同友会メディカルニュース

2020年7月号
腰痛と運動不足

新型コロナウイルスの感染拡大と緊急事態宣言の発出を受けて、多くの方がテレワークを実践し、休日も自宅で過ごすことが多かったかと思います。幸い緊急事態宣言は解除されましたが、今後もテレワークの機会が増えたり、スポーツジムにも行きにくく感じたりしている方もいるかと思います。そのような中で、運動不足が心配な方も多いのではないでしょうか。外来でも運動不足や食生活の変化から体重が増えている人が散見されますが、他にも腰痛が悪化する方が見受けられます。

これまでも健診や外来で腰痛を相談されることは多かったのですが、実際にその原因を特定できるのは約15%程度と言われ、残りの約85%は非特異的腰痛として原因がはっきりしない腰痛に分類されます。原因がわかる場合、その多くが椎間板ヘルニアや圧迫骨折などの整形外科的疾患ですが、1%未満の方に内臓疾患が隠れている場合があるので注意が必要です。腰痛でお悩みの場合には、まずは腰椎MRIなどの検査を行い、整形学的疾患の有無をしっかり評価する事が大切で、さらに他の症状がある場合や人間ドックの結果から内臓疾患が疑われる場合などには内科での精密検査も検討してください。

新型コロナウイルス感染拡大に伴う運動不足が腰痛を増加させるかについては、まだ学術的な検証が行われていませんが、腰痛を予防するためには運動療法が有効だとするいくつかの論文があります。腰痛経験者を対象にして、腰痛新規発症と腰痛に関連する機能低下を運動が防止できるかどうかについて調べた9つの研究を検証した論文では、運動をした群では、何もしない群に比べて1年後での再発を抑制する効果がわかりました。このような研究結果もふまえ、「腰痛診療ガイドライン2019」では、腰痛予防に運動療法が有用であるとして強く推奨しています。

腰痛防止のための運動としては、特に体幹筋力の強化が重要です。体幹筋は様々な筋肉で構成されており、主要なものとして背中側の広背筋や僧帽筋、背骨の周りにある脊椎起立筋(図1-①)、背骨から腰・大腿部までのびる腸腰筋(大腰筋、腸骨筋)(図1-②)、さらにはお腹まわりの筋肉で「コルセット筋」という異名も持つ腹横筋や腹斜筋等が挙げられます(図1-③)。これらの筋肉を強化することで、背骨を中心とした組織の安定化につながり、腰痛の予防や治療になります。トレーニングには様々な方法がありますが、当会保健師コラムで外出自粛期間のストレッチや筋力トレーニングを解説していますので参考にしてください。

腰痛と運動不足

自身の筋肉をコルセットのように機能させるために体幹筋をトレーニングすることはいいのですが、腰痛時に実物のコルセットを長期使用することは、むしろ筋肉を休ませすぎてしまい筋力低下が生じることで、腰痛の回復が遅れることが指摘されています。ガイドラインでも急性腰痛に対しては、安静よりも活動性維持のほうが有用であるとしています。

この様に体幹筋がしっかりしていることは、腰痛に対して大変重要であることが推測されますが、実際に大阪市立大学を中心にした研究グループが、体幹筋肉量と腰痛が関連することを昨年の報告で明らかにしています。この研究では脊椎外来通院患者1,738例を対象に、生体電気インピーダンス分析(bioelectrical impedance analysis; BIA)を用いて体幹筋量を測定したところ、体幹筋量が少ないほど腰痛が悪化していることがわかりました。

また、腰痛は企業における生産性低下にも大きく影響していることも知られており、休業4日以上の腰痛の届け出が、業務上疾病全体で1位となっています。そのため厚生労働省から「職場における腰痛予防対策指針」が2013年に改訂され、①重量物取扱作業、②立ち作業、③座り作業、④福祉・医療分野等における介護・看護作業、⑤車両運転等の作業の5つの作業における腰痛の予防対策を示しています。

また、腰痛の発生を曜日別、業種別に見ると、月曜日が20.9%と休み明けの週の初めに多発する傾向がみられています。この傾向は、製造業、建設業、運輸交通業では顕著ですが、接客娯楽、商業、保健衛生では日曜も稼働することが多いためか、その傾向は見られません。テレワークが多くなれば曜日感覚は乏しくなるかもしれませんが、テレワークや休み明けで出社する日は注意したほうが良いかもしれません。

そして、腰痛にはストレスも影響することが指摘されており、職場における人間関係などのストレス要因も腰痛発症の危険因子とされています。最近はコロナ鬱などという言葉もよく聞かれるようになりましたが、感染への不安や外出自粛などによるストレスに運動不足が加わることで、腰痛にも悪い影響を及ぼすことも考えられます。感染防止に留意しながらも、過度に心配することなく、気晴らしを兼ねた散歩などを行うことで、毎日一定時間の運動を心掛けてください。

参考文献

  • Choi BK, et al. Exercises for prevention of recurrences of low-back pain. Cochrane Database Syst Rev 2010; (1): CD006555.
  • 腰痛診療ガイドライン2019 改訂第2版 南江堂
  • Yusuke Hori, et al. ISSLS PRIZE IN CLINICAL SCIENCE 2019: clinical importance of trunk muscle mass for low back pain, spinal balance, and quality of life—a multicenter cross-sectional study. European Spine Journal volume 28, pages914–921(2019)
  • 厚生労働省「職場における腰痛予防対策指針」2013.6.18
  • 厚生労働省「職場における腰痛予防対策指針の改定及びその普及に関する検討報告書」2013.6.18

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