同友会メディカルニュース

2016年7月号
ピロリ菌検査で「陰性」であっても気を付けて欲しいこと

「ヘリコバクター・ピロリ菌」の存在はほとんどの胃がんの原因としてメディア等で広く取り上げられ、また2000年以降その除菌治療が保険適応・順次拡大されている事もあって、御存知の方も多いと思います。当メディカルニュースでも記念すべき第一号(2009年6月号)をはじめこれまで何回か取り上げてきましたが(直近は2013年9月号)、認知度の上昇に伴って健診機関を始めとする医療機関でピロリ菌の検査を受けられる方も年々増加しています。当然の事ながら検査で陽性の場合は更に詳しい検査や除菌治療を検討頂く事になりますが、実は陰性であってもその結果の意味は人によって大きく違ってくるという事を今回お話させて頂きたいと思います。

陰性=未感染とは限らない

ピロリ菌検査を受けて「陰性」という結果であった場合、一般的には「陰性だから胃がんにかかる危険は相当低い」と考えがちです。確かに、「ピロリ菌に一度もかかった事がない」方<未感染>の場合はそういえるのですが、最近はそうでない方も「陰性」の中に少なからず含まれる状況になっています(表1)。

表1:ピロリ菌検査で結果が陰性でも注意が必要なケース
過去に感染していた事がある
  • ・ピロリ菌の治療を受けて成功した場合(除菌済)
  • ・以前に感染があり、治療しなくてもいなくなった場合(偶然の除菌、自然消失)
現在も感染している(偽陰性)
  • ・実際には今もピロリ菌がいるのに、陰性と出る場合
    (境界値近辺、内服薬や免疫状態、体質等による)

陰性でも注意を要する場合 ①除菌後

最も多いのは、「以前はピロリ菌はいたけれど、除菌治療のおかげで今はいなくなっている」場合<除菌後>です。最近は除菌歴のある方が増えてきましたが、除菌に成功した場合はその後の検査では陰性となる事が多くなります(血液や尿を用いた抗体検査の場合は、治療に成功しても陽性が続く場合もあります)。確かに除菌によって胃がんの危険を大幅に下げられる事は事実ですが、除菌までの間に胃粘膜を荒らされた影響はその後も残りますので<未感染>の人と全く同じというわけにはいきません。同じ「陰性」であっても、除菌後の方は定期的な内視鏡検査を受けることが推奨されています。

陰性でも注意を要する場合 ②偶然の除菌、自然消失

他には「意図的に除菌しなくても、結果的に以前いたピロリ菌がいなくなっている」こともあります。別の病気で使用した抗生剤がたまたまピロリ菌に効いたケース<偶然の除菌>や、胃の萎縮が進んでピロリ菌が住めなくなってしまった場合<自然消失>等がこれに当たります。こうした場合もピロリ菌がいなくなるまで続いた胃炎の影響は残りますので検査結果が陰性であってもやはり内視鏡検査による経過観察の対象になりますが、<自然消失>の場合は胃粘膜の萎縮が相当程度進んでおり、ピロリ菌が陽性の人以上に胃がんになる確率が高い(約80人に1人)とされていますので、内視鏡検査の間隔を短めに設定するなど特に注意が必要です。

陰性でも注意を要する場合 ③偽陰性

更に最近は、「検査で陰性であっても実はピロリ菌がいる」状態<偽陰性>も一定の割合で起こりうることが分かってきました。検査結果が陽性との境界値に近い方に多いようです。抗生剤やPPIと呼ばれる強めの胃薬、またはステロイド剤を服用中の方、免疫力が低下している方など、偽陰性となってしまう原因は検査法によっても違いはありますが、実際はピロリ菌がいますので、定期的な内視鏡検査のみならず速やかに除菌治療を行う事が推奨されます。

この中で①<除菌後>の場合は、医師からの説明や治療の経緯で本人も治療後の「陰性」の意味を正しく理解する事が期待出来ますが、他の②③のケース<偶然の除菌、自然消失、偽陰性>についてはピロリ菌検査だけでは自身の正しい感染歴を知るすべがなく、<未感染>の方と同じ陰性の結果で区別がつかずそのまま放置してしまうとかえって危険な事になります。

陰性でも一度は画像検査で確認を!

同じ「陰性」でも未感染の方と、これらの注意を要する方とを区別するための有効な手段は、やはり実際に胃粘膜の状態を知る事、つまり画像検査(胃部X線検査、内視鏡検査)になります。ピロリ菌検査を受けて陰性と言われても、一度は画像検査で自身の胃の状態を確認しておくことがとても大切です。こうした流れを受けて内視鏡検査では、2014年にピロリ菌感染胃炎の診断指標となる所見を明確化した新たな診断基準である「胃炎の京都分類(1)」が策定されています。画像検査の結果、表2に挙げられているような所見を指摘された方は、現在または過去にピロリ菌に感染している可能性があります。今後も定期的な画像検査を続けて頂くと共に、ピロリ菌検査には血液、尿、呼気、便など様々な検体を使った検査法がありますので、最初に受けた検査とは別の方法でもう一度確認されることを是非お勧めします。

表2:ピロリ菌感染歴が疑われる画像所見の例
胃部X線検査(バリウム検査)
  • ・慢性(萎縮性、過形成性)胃炎
  • ・襞(ひだ)の腫大または肥厚、巨大
       皺襞(すうへき)
  • ・胃潰瘍瘢痕(はんこん)、十二指腸
       球部変形
上部内視鏡検査(胃カメラ)
  • ・慢性(萎縮性、過形成性)胃炎
  • ・鳥肌胃炎
  • ・腸上皮化生
  • ・襞(ひだ)の腫大または肥厚、巨大
       皺襞(すうへき)
  • ・白濁粘液
  • ・過形成性ポリープ
  • ・黄色腫(キサントーマ)
  • ・胃または十二指腸の潰瘍瘢痕
      (はんこん)
  • 参考文献・サイト:
  • 1) 春間 賢(監修):胃炎の京都分類、日本メディカルセンター、東京、2014

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