同友会メディカルニュース

2012年6月号
今の生活習慣が老後を決めてしまうかもしれません
~健康的な生活習慣で血管を活き活き~

動脈硬化性疾患の代表である心筋梗塞や脳卒中は、死亡原因として悪性腫瘍に次いで第2位、3位と多いだけでなく、死亡しなかった場合に後遺症が非常に問題となる疾患です。
例えば、寝たきり原因で最も多いのが脳卒中である事からもそれがわかります。今回は動脈硬化性疾患の発症を予防するためには、健康的な生活習慣を営むこと、さらにそれによって生活習慣病を予防することがとても重要である事をお話したいと思います。
動脈硬化性疾患の危険因子はたくさんありますが、中でもメタボリックシンドロームの診断基準にもなっております、肥満・高血圧・糖尿病・脂質異常症の4つは代表的なものです。
この4つのうち1つ持っていると、動脈硬化性疾患の危険性が約2~3倍(もしくはそれ以上)高くなりますが、図1に示しました様にこの4つはお互いが併せて持ちやすいという特徴があり、併せ持つほど脳卒中や心筋梗塞などの危険性が高くなります。また喫煙も動脈硬化性疾患の発症を2倍以上増やす事が知られています。
しかし、何倍危ないと言われてもピンと来ない方も多いのではないでしょうか。

動脈硬化性疾患

そこで海外の研究結果(*1)ですが、これらの危険因子を持っていると生涯に(正確には80歳までに)心筋梗塞を起こす可能性を25万人以上のデータを元に算出しています(表1参照)。
この研究では血圧・血清脂質(総コレステロール;T-cho)・喫煙状況・糖代謝の4つの因子に対して解析しています。例えば男性が45歳の時に4つの因子とも理想値であった場合(収縮期血圧120mmHg未満かつ拡張期血圧80mmHg未満・T-cho 180mg/dl未満・非喫煙・糖尿病ではない)、生涯に心筋梗塞を発症する危険性はわずかに1.7%ですが、4因子中に危険値(収縮期血圧160mmHg以上もしくは拡張期血圧100mmHg以上・T-cho 240mg/dl以上・喫煙・糖尿病)を1つ有すると34.0%、2つ以上だと42.0%と非常に高くなります。

45歳・55歳・65歳における危険因子と生涯(80歳まで)心筋梗塞発症率

これらを踏まえて、動脈硬化性疾患を予防するために、アメリカ心臓協会(AHA)は心血管健康指標として以下の7項目を推奨しています。

  1. 喫煙しない
  2. 運動習慣有り
  3. 正常血圧
  4. 血糖値正常
  5. 総コレステロール値正常
  6. 過体重なし
  7. 健康的な食習慣

最近発表されました米国の約45000人を対象に約15年間追跡した研究(*2)では、上記7項目の達成項目数が多いほど死亡率が明らかに低い事が示されました(図2)。いかに健康的な生活習慣をして頂き、生活習慣病を予防する事が重要であるかがおわかりになると思います。

心血管健康指標の達成度と総死亡率の関係

さて、ここまでは海外の研究結果でしたので、日本人に当てはまらない部分もあるかもしれません。次にご紹介するのは米国の研究ですが、日系人を対象にしたものです(*3)。
この研究では中年男性(平均54歳)を対象に、様々な危険因子(過体重・低握力・高血圧・高中性脂肪血症・高血糖・高尿酸・喫煙歴あり・飲酒量過剰・未婚など)と生存率との関係を調べています。図3に示しました様に、中年期での健康度が寿命のみならず、健康寿命(介護等を受けずに完全に自立して生活している)に大きく影響を与える事が解ります。

中年期の危険因子保有数と生存率

特に健康寿命に関しては、過体重・飲酒量過剰・高血圧・高血糖の影響が極めて大きい事がわかります(図4参照)。

各危険因子が寿命・健康寿命に与える影響について

さらに、過体重と飲酒は高血圧と高血糖の主因の1つである事を考えれば、いかに中年期以降の生活習慣が健康に長生きできるかどうかを決める鍵になるという事がおわかりになると思います。 INTERHEARTという研究では、9個の因子(高血圧・糖尿病・脂質異常症・腹囲増大・喫煙・不適切飲酒・不適切な食習慣・運動不足・ストレス)で心筋梗塞や脳卒中発症の約90%を説明できると報告しています(*4,5)。つまり、動脈硬化性疾患を発症するかどうかは遺伝よりも生活習慣による影響の方が圧倒的に強いのです。豊かな老後が送れるかどうかは、(遺伝も影響しますが)それまでの生活習慣が決めると言っても過言ではありません。あなたの血管を守れるのはあなた自身です。今からでも遅くはありません。健康的な生活習慣に少しずつでも近づけていく事がとても大事です。

  • 参考文献
  • (*1)Berry JD, Dyer A, Cai X, et al. Lifetime Risks of Cardiovascular Disease. N Engl J Med 2012;366:321-329
  • (*2)Yang Q, Cogswell ME, Flanders WD, et al. Trends in Cardiovascular Health Metrics and Associations With All-Cause and CVD Mortality Among US Adults. JAMA 2012;307(12):1273-1283
  • (*3)Willcox BJ, He Q, Chen R, et al. Midlife Risk Factors and Healthy Survival in Men. JAMA 2006;296:2243-2350
  • (*4)Anand SS, Islam S, Rosengren A, et al. Risk factors for myocardial infarction in women and men : insights from the INTERHEART study. Eur Heart J 2008;29:932-940
  • (*5)O’Donnell MJ, Xavier D, Liu L, et al. Risk factors for ischaemic and intracerebral haemorrhagic stroke in 22 countries (the INTERSTROKE study) : a case-control study. Lancet 2010;376:112-123

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