同友会メディカルニュース

2015年1月号
高血圧について~血圧が高めと言われたら家庭血圧測定開始の合図です~

1.はじめに

今回は高血圧についてお話ししていきたいと思います。高血圧は非常に患者数が多く、日本に4000万人もいるとも言われています。健康診断などで血圧が高いと言われた事がある方も多いのではないでしょうか?しかし、症状がない、別の機会に測定したら高くなかったなどが理由として考えられますが、高血圧の患者さんの中でご本人が該当していると認識されている方が半数程度と言われています(*1)。

高血圧自体は症状がない事が多いですが、徐々に血管や臓器を痛めていきます。その結果、脳卒中や心筋梗塞などの動脈硬化性疾患、慢性腎臓病(最終的には腎不全に至ります)などを引き起こします。また、高血圧は脳の老化や認知機能障害の原因にもなり得る事が相次いで報告されています(*2)。高血圧は非常にありふれた病気ですが、長年放置しておくと間違いなく血管を蝕んでいきますので、しっかり対応(家庭血圧測定・生活習慣改善・必要に応じ外来受診)していただきたいと思います。

2.白衣高血圧は安全?

皆さんは、白衣高血圧や仮面高血圧という言葉をご存じでしょうか?図1に示しましたように、診察室血圧は高いものの、家庭血圧などは高くない場合を白衣高血圧と言います。一方、診察室血圧は高くないものの、家庭血圧などが高い場合を仮面高血圧と呼んでいます。以前は、仮面高血圧は持続性高血圧(診察室でも家庭でも血圧が高い)と同様に危険であるものの、白衣高血圧は比較的臓器障害や血管障害が軽微な事が多いので安全とされてきました。しかしながら、24時間血圧計の臨床データなどから、実は白衣高血圧も十分に注意していく必要がある事が解ってきています。
まず、理由の1つとして、白衣高血圧の方はしばらくすると持続性高血圧に移行していく場合が多いです。一例としてある研究では、白衣高血圧の方の42.6%が10年以内に持続性高血圧に移行したと報告しています(*3)。

図1 仮面高血圧と白衣高血圧

次に、診察室血圧と家庭血圧と24時間血圧のデータを元に、白衣高血圧を2つに分けて検討した研究を紹介致します(*4)。この研究では診察室血圧は高く、家庭血圧も24時間の平均血圧も正常であれば真の白衣高血圧とし、診察室血圧は高く、家庭血圧は正常なものの、24時間の平均血圧は高い場合を部分的白衣高血圧としました。図2に示しましたように、部分的白衣高血圧は持続性高血圧に匹敵する死亡率の高さでした。なおこの研究では、白衣高血圧の方の58%が部分的白衣高血圧であったと報告しています。このように、白衣高血圧だから今後も安全とは言い切れないのです。

図2

3.様々な血圧の変動が危険!

また、血圧を測る度に数値が大きく変動する方もいらっしゃいます。血圧がいつも高いのは当然大問題ですが、このような血圧変動、すなわち血圧のバラツキも脳卒中や心筋梗塞などのリスクとなる事が解ってきています。
例えば、外来受診の都度に測定した血圧データを元にバラツキの大きさと脳卒中発症の関係を調べた研究(*5)では、バラツキの大きさ順に並べた場合、大きかった上位10%の方は、小さかった下位10%の方に比べて約10倍脳卒中が多かったと報告しています。
家庭血圧の測定データを元にバラツキの大きさを調べた研究(*6)では、早朝血圧のバラツキの大きさが脳卒中や心筋梗塞などのリスクになる事が報告されています。24時間血圧計のデータでも、血圧変動の大きさが脳卒中や心筋梗塞などのリスクになる事が示されていて、特に夜間の血圧変動が重要であったと報告されています(*7)。上記以外にも様々な血圧変動が脳卒中や心筋梗塞などのリスクになる事が報告されています。この観点からも家庭血圧などの測定データを蓄積していく事が重要となります。

4.早めが肝腎

冒頭でも述べましたように、高血圧は血管や臓器が痛まないうちに、なるべく早期からしっかり対応(家庭血圧測定・生活習慣改善・必要に応じ外来受診)していただく事が重要です。中には降圧剤を開始すると一生飲まなければならなくなる事を心配される方がおられます。しかし、そんな事はありません。降圧剤は血圧が正常化し合併症等もなければ、中止する事も多いのです。しかしながら、これは早期から必要と判断したら躊躇せずに降圧剤を開始している場合です。高血圧による血管のダメージが軽微であれば、降圧剤によって適正な血圧とする事で血管の機能が回復し、降圧剤が不要となる事も多いわけです。一方で、長期に渡って高血圧をそのままにしていますと、血管障害が蓄積してしまい、ずっと続ける必要性が生じやすく、かつ降圧剤の効果も得にくくなってしまいます。そのため、十分な降圧を得るために何種類もの降圧剤が必要となる事もしばしばです。
しかし大事な事は、降圧剤を飲んでいるかどうかではありません。重要な事は、よい血圧管理を継続する事で血管を守る事です。その結果、動脈硬化性疾患や腎不全などの血管合併症を防ぐ事が全てなのです。

5.家庭血圧計は一家に一台

高血圧を指摘された方は勿論の事、一度でも高血圧が指摘された事があれば、家庭血圧測定開始の合図と考えましょう。高血圧を指摘され、家庭血圧をしばらく測っていたものの高くなかったので、測定を止めてしまった方もいらっしゃると思います。これを機会に是非測定を再開してください。

参考文献:

  • *1. Chow CK, et al. Prevalence, Awareness, Treatment, and Control of Hypertension in Rural and Urban Communities in High-, Middle-, and Low-Income Countries. JAMA 2013;310:959
  • *2. Maillard P, et al. Effects of systolic blood pressure on white-matter integrity in young adults in the Framingham Heart Study: a cross-sectional study. Lancet Neurol 2012;11:1039
  • *3. Mancia G, et al. Long-term risk of sustained hypertension in white-coat or masked hypertension. Hypertension 2009;54:226
  • *4. Mancia G, et al. Long-term Prognostic Value of White Coat Hypertension. Hypertension 2013;62:168
  • *5. Rothwell PM, et al. Prognostic significance of visit-to-visit variability, maximum systolic blood pressure, and episodic hypertension. Lancet 2010;375:895
  • *6. Johansson JK, et al. Prognostic Value of the Variability in Home-Measured Blood Pressure and Heart Rate. Hypertension 2012;59:212
  • *7. Palatini P, et al. Added Predictive Value of Night-Time Blood Pressure Variability for Cardiovascular Events and Mortality. Hypertension 2014;64:487

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