同友会メディカルニュース

2015年12月号
長時間労働は心・脳血管障害の大きなリスク

新しい「働き方」

2014年後半頃から、多くのメディアで、「働き方改革」「残業しない働き方」といった特集が組まれ、オフィスでの長時間労働を削減するための工夫や、在宅ワーク・短時間勤務などにも注目が集まるようになってきています。
戦後70年、「働き蜂」に例えられてきた日本人の働き方を変えていこうと、いまや社会的なムーブメントになりつつあるのかもしれません。

厚生労働省の取り組み

2001年に、厚生労働省は、過去1か月間ないし6か月間にわたって概ね45時間を超えて時間外労働時間が長くなるほど、業務と脳心臓血管疾患の発症の関連性が徐々に高まるとし、脳・心臓疾患に対する労災の認定基準を改正しました(1)。
2014 年6月、過労死等防止対策推進法が公布され、長時間労働対策の強化が喫緊の課題となっている中で、長時間労働対策として、長時間労働削減推進本部、働き方改革推進 プロジェクトチームの設置、2015年1月には、「働き方・休み方改善ポータルサイト」が開設され、都道府県労働局にも「働き方改革推進本部」が設置されています。
「夏の生活スタイル変革(ゆう活)」の言葉も記憶に新しいところであり、12月からは「ストレスチェック制度」が始まります。
長時間労働の“リスク”について、再確認してみましょう。

長時間労働により心・脳血管疾患の発症リスクは明らかに増加する

日本では、正社員・正職員の週労働時間は50時間以上が約3割を占め、平均44.5時間となっていますが(2)、長時間労働は、不健康な生活習慣や、睡眠障害、うつ症状、糖尿病などの発症リスクと考えられています(3)。
また、長時間労働が冠動脈疾患(CHD)※1や脳卒中リスクを高める可能性は、今までも複数の研究で示唆されてきましたが、50万人超、17件の前向きコホート試験のメタ解析の結果が今年発表されました(4)。
欧米、オーストラリアの研究で登録されたCHDのない60万人以上のデータを平均8.5年追跡した結果、年齢、性、社会経済学的状況(SES)※2などで調整後のCHD(新規発症、CHDによる入院または死亡)リスクは、週当たりの労働時間が35-40時間の人に比べ55時間以上の人で13%高くなっています(相対リスク1.13、95%CI 1.02-1.26, P=0.02)。
脳卒中リスクは、約53万人、平均7.2年の追跡期間の解析により、週35-40時間の人に比べ55時間以上の人では33%高く(相対リスク1.33、95%CI 1.11-1.61, P=0.002)、その関連は喫煙、飲酒、身体活動、高血圧、高コレステロール血症などの他の心血管リスク調整後も確認されました。
脳卒中リスクにおいては、労働時間との間に用量依存性の関連も確認され、労働時間が35-40時間の人と比べ、41-48時間の人では10%、49-54時間の人では27%と労働時間の延長に伴いリスクが上昇しています(図1)。

図1: 週労働時間と冠動脈疾患、脳卒中のリスク(年齢、性別、社会的背景で調整)

危険因子を少しでも減らす努力を

今回、性や居住地域の影響はありませんでしたが、長時間労働と心・脳血管障害発症リスクの関連には、繰り返されるストレス反応の影響、また、身体活動量の低下、飲酒量の増加などの行動要因、仕事中は病気の前兆などに気づきにくいことなどが影響した可能性が指摘されています(4)。実際、仕事が忙しくてなかなか病院を受診できない、と相談を受けることもよくあります。
日頃から、仕事の効率化を図り(長時間労働を避け)、また、喫煙、不健康な食事、運動不足、肥満、高血圧、脂質異常症および高血糖などのCHDや脳卒中のリスクのコントロールが重要となります(5)。一度、健診結果とスケジュール帳を見直してみてください。

冠動脈疾患※1:coronary heart disease(CHD)
狭心症や心筋梗塞など、心臓の栄養血管(冠動脈)の病気のこと。

社会経済学的状況※2:socioeconomic state(SES)
社会階層(「身分」や「階級」などの社会的文化的尺度)と経済的階層(財産 や所得などで峻別できる集団)は相関することが多いため、その両者をまとめたもの。一般に職種などをさすことが多い。

参考文献・サイト:

  • 厚生労働省HP  http://www.mhlw.go.jp/houdou/0112/h1212-1.html
  • リクルートワークス研究所 ワーキングパーソン調査2014.
  • Kivimäki M, et al. Long working hours, socioeconomic status, and the risk of incident
        type 2 diabetes: a meta-analysis of published and unpublished data from 222 120
        individuals. Lancet Diabetes Endocrinol. 2015; 3: 27-34.
  • Kivimäki M, et al. Long working hours and risk of coronary heart disease and
        stroke: a systematic review and meta-analysis of published and unpublished data
        for 603 838 individuals. Lancet 2015; 386:1739-46
  • Meschia JF, et al, and the American Heart Association Stroke Council, and the Council
        on Cardiovascular and Stroke Nursing, and theCouncil on Clinical Cardiology, and the
        Councilon Functional Genomics and Translational Biology, and the Council on
        Hypertension. Guidelines for the primary prevention of stroke: a statement for
        healthcare professionals from the American Heart Association/American Stroke
        Association. Stroke 2014; 45: 3754–832

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