同友会メディカルニュース

2013年6月号
腹部大動脈瘤も人間ドック・健診で早期発見を

腹部大動脈瘤はその名の通り、お腹にある大動脈がコブ状に膨らみ、最終的には破裂して死に至ることもある病気です。歴史上の人物では、アインシュタインや司馬遼太郎が腹部大動脈瘤の破裂で亡くなったことがよく知られています。

症状は破裂するまで全くないことも多く、実際に破裂してしまうと4~5人に1人しか助からないと言われています。一方で、破裂する前に見つかり、適切な時期に手術をすれば95%以上の手術成功率が期待できます。

通常、腹部大動脈は直径が1.5~2cm程度ですが、これが3cm以上になった場合に腹部大動脈瘤と診断します(図1)。直径が大きくなればなるほど破裂する危険性が高くなるため、4 cm以上の場合には専門医(循環器内科、心臓血管外科)を受診し、経過をみながら手術の時期を検討する必要があります。一般的には5.5cm以上ある場合や、半年で0.5cm以上大きくなっている場合では手術を考慮することになります(#1)。

腹部大動脈瘤

腹部大動脈瘤の有無を調べる方法としては、超音波検査やCT検査がスクリーニング検査として有用です。人間ドックでは腹部超音波検査が実施されるので、もし大動脈瘤や動脈の拡張を指摘された場合には、必ず専門医を受診することが重要です。デンマークで行われたランダム化比較試験では、腹部超音波による腹部大動脈検診を実施したグループ(6,333人)と検診を実施しなかったグループ(6,306人)を比較した所、検診受診グループで腹部大動脈瘤による死亡率が66%も低くなっていることがわかりました。また、同研究では検診の費用対効果も分析しており、検診を受けなかったグループでは破裂に伴う緊急手術は待機的に行う手術に比べての多額の費用がかかることから、検診を受けたグループよりも医療費が余計にかかり、検診に費用対効果があると結論付けています(#2)。また最近同グループは、最初の検診で腹部大動脈径が2.5~2.9mmと軽度拡張を認めた受診者を5年後に再検査した場合には、最初の検診を受けただけで再検査を行わなかったグループに比較して、検診による費用対効果があることを報告しています(#3)。このことから、軽度拡張のある方も定期的にフォローアップしたほうがよいことがわかります。

腹部大動脈瘤の多くは、動脈硬化が進行し動脈の壁が脆くなり、血圧に耐えられなくなって拡張することで発症します。従って、基本的には高齢、喫煙、高血圧、脂質異常症、糖尿病などの動脈硬化危険因子を多く持つ方は注意が必要です。また男女比が5:1と男性に多い病気でもあります。一方、これらの危険因子を持たなくとも遺伝的な素因で大動脈瘤になる人もいるので、ご家族に大動脈瘤の方がいる場合には要注意です。心当たりがある方はぜひ一度検査をお受け下さい。なお、一般の健診や人間ドックで腹部超音波を行う場合は、主に肝臓、胆嚢、膵臓、脾臓、腎臓を観察しており、また、腹部大動脈はお腹側から見て一番奥深いところを通っているため、内臓脂肪やガスの影響によって観察が不十分になることも多くあります。観察範囲内に動脈瘤が認められれば健診結果に反映されますが、このような観察条件の問題等から健診結果表に記載がない場合でも腹部大動脈瘤がないと断言する事は困難です。もし、危険因子や家族歴をお持ちで心配な方は、腹部CT検査でのスクリーニングをお勧めします。

  • 文献:
  • #1 大動脈瘤・大動脈解離診療ガイドライン 循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2010年度合同研究班報告)
  • #2 Lindholt JS, et al. Long-term benefit and cost-effectiveness analysis of screening for abdominal aortic aneurysms from a randomized controlled trial. Br J Surg 2010; 97:826-34.
  • #3 Sogaard R, et al. Cost effectiveness of abdominal aortic aneurysm screening and rescreening in men in a modern context: evaluation of a hypothetical cohort using a decision analytical model. BMJ 2012; 345:e4276

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