同友会メディカルニュース

2013年4月号
糖尿病とがん・糖尿病治療とがんの関係

厚生労働省発表の2012年「患者調査」によると、主な疾患の医療機関受診者数*は、「高血圧性疾患」906万7,000人、「糖尿病」270万人、「脂質異常症」188万6,000人、「心疾患(高血圧性のものを除く)」161万2,000人、「悪性新生物(がん)」152万6,000人となり、総患者数では、前回(2008年)調査に比べ、「糖尿病」が32万9,000人増、「悪性新生物」が8万人増となっています。また、死亡数では、がんが35万7,305人と最多で、死亡総数の28.5%を占め、第2位は心疾患で19万4,926人となっています。

2010年1月のメディカルニュースで、メタボリックシンドロームとがんの関連についてお伝えしましたが、近年、糖尿病によりいくつかのがんの発症のリスクが増えること、糖尿病治療薬とがんのリスクや予防効果についての報告が相次いでいます。

糖尿病により、がんになる総リスクは20-30%増加し、特に、肝臓、膵臓、子宮内膜、大腸、直腸、乳房、膀胱などのがんのリスクが上昇し,前立腺がんのリスクが低下すると考えらえています(図1)。また、2型糖尿病患者では、罹病期間が長いほどがんの発症率が高く、罹病15年以上の患者は、15年未満の患者に対して、男性で1.6倍、女性で1.8倍になるとの報告もあります。

糖尿病患者の相対的癌発症リスク

糖尿病ががんのリスクを増加させる原因としては、肥満の合併、血糖を処理するホルモンであるインスリンが効きにくくなることにより引き起こされる高インスリン血症やIGF-1というホルモンの上昇、慢性炎症(炎症性サイトカインの増加)あるいは、高血糖自体の関与の可能性が指摘されています。

実際、肥満や運動不足、食習慣(高カロリー、高脂肪、低繊維)、アルコール多飲、社会経済活動などは、糖尿病とがんに共通するリスクファクターであり、糖尿病を予防するための行動が死亡率やがん発症率を低下させることがわかっています。

では、糖尿病治療とがんの関連はどうでしょうか? 糖尿病治療薬であるピオグリタゾンは、2年以上の使用で男性の膀胱がん発症リスクが約1.4倍に増加するとの報告を受け、2011年6月、厚生労働省は、欧米同様、同薬剤の膀胱がん治療中の使用を控えること、血尿の定期的検査を行うこと、膀胱がんのリスクを患者さんに説明することとの注意の改訂を行っています。

一方、メトホルミンという薬は、肝臓、骨格筋、脂肪組織、そして膵臓に作用し、さまざまな機序により抗がん作用をもたらす可能性があると考えられています。 メトホルミンを用いて糖尿病治療を行った場合、他の経口血糖降下薬、特にスルホニルウレア(SU)薬などのインスリン分泌刺激薬やインスリンによる治療の場合と比べて、さらには、無治療の場合と比較しても発がんリスクが低下することが報告されています。メトホルミン使用患者のがんによる死亡は、非使用の糖尿病患者に対して0.66倍、総がん発生率が0.68倍、大腸直腸がんでは0.20倍、肝細胞がんや肺がんでは0.67倍に減少するとのデータや、乳がんでは、術前化学療法の効果を高め、メトホルミン非使用糖尿病患者群・非糖尿病患者群と比較し、メトホルミン内服の糖尿病患者群が病理学的完全奏効率が優位に高い(再発や転移が減り予後がいい)との報告から、メトホルミンにがんの発症や進展の予防効果があることも示唆されています。 他の薬剤やインスリン製剤についても、がんとの関連について検討されています。

健診で糖尿病の要治療と指摘されたうち、約4割の方が受診されないとのデータがあります。お手元の健診結果をもう一度見直していただき、糖尿病関連項目(血糖、HbA1c)の異常を指摘されている方、BMIや腹囲の高値を指摘されている方は、運動不足の解消、禁煙、減量に取り組んでいただき、糖尿病の治療はもちろん、がんの予防・早期発見のために、定期的にがん検診を受けてみてください。

食事運動療法、禁煙治療、その上での糖尿病薬物治療については、かかりつけ医や当クリニックにご相談ください。

*:実際は、未受診者も多く、予備軍まで含めると、糖尿病は、日本人の20歳以上の27.1%(約2210万人)、脂質異常症でも2200万人超と推計されています。

糖尿病とがん・糖尿病治療とがん

参考文献:

  • Inoue M, et al. : Insulin resistance and cancer:epidemiological evidence. Endocrine -Related Cancer 19 F1-8,2012
  • Li C, et al. :Prevalence of Diagnosed Cancer According to Duration of Diagnosed Diabetes and Current Insulin Use Among U.S. Adults With Diagnosed Diabetes: Findings from the 2009 Behavioral Risk Factor Surveillance System Diabetes Care 2013 Jan 8. 3.Landman GMW : Metformin associated with lower cancer mortality in type 2 diabetes. Diabetes Care 33 : 322-326, 2010
  • Hernandez-Diaz S, Adami HO : Diabetes therapy and cancer risk: causal effects and other plausible explanations. Diabetologia 53 : 802-808, 2010
  • Cancer Risk in Diabetic Patients Treated with Metformin: A Systematic Review and Meta-analysis.PLoS ONE 7(3):e33411, 2012
  • Jiralerspong S, Palla SL, Giordano SH, et al : Metformin and pathologic complete responses to neoadjuvant chemotherapy in diabetic patients with breast cancer. J Clin Oncol 27 : 3297-3302, 2009

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