぜこんなに急激に増加しているのでしょうか?日本では高齢の方が増加していることもありますが、アルツハイマー病が大幅に増加している事が大きな原因です。図1は日本の認知症の方の推移を示したグラフ1)です。以前は血管性認知症(動脈硬化による認知症)が最も多かったのですが、アルツハイマー病(脳にアミロイドベータ蛋白蓄積に代表される変化が起きて神経細胞が脱落する疾患)が急激に増加しており、今や原因の約7割を占めていると考えられています。一方、脳血管性認知症は患者数としては横ばいです。

図1 日本の認知症発症率の推移(年齢別)

日本の認知症の方の推移

アルツハイマー病と言いますと、遺伝的な要因が大きいのではないかと思われる方も多いかもしれません。確かに遺伝的な要因はありますが、原因としては一部であり、生活習慣(食習慣や運動習慣や睡眠や喫煙)や肥満や糖尿病など後天的要因が少なくとも2/3以上を占めることが証明されています2)。実際、アルツハイマー病の方が短期間に何倍にも増加しているのがその証左と言えます。福岡県久山町の研究を中心に、参考になる認知症関連の報告をご紹介いたします。

2.喫煙と認知症

喫煙はアルツハイマー病のリスクを約2倍に、血管性認知症リスクを約3倍増加させます3)(図2)。しかし、途中で禁煙された方は認知症リスクがある程度低下する事が解ります。

図2

喫煙と認知症

3.高血圧と認知症

高血圧は脳血管性認知症の大きな原因である事が以前より解っています。
久山町研究でも図3のように中年期の高血圧が脳血管性認知症の強力なリスクである事を示しています4)

図3 血圧と血管性認知症

血圧と血管性認知症

他の研究5)になりますが、40歳前後の方を対象とした研究で、高血圧(収縮期血圧140以上)を有されている方では血圧が正常(収縮期血圧120未満)の方に比して、実年齢よりも平均7.2歳分脳が老化していたと報告しています。つまり、血圧が高いと中年期の時点で既に脳の老化が進んでいることになります。

4.糖代謝異常とアルツハイマー病

糖尿病は脳血管性認知症のリスクを増加させますが、アルツハイマー病も増加することが知られています。図4は血糖の精密検査である糖負荷試験の結果に基づいて4つのグループに分け、その後の認知症発症リスクを示したものです6)。2時間後血糖140mg/dl未満が正常、140~199mg/dlが境界型糖尿病、200mg/dl以上が糖尿病と判断します。120mg/dl未満を基準とした場合、アルツハイマー病のリスクが糖尿病では3倍以上となり、境界型糖尿病でさえ約2倍に増加することがわかります。

図4 血糖と認知症

血糖と認知症

最近報告のあった韓国の研究7)では、糖尿病の方は脳萎縮と認知機能低下を認めやすいのですが、肥満があるとさらに顕著になると報告しています。

5.認知機能低下の予防には

認知症は治療による改善は難しいのが現状で、治療の主な目的は進行を緩やかにし、可能であれば止める事になります。よって認知症は予防が大事です。そのために重要となるのが、述べてきましたように、糖尿病・高血圧・脂質異常症といった生活習慣病の予防や良好な管理です。加えて、生活習慣の改善も重要となります。

  • ・非喫煙
  • ・良い生活リズム(良好な睡眠状況を含む)
  • ・運動習慣を持つ
  • ・バランスの良い食事を心がける(野菜を十分に、主菜は魚や大豆製品中心に)
  • ・節酒を心がける

これらの生活習慣改善は認知機能低下を直接予防するだけでなく、糖尿病・高血圧・脂質異常症にも有益な作用がありますので、間接的にも認知機能低下を予防する事になります。実際に英国では男性の認知症発症率が大きく減少している(図5)という報告が昨年ありました8)。日本の現状と対照的ですが、これは国を挙げて生活習慣改善と生活習慣病予防に取り組んだ結果と考えられています。一方で女性の認知症が減少していませんが、女性の健康診断受診率が低いことが影響していると考察されています。皆様も健診やドックの結果を有効に活用して認知症の予防に役立ててください。

図5 英国の認知症発症率(年齢別)

英国・認知症発症率

  • 参考文献:
  • 1) Ohara T, et al. Trends in dementia prevalence, incidence, and survival rate Japanese community. Neurology 2017;88:1925
  • 2) Xu W, et al. Meta-analysis of modifiable risk factors for Alzheimer’s disease. J Neurol Neurosurg Psychiatry 2015;86:1299
  • 3) Ohara T, et al. Midlife and late-life smoking and risk of dementia in the community: The Hisayama Study. J Am Geriatr Soc 2015;63:2332
  • 4) Ninomiya T, et al. Midlife and late-life blood pressure and dementia in Japanese elderly: The Hisayama Study. Hypertension 2011;58:22
  • 5) Maillard P, et al. Effects of systolic blood pressure on white-matter integrity in young adults in the Framingham heart study: a cross-sectional study. Lancet Neurol 2012;11:1039
  • 6) Ohara T, et al. Glucose tolerance status and risk of dementia in the community: The Hisayama Study. Neurology 2011;77:1126
  • 7) Yoon S, et al. Brain changes in overweight/obese and normal-weight adults with type 2 diabetes mellitus. Diabetologia 2017;60:1207
  • 8) Matthews FE, et al. A two decade dementia incidence comparison from the Cognitive Function and Ageing Studies I and II. Nature Commun 2016;7:11398

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