同友会メディカルニュース

2016年5月号
「座りっぱなし」をなくしましょう!

1.はじめに

大分前になりますが、2回にわたり運動習慣に関して書かせて頂きました。2009年12月号では、運動習慣は寿命だけでなく健康維持のために非常に重要である事を、2010年10月号では健康上、運動だけでなく日常生活における活動(家事や通勤時の歩行など)も重要であることをお伝えしました(図1)。この日常生活活動にほぼ相当するものとして、NEAT(non-exercise activity thermogenesis)について触れさせて頂き、“NEATを増やす≒座位時間を短くする”事もお伝え致しました。今回は座位時間を減らす事の重要性についてお話しさせて頂きます。

身体活動

2.Sedentary(座りがち)が危険

まず図2をご覧下さい。これは総運動量と余暇の座位時間が死亡率に与える影響を、米国人12万人以上で検証した研究結果(1)です。運動量が最も多い群でかつ余暇の座位時間3時間未満が最も死亡率が低く、これを基準とした場合、運動量が最も少なくかつ余暇の座位時間が6時間以上だと、死亡率が2倍になっています。興味深いのは、総運動量よりも余暇の座位時間を短くする事の方が影響が大きいと感じるところです。つまり、運動習慣はつけた方が良いのですが、それ以上に座位時間を短くする事が非常に重要である事を示していると言ってよいでしょう。

身体活動量と死亡リスクの関係

47件の研究を統合解析した結果(2)でも座位時間が長いと死亡率だけでなく、癌や動脈硬化性疾患の発症、糖尿病など生活習慣病の発症が明らかに増加する事が証明されています。
余暇の座位時間を占める代表的な事柄としてTV視聴が挙げられ、今まで沢山報告されています。そのほとんどでTV視聴時間が長いほど寿命や健康寿命に不利益である事を示しています。しかし、座位行動にはTV視聴だけでなく、コンピューター操作や自動車の運転などもあります。そこで、座位行動別に検証した研究が少し前に報告(3)されました。従来言われているように、TV視聴時間が長いと死亡リスクは高くなりました(図3)。しかしながら、この研究では、コンピューター操作や自動車運転の時間が長い事は死亡リスクを上げませんでした(ただし運動量で補正していますので運動量が十分にある事が前提ととらえて下さい)。また変わった研究として、貧乏揺すりに着目した研究が最近報告されました(4)。この研究によると座位時間が長くても貧乏揺すりをある程度する方では死亡リスクはあまり増加しないという結果でした。つまり座位時間が長い事は不健康に陥りやすいわけですが、特に“ほとんど動かない”のが危険であり、マナー上貧乏揺すりはお勧め致しませんが、もじもじ動くだけでも違う(恐らく貧乏揺すりをする傾向がある方は座位時もじっとしている時間が短いのだと思います)という事のようです。

TV視聴時間と死亡リスクの関係

3.Sedentary break(座りっぱなし中断)やNEAT増加の効果

図4は座りっぱなしが食後の血糖に与える影響を見たものです。ずっと座位保持した場合と座位30分ごとに5分間立つ場合と座位30分ごとに5分間歩く場合の血糖値の経時変化を見ています(5)。座位保持群に比べ、2つの座位中断の群では食後の血糖上昇が抑えられている事が解ります。
また、NEAT増加の効果として、歩行プログラムにより肥満・血圧・脂質などが改善する事が報告(6)されていますし、自動車が主な移動手段の地域において、路面電車の敷設や自転車利用整備などNEATが増えやすい環境整備をする事で肥満防止や死亡率減少の効果がある事も報告されています。

座位時間と血糖値の関係

4.さいごに

日本人は運動不足の方が多いのですが、実は昔も今もあまり変わりません。しかしながら、昔に比べ座位時間は増えNEATは明らかに減少しています。科学の進歩やサービスの進化などにより様々な事が便利になり、動く必要が少なくなったからです。健康維持や増進のためには日頃から意識して座位時間を短くする事が重要です。以前にも書きましたが、“座るよりは立つ。立つよりは歩く(時にかけ足で)”を心がけましょう。TVも座って見るのではなく、立って見るようにしてはいかがでしょうか。さらに、発展させて踏み台昇降やエアロバイクを漕ぎながら見ればりっぱな運動になります。

  • 参考文献・サイト:
  • 1) Patel AV, et al. Leisure Time Spent Sitting in Relation to Total Mortality in a Prospective Cohort of US Adults. Am J Epi 2010;172:419
  • 2) Biswas A, et al. Sedentary Time and Its Association with Risk for Disease Incidence, Mortality, and Hospitalization in Adults. Ann Intern Med 2015;162:123
  • 3) Basterra-Gortari FJ, et al. Television Viewing, Computer Use, Time Driving and All-Cause Mortality: The SUN Cohort. J Am Heart Assoc 2014;3:e000864
  • 4) Hagger-Johnson G, et al. Sitting Time, Fidgeting, and All-Cause Mortality in the UK Women’s Cohort Study. Am J Prev Med 2016;50:154
  • 5) Henson J, et al. Breaking Up Prolonged Sitting With Standing or Walking Attenuates the Postprandial Metabolic Response in Postmenopausal Women: A Randomized Acute Study. Diabetes Care 2016;39:130
  • 6) Hanson S, et al. Is there evidence that walking groups have health benefits? A systematic review and meta-analysis. Br J Sports Med 2015;49:710

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