同友会メディカルニュース

2014年4月号
食習慣と腸内細菌の関係  ~ 代謝異常の視点から ~

1.はじめに

牛肉や豚肉の過剰摂取は動脈硬化性疾患や糖尿病などの代謝疾患のリスクが増加する一方で、魚類の摂取量が多い方やベジタリアンの方はこれらの疾患リスクが比較的低いことが知られています。この理由として、従来は脂肪酸の量やバランスが関係していると考えられてきました。つまり、積極的に摂取したいn-3 (ω-3)不飽和脂肪酸、そして過剰な摂取を控えたい飽和脂肪酸のバランスが重要と考えられてきました(最近では飽和脂肪酸よりもn-6 (ω-6)不飽和脂肪酸やトランス脂肪酸が問題と考えられています)。

しかし、様々な研究結果からこの考え方だけでは説明がつかない事が明らかになりつつあります。例えば、魚類に多く含まれ、有効成分と考えられているn-3不飽和脂肪酸をサプリメントで摂取した場合、魚類を積極的に摂取した場合と同様の効果が得られるわけではありません。また、肉類に多い飽和脂肪酸の摂取量と各疾患の関連はさほど大きくはなさそうです。

つまり、脂肪酸以外の理由があると考えられます。その有力な候補として腸内細菌の関与があると思われます。近年、腸内細菌と様々な疾患との関連が注目されていますが、今回は肥満や代謝異常に関連する研究をいくつか紹介したいと思います。

2.腸内細菌と肥満・代謝の関係

まず動物実験(*1)ですが、腸内細菌を無菌状態にしたマウスに肥満マウスの腸内細菌と健常マウスの腸内細菌を移植したところ、肥満マウスの腸内細菌を移植群では有意に体脂肪が増加しました(図1)。

人においても腸内細菌の遺伝子解析をした研究(*2)で、たくさんの腸内細菌が肥満・血清脂質(コレステロールや中性脂肪など)・血糖など様々な代謝と相関していることが報告されています。一例を挙げますと、Firmicutes 65, Clostridia 101, Clostridiales 373という腸内細菌は、体重や中性脂肪とは負の相関(これらの細菌が多いほど体重や中性脂肪は低くなる)が認められました。腸内細菌は1000種類以上、数は100兆個以上とも言われていますが、このように腸内細菌のバランスが肥満や生活習慣病などの原因になりうる事が示唆されます。

図1

3.食習慣によって腸内細菌は異なる

食習慣によって腸内細菌のバランスは変化すると考えられており、米国の健常者の腸内細菌を調べた研究(*3)などでも示されています。
次にベジタリアンの方とベジタリアンではない方を比較した研究(*4)を紹介したいと思います。まず予備知識として図2をご覧ください。カルニチンという物質は肉類に比較的多く含まれますが、一部の腸内細菌は摂取したカルニチンを分解して最終的にトリメチルアミンN-オキシド(TMAO)という動脈硬化を強力に引き起こす物質に変化させてしまうと考えられています。ベジタリアンに比べてベジタリアンではない方では、カルニチンを最終的にTMAOに変化させてしまう腸内細菌が明らかに多いという結果でした。そして、両方の方々にカルニチンを多く含む試験食を食べてもらったところ、ベジタリアンの方はほとんどTMAOが増加しませんでしたが、ベジタリアンではない方では大きく増加しました(図3)。

このように、食習慣によって腸内細菌のバランスは大きく異なります。そして、腸内細菌バランスが異なると、同じものを摂取しても結果が異なる事が示唆されます。また、牛肉や豚肉の過剰摂取がある方では、腸内細菌は健康上不利益の多いバランスに陥りやすいと考えられますが、そのような方々もカロリー制限や低脂肪かつ食物繊維が多い食事に変更されますと、腸内細菌のバランスが改善する事も報告されています(*3,5,6)。

図2

図3

4.さいごに

今回お話させていただいた食習慣と腸内細菌の関連は、食習慣というものを栄養素や有効成分といった視点だけで判断すると、間違った結論に至る可能性を改めて気づかせてくれます。2013年の8月号でも述べさせていただきましたように、栄養は包括的に考えるべきです。7つの“あ”に注意しつつ、“3つの皿”を毎食意識していただき、健康的な食習慣を心がけてください。

  • 参考文献:
  • *1.Peter J, et al. An obesity-associated gut microbiome with increased capacity for energy harvest. Nature 2006;444:1027
  • *2.Karlsson FH, et al. Gut metagenome in European women with normal, impaired and diabetic glucose control. Nature 2013;498:99
  • *3.Wu GD, et al. Linking Long-Term Dietary Patterns with Gut Microbial Enterotypes. Science 2011;334:105
  • *4.Koeth RA, et al. Intestinal microbiota metabolism of L-carnitine, a nutrient in red meat, promotes atherosclerosis. Nature Med 2013;19:576
  • *5.Ley RE, et al. Microbial ecology: Human gut microbes associated with obesity. Nature 2006;444:1022
  • *6.Turnbaugh PJ, et al. Diet-Induced Obesity Is Linked to Marked but Reversible Alterations in the Mouse Distal Gut Microbiome. Cell Host Microbe 2008;3:213

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