同友会メディカルニュース

2011年8月号
よい睡眠が健康にはとても重要です

私は様々な方に生活習慣の改善に取り組んで頂く際、“食習慣”、“運動習慣”に加えて“生活のリズム”の重要性について以前よりお話しさせて頂いております。よい生活のリズムとは起床時間、朝食、昼食、夕食、就寝時間など日々の生活パターンを健康的な形でなるべく一定として頂く事ですが、中でも“睡眠”は生活のリズムの基本とも言えます。今回は睡眠の重要性についてお話したいと思います。

どなたでも睡眠不足があると仕事の効率が悪くなったり、気分が落ち込みやすくなったりした経験はあると思います。それだけでなく、睡眠不足は糖尿病や高血圧などの生活習慣病の危険性を上げ、脳卒中や心筋梗塞などの動脈硬化性疾患も増加する事(*1)もわかっています。また睡眠不足は寿命を短くしてしまう事(*2)も報告されています。

さらに、睡眠不足は記憶力などの認知機能を低下させてしまうと考えられています。今年5月にSleepという医学誌に掲載された論文(*3)ですが、50~85歳の中国人約3万人を対象に、睡眠時間7時間を基準に睡眠時間と記憶障害との関係を検討しています。この研究ではDWRTという試験で記憶力を評価していますが、これは10個の単語を記憶してもらい5分後に何個覚えているか調べる試験です。4個以上覚えていれば記憶障害なしと判断しています。図1に示しましたように、睡眠時間は短くても長過ぎても記憶障害の危険性が高まる事がわかります。またこの論文では睡眠時間が3-4時間だと4歳分、5時間と9時間では2歳分、10時間以上では7歳分記憶力が低下すると報告しています。このように睡眠時間はただ長ければ良いというものではないようです。これは推測ではありますが、睡眠時間が9時間以上ある方は熟睡感が低いために、ベッドに居る時間が長くなっている可能性が考えられます。つまり、睡眠の質が良くないために睡眠時間が長くなっている方は記憶障害の危険性が高くなると推測されます。

図1 睡眠時間と記憶生涯の関係

このように十分な睡眠は健康上とても重要なのですが、睡眠は肥満とも深い関係がある事をご存知でしょうか?肥満改善といえば、食習慣の改善と運動習慣をつける事が必要ですが、睡眠不足の解消も重要なのです。睡眠不足があるという事は起きている時間が長いわけですから、その分消費するカロリーが増えるはずと思われるかもしれませんが、実はそうでもないのです。15人の方を対象に、まず8時間睡眠で2日間過ごしてもらい、その後2日間4時間睡眠で過ごしてもらい、活動量などを比較した研究があります(*4)。図2に示しましたように、8時間睡眠と比べて、4時間睡眠ではだるさが強くなり、活動量はむしろ減少してしまっています。これは考えてみれば当然の事で、睡眠不足の翌日は何をするのもおっくうに感じてしまっても不思議はありません。睡眠が十分だからこそ日中エネルギッシュに活動できるのです。また別の研究では、睡眠不足は筋肉量を減らしてしまい、基礎代謝が減少する可能性を報告しています。

図2 睡眠時間とだるさ・活動量の関係

睡眠不足は食習慣の面でも悪影響がある事が解ってきています。ある研究(*5)では11人の方を対象に、8.5時間睡眠と5.5時間睡眠とを2週間ずつ実施してもらい、摂取カロリーを検討したところ、5.5時間睡眠の時に297Kcal多いという結果でした。特に明確な差があったのが夜間(19時以降)の間食による摂取カロリー増加であったと報告しています。つまり、夜更かししているとついお菓子を食べてしまうという事です。また、睡眠不足は食欲を上げてしまうとも考えられています。12人の男性を対象に、8時間睡眠と4時間睡眠を実施してもらい、翌日の摂取カロリーや空腹感を調査した研究(*6)によると、8時間睡眠に比べて4時間に睡眠を制限すると翌日の空腹感が強くなり結果として、摂取カロリーが559Kcal増加したと報告しています。睡眠時間が短くなると空腹感が強くなり食欲が増えてしまう原因の1つとして、食欲に関係するホルモンの変化が挙げられます。これは睡眠不足があると、食欲抑制ホルモンであるレプチンが減少し、逆に食欲亢進ホルモンであるグレリンが増加してしまうと考えられています。睡眠不足があると小腹が空きやすいとも言えるでしょう。

このように睡眠不足があると食習慣や運動習慣にも悪影響を与えてしまい、肥満の原因となるのです。現代人は仕事などで忙しい上に、インターネットなど昔に比べて夜更かししやすい誘惑が多いです。だらだらと夜更かしをしないように就寝時間をあらかじめ決めておくなどして、早寝早起きを心がけていただければと思います。また寝酒の習慣がある方もおられるかもしれませんが、止めましょう。寝酒は寝つきを良くしますが、睡眠が浅くなりやすく、睡眠の質を悪くしてしまいます。

参考文献:

  • *1. Eguchi K, PickeringTG, Kario K, et al. Short Sleep Duration as an Independent Predictor of Cardiovascular Events in Japanese Patients with Hypertension. Arch Intern Med 2008;168:2225-2231
  • *2. Vgontzas AN, Liao D, Pejovic S, et al. Insomnia with Short Sleep Duration and Mortality: The Penn State Cohort. Sleep 2010;33:1159-1164
  • *3. Xu L, Jiang CQ, Lam TH, et al. Short or Long Sleep Duration is associated with Memory Impairment in Older Chinese: the Guangzhou Biobank Cohort Study. Sleep 2011;34:575-580
  • *4. Schmid SM, Hallschmid M, Jauch-Chara K, et al. Short-term sleep loss decreases physical activity under free-living conditions but does not increase food intake under time-deprived laboratory conditions in healthy men. Am J Clin Nutr 2009;90:1476-1482
  • *5. Nedeltcheva AV, Kilkus JM, Imperial J, et al. Sleep curtailment is accompanied by increased intake of calories from snacks. Am J Clin Nutr 2009;89:126-133
  • *6. Brondel L, Romer MA, Nougues PM, et al. Acute partial sleep deprivation increases food intake in healthy men. Am J Clin Nutr 2010;91:1550-1559

同友会メディカルニュース / 医療と健康(老友新聞)

同友会メディカルニュース

お元気ですか

季刊誌

2019年4月号NEW
・私の健康法 落語家 三遊亭 小遊三/・解離性動脈瘤 順天堂大学 大学院医学研究科 循環器内科学 准教授 小西 博応/・生活習慣病予防のために、よく噛んでバランスの良い食事をとりましょう~その1~ 管理栄養士 花里 映里/・ペットボトル体操~体幹を鍛える~ 運動指導科 原田 健/・軽く考えると危ない! 口呼吸習慣を改善しましょう 保健師 脇神 亜希子/・歩いて健康 文京巡り 第17回「播磨坂さくら並木」/・医療情報 日本総合健診医学会第47回大会に同友会より2題口演
巡回健診・巡回レディース健診
巡回健診
巡回レディース健診
全国対応健診
全国ネットワーク健診

全国健康増進協会

有料老人ホーム
長寿の森
高齢者向け新聞
老友新聞社
社会活動
学術活動・セミナーのご案内
同友会グループの社会貢献
健康と経営を考える会
がん検診企業リアクション
日本乳がんピンクリボン運動
目指せ東京パラリンピック2020 瀬立モニカ選手を応援しています
広報
メディア掲載
取材に関するお問合せ

ページトップ