2017年10月号
膀胱炎の正しい知識と治し方
意外と悩んでいる方の多い膀胱炎。今回は膀胱炎の正しい知識と治し方についてご紹介します。
膀胱炎の分類
膀胱炎にも種類があり、原因によって下のように分けることができます。
膀胱炎 | ![]() |
・急性(単純性)膀胱炎 |
・複雑性膀胱炎 | ||
・出血性膀胱炎 | ||
・間質性膀胱炎 |
いわゆる膀胱炎について
一般によくいわれている膀胱炎は急性(単純性)膀胱炎のことで、頻尿、排尿の終わりごろの痛み、残尿感といった症状があり、発熱はほとんどありません。持病がない方に起きる膀胱炎で、性的活動期の女性に多い病気です。
原因となる微生物は80%が大腸菌ですが、女性の場合は腸内細菌が肛門から膣に侵入し、膣で繁殖した菌が尿道、膀胱と登っていって膀胱に炎症を起こします。女性は肛門や膣が尿道口と近い上に、尿道が約4cmと男性の1/4の長さしかないため、菌が侵入して膀胱まで到達しやすい構造になっています。本来、閉経前の女性は膣の常在菌が膣内を強い酸性に保ち、有害な菌が繁殖しないように守っているのですが、性行為等によって大腸菌が繁殖すると発症しやすくなってしまいます。一方、閉経後の女性は膣内の常在菌が減少しており、膀胱炎を繰り返しやすい環境になっています。
また、夏は汗をかいて脱水傾向になりやすく、尿量が減って細菌を洗い流しにくいため、冬より膀胱炎を起こしやすくなります。
- ■ 検査は
- 尿検査を行い、白血球や菌の数を計測します。
- ■ 治療は
- まず飲み薬の抗生剤になります。最近は薬剤耐性菌も増えているので、効果が不十分な場合は抗生剤の種類を変えます。抗生剤が効いて尿検査の結果も改善しているにも関わらず症状が続く場合は、猪苓湯(ちょれいとう)や五淋散(ごりんさん)等の漢方が使われることもあります。治療中は十分な水分摂取を心掛け、排尿とともに細菌を体外へ排出するようにしましょう。治療が遅れると腎臓まで菌が昇り、腎盂腎炎になって高熱が出たり腎不全になってしまうことがあるので、症状が続く場合は泌尿器科もしくは内科を受診しましょう。
- ■ 予防方法は
- 水分を多めにとる。
- 尿を我慢していると膀胱内に細菌が繁殖しやすくなるので、なるべく我慢しない。
- 性行為の後は排尿する。
- 腰まわりを冷やさないようにする。
- 排尿・排便後の拭き方に注意し、前から後ろに拭く。
- 温水洗浄便座は膣内の細菌を尿道に押し込むことがあるので、膀胱炎を繰り返しやすい人は使用を控える。
その他の膀胱炎について
- 複雑性膀胱炎
-
- 尿管結石、前立腺肥大症、糖尿病、膠原病、がん等の病気がベースにあったり、ステロイドや抗がん剤を投与中で免疫力が低下していたり、前立腺肥大等で尿道に管を入れる治療中だったりする方に起きる膀胱炎です。常に尿の中に細菌がいる状態で、普段はほとんど症状がなく、治療の必要はありませんが、急に悪化し腎盂腎炎や敗血症(血管内に細菌が入り込み、全身にまわる)を起こしたときは治療が必要です。治療は抗生剤だけでなく、ベースとなる病気をコントロールして全身状態を改善させることが重要です。
- 出血性膀胱炎
- 尿に細菌や膿がないにも関わらず、血尿を起こしてしまう膀胱炎で、原因はウイルス、アレルギー、がん、薬の副作用、放射線治療の合併症等、多岐にわたります。血尿以外にも排尿痛や残尿感、頻尿等の症状を伴うことが多いです。血液の塊が尿道を塞ぐと大変なことになるので、尿道に管を入れて膀胱を洗ったり、硝酸銀やミョウバンを注入したりして出血を止めます。最終的に手術が必要になることもあります。
- 間質性膀胱炎
- 膀胱の内側の粘膜の防御機構が破綻し、尿が膀胱の壁に浸み込んで炎症が続く原因不明の病気で、患者の9割が女性です。他の膀胱炎と違い、尿が貯まってくると痛みが出て、排尿すると痛みが軽くなります。膀胱鏡という機械を膀胱まで挿入し、膀胱の粘膜を観察して診断します。細菌は関与しないので、抗生剤は効きません。さまざまな治療方法が試みられていますが、いまだ根本的な治療方法はなく、症状を軽くさせるために抗アレルギー薬、抗うつ薬、漢方薬などを使いますが、難治性です。
まとめ
膀胱炎には細菌の関与する膀胱炎と関与しない膀胱炎がありますが、ほとんどの原因は大腸菌です。普段は予防方法を心掛け、もし頻尿や排尿時痛、残尿感等の症状が続く場合は早めに泌尿器科もしくは内科を受診し、検査を受けましょう。
参考文献:
- JAID/JSC感染症治療ガイドライン2015━尿路感染症・男性性器感染症. 日本化学療法学会雑誌 64:1-30
- 泌尿器科検査パーフェクトガイド. 臨床泌尿器科 71巻4号
- 鈴木九里, 中島耕一 膀胱炎. 検査と技術 44巻12号
- 井上雅 女性泌尿器疾患への“二刀流”診療. 臨床泌尿器科 71巻6号
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