同友会メディカルニュース

2020年11月号
医療分野における人工知能活用の現状

1.はじめに

医療分野では、最適な医療を持続的に、かつ効率良く受けられることが求められています。また、予防医療、診断支援、精密医療(プレシジョン・メディシン)、新しい治療法の開発、健康寿命の伸長などの領域において、人工知能(Artificial Intelligence ; AI)の活用が期待されています。今回は、医療分野におけるAI活用の現状について、解説させて頂きます。

※「人工知能の医療への応用」につきましては、同友会メディカルニュース2017年11月号を、「プレシジョン・メディシン(精密医療)について」は、同友会メディカルニュース2019年5月号をご参照下さい。

2.医療分野の動向

2017年6月に発表された厚生労働省の「保健医療分野におけるAI活用推進懇談会」の報告書では、「AIの実用化が比較的早いと考えられる領域」として、ゲノム医療、画像診断支援、診断・治療支援、医薬品開発(創薬)の4領域、「AIの実用化にむけて段階的に取り組むべきと考えられる領域」として、介護・認知症支援、手術支援の2領域、合計6領域がAI開発を進めるべき重点領域とされています。

AI開発を進めるべき6つの重点領域
  1. ゲノム医療
  2. 画像診断支援
  3. 診断・治療支援
  4. 医薬品開発(創薬)
  5. 介護・認知症支援
  6. 手術支援

2019年3月に政府が発表した「AI戦略2019」では、AIの社会実装の優先領域の一つとして「健康・医療・介護」を挙げ、また、具体的な目標として、「データ基盤の整備」、「日本が強い分野(画像診断など)のAI技術開発」、「医療へのAI活用による医療従事者の負担軽減」、「予防・介護へのAI導入」、「医療関係職種の養成施設におけるAIを活用した教育の実施」が掲げられました。

データの利用については、健康・医療・介護のデータは多種・多様であること、また、個人情報であることから、「医療分野の研究開発に資するための匿名加工医療情報に関する法律(次世代医療基盤法)」が2018年5月に施行されました。個人情報の取り扱いに配慮しつつ、データの利用を推進する仕組みが整備されつつあります。

3.医療分野におけるAI活用

AIを活用した医療機器の市販については、2018年から米国において、アメリカ食品医薬品局(Food and Drug Administration ; FDA)の販売の認可を受ける事例が出てきました。

【AIを活用した主な医療機器(FDAの認可を取得したもの)】
時期 企業名 国名 機器名称 概要
2018年4月 Icometrix 米国 Icobrain 脳MRIから脳の容積変化を解析
2018年4月 IDx Technologies 米国 IDx-DR 網膜画像から糖尿病網膜症を検出
2018年5月 Imagen
Technologies
米国 OsteoDetect 成人手首X線から骨折を検出
2018年5月 Neural Analytics 米国 Neural Bot 脳血流による神経疾患の解析
2018年6月 DreaMed
Diabetes
米国 DreaMed
Advisor Pro
糖尿病患者へのインスリン投与支援
2018年6月 Bay Labs 米国 EchoMD 心エコーを用いた駆出率の算出
2018年7月 Zebra Medical イスラエル HealthCCS 心臓CTから冠動脈石灰化を評価
2018年8月 Aidoc イスラエル Briefcase 脳CTから脳出血の治療優先度を評価
2018年10月 MaxQ-AI イスラエル Accipiolx 脳CTから頭蓋内出血を検出
2018年11月 Resonance
Health
オーストラリア FerriSmart 肝臓の鉄分濃度の検出
2018年11月 NinePoint
Medical
米国 NvisionVLE
(IRIS)
食道組織の画像解析
2018年11月 Bonraybio 米国 LensHooke 生殖細胞の計数と解析
2019年3月 CureMetrix 米国 Cm Triage マンモグラフィから治療優先度評価
2019年10月 Subtle Medical 米国 Subtle MR MRIのノイズ低減と解像度改善

IDx Technologiesは、2018年4月に、AIを活用し糖尿病網膜症を検出する医療機器IDx-DRを販売する認可をFDAから取得しました。IDx-DRは、眼底カメラで撮影した成人の網膜画像を、AIを用いて解析します。

また、Imagen Technologiesは、2018年5月に、AIを活用し手首の骨折を検出する医療機器OsteoDetectを販売する認可をFDAから取得しました。OsteoDetectは、成人手首のX線画像を、AIを用いて解析し、骨折している箇所を指摘するソフトウェアです。

【AIを活用した主な医療機器(国内)】
時期 企業名 概要
2018年12月 オリンパス 大腸の超拡大内視鏡画像を解析し、リアルタイムで腫瘍性ポリープまたは非腫瘍性ポリープの可能性を数値で出力
2019年9月 エルピクセル 脳MRI画像を解析し、脳動脈瘤の疑いのある部分を検出

国内では、2018年12月、オリンパスが開発した大腸内視鏡画像診断支援ソフトウェアEndoBRAINが、管理医療機器として、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)」の承認を取得しました。EndoBRAINは、大腸の超拡大内視鏡画像を解析し、リアルタイムで腫瘍性ポリープまたは非腫瘍性ポリープの可能性を数値で出力します。

さらに2019年9月には、エルピクセルが開発した脳MRI画像の解析ソフトウェアEIRL aneurysm(エイル アニュリズム)が、管理医療機器として承認を取得しました。EIRL aneurysmは、脳MRI画像から動脈瘤に類似した候補を検出し印を表示することで、医師による読影をサポートするソフトウェアです。

4.まとめ

健康・医療・介護分野では、AI開発及び活用に向けて取り組むべき事項が多いことから、厚生労働省は2018年7月に「保健医療分野AI開発加速コンソーシアム」を設置しました。

また、日本におけるAI研究を発展させるために、日本メディカルAI学会が2018年4月に創設されました。医学・情報工学・法律・倫理などの様々な分野の専門家が集結する場となっています。2019年1月に第1回学術集会が、国立がん研究センター研究所・新研究棟にて、2020年1月に第2回学術集会が、東京ビックサイト・TFTホールにて開催されました。

今後のAI研究の更なる進展、そして、産・官・学それぞれの長所を生かしたAIの開発及び活用が期待されます。

参考文献

  • 独立行政法人情報処理推進機構 AI白書編集委員会 編 : AI白書 2017, 角川アスキー総合研究所, 2017.
  • 独立行政法人情報処理推進機構 AI白書編集委員会 編 : AI白書 2019, 角川アスキー総合研究所, 2018.
  • 独立行政法人情報処理推進機構 AI白書編集委員会 編 : AI白書 2020, 角川アスキー総合研究所, 2020.
  • 藤田広志:医用画像ディープラーニング入門(医療AIとディープラーニングシリーズ), オーム社, 2019.
  • 藤田広志、上杉正人、平原大助、齋藤静司: Pythonによる医用画像処理入門(医療AIとディープラーニングシリーズ), オーム社, 2020.
  • 浜本隆二 編集 : AIが切り拓く未来の医療, 医学のあゆみ, 274: 701-918, 2020.

参考サイト

同友会メディカルニュース / 医療と健康(老友新聞)

同友会メディカルニュース

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