同友会メディカルニュース

2012年12月号
血尿とIgA腎症

皆さん、血尿といえば血液が混ざっているような赤色の尿を想像されるのではないでしょうか?この状態を医学的には「肉眼的血尿」と称します。これに対して「顕微鏡学的血尿」という言葉があります。外観は普通の黄色っぽい色をしていますが、尿に混ざっている細胞成分(尿沈渣)を顕微鏡で調べると赤血球が混ざっているものを指します。

ご存知のように、尿は腎臓で血液が濾過されて造られ、尿管を通り膀胱に溜まり、尿道を経て排出されます。これらの中でどこからか血液の成分が漏れ出ますと、血尿という病態が起こることになります(図1)。ではどれくらいの頻度で血尿の方が見つかるのでしょうか? 当会を受診された年齢18歳~50歳の人を対象にすると、男性では100人中1人強、女性では3人くらいです(表1)。当会では尿潜血反応が2+以上の方に精密検査をすすめております。これらの方は男性では200人に1人、女性では100人に1人と比較的低い割合であることが分かります。データには示してありませんが、50歳以上ではもう少し頻度は高くなります。

図1 腎臓、尿管、膀胱、尿道の位置関係

表1 当会で調べた血尿の頻度

  (‐) (±) (+) (2+)以上
男性 96.7% 2.0% 0.8% 0.5%
女性 93.0% 3.9% 2.1% 1.0%

対象:春日クリニック2012年6月~8月の人間ドック受診者(年齢18歳~50歳;男性4724人、女性1777人) ただし、女性で生理中と申告した受診者を除く。

表2に主な血尿の原因を示します。尿潜血反応陽性の原因は炎症、結石、腫瘍など多岐にわたっており、腎臓、尿管、膀胱、尿道のどこから出血しているのかを探ることが重要です。炎症は腎臓、膀胱、尿道に起こることが多く、急性の場合、何らかの自覚症状(発熱、排尿時痛、排尿後の不快感など)を伴うことが一般的です。結石は、腎臓でできたものが尿管に引っかかって症状を起こすことが多く(尿管結石症)、通常激烈な背部痛や腹痛を伴いますので比較的診断は容易かもしれません。腫瘍は特に50歳以上の方では常に考慮すべきものでしょう。だいぶ前の話になりますが、有名人では俳優の松田優作さんが膀胱がんで亡くなったことが報道されたので記憶されている方もおられるかもしれません。問診にて一度でも肉眼的血尿を経験したと申告された時、専門医は膀胱がんを疑って精査するようです。

表2  血尿をきたす疾患

各種炎症 腎炎、腎う腎炎、膀胱炎、尿道炎、前立腺炎
結石 尿管結石症、膀胱結石症
その他 遊走腎、IgA腎症
腫瘍 腎がん、尿管がん、膀胱がん、尿道がん、前立腺がん、膀胱ポリープ
出血性素因 各種出血性素因

先ほど述べた原因の他に、遊走腎、そして、IgA腎症という疾患も血尿の原因として考える必要があります。腎臓は腹膜に固定されており、体位の変動で大きく動くことはありません。しかし、その固定が弱いとかなり動くことがあり(例えば、横臥時に較べて起立時に10cm以上も下がることもあります)、「遊走腎」と称します。

ここでIgA腎症について簡単に述べることにしましょう。IgA腎症は免疫学的異常が原因で発症します。感染の防御に重要な役割を果たす免疫グロブリンに異常が生じ、異常免疫グロブリン複合体が腎臓に沈着して、血尿を起こします。その40%ほどは腎機能不全に陥り、将来人工透析を必要となる面倒な疾患ですが、同症は早期に治療することにより腎機能の悪化を防ぐことが可能になるというデータもあります。その診断を確定するためには腎臓に針を刺し、組織の一部を採取して、顕微鏡で観察する方法(腎生検)が一般的でしょうか。ただこの方法は調べることが面倒(入院の必要があること、腎臓に針を刺した際に出血などの危険性が少なからずあること)なため、血尿を呈した方全員に簡単に行えるものではありません。他にいい診断法があれば望ましいところです。

さて、このたび、順天堂大学腎臓内科のグループが血液を用いてIgA腎症のスクリーニングを行う方法を開発しました。血液の中のある種のたんぱく質の分布パターンを調べることにより、同症であることをかなりの確率で推測します。一定の経過を観察し、しかるべき時に腎生検を行って確定診断をつけるようです。当会を通じてもこの検査をお受けいただくことができますので、血尿を指摘された方は是非ご相談ください。血尿を指摘された方の中でこの調査にご賛同いただける方はぜひご協力いただければと思います。

血尿は原因が分からないことのほうがはるかに頻度は高く、釈然とされない人も多いかもしれません。一定の間隔で経過をみてゆき、血尿以外の所見が出てきた時や血尿の程度が強くなった時などに、二次検査を受けることも診断をつけるには大切です。医師の指示に従い、検査を受けていただくようおすすめします。

同友会メディカルニュース / 医療と健康(老友新聞)

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