同友会メディカルニュース

2018年10月号
副腎偶発腫瘍-「副腎腫大」「副腎腫瘍疑い」と言われたら…

副腎とは

左右の腎臓のすぐ上にあり、体の恒常性を保つために必要な重要なホルモンを分泌している1cm位の小さな三角形の臓器で、外側の皮質と内側の髄質という二つの部分からなっています。

副腎皮質は、ステロイドホルモン(コルチゾール、アルドステロン、性ホルモン)を産生します。コルチゾールとはストレスから体を守り、糖利用の調整や血圧を正常に保つ働きを持ち、生きて行くために必要不可欠なホルモンです。アルドステロンは、塩分やカリウム、水分や血圧の調整に重要な働きをします。また、性ホルモンの前段階のホルモンも少量産生されます。

副腎髄質は、カテコラミンというホルモン(アドレナリン、ノルアドレナリン、ドパミン)を産生します。これらのホルモンは、心臓や血管をはじめ全身に作用し、循環・呼吸・代謝を調整します。非常時には、血圧を上昇させたり、心臓から血液を送り出す力を強めたり、エネルギー源としてブドウ糖を血中に放出させたりする重要な働きをします。

[ 図1 ] 副腎の位置、副腎の皮質と髄質

副腎の位置、副腎の皮質と髄質

偶発腫瘍(インシデンタローマ)

近年、エコー、CT、MRI等の画像診断の発達に伴い、健康診断や種々の疾患の精査過程で、たまたま副腎腫瘍が発見される機会が増えています。このように偶然発見された副腎腫瘍は副腎偶発腫瘍(Adrenal incidentalomaアドレナルインシデンタローマ)と総称されています。腹部CT施行例の 0.3~0.8% に副腎腫瘍が認められ、無症状でも中には機能性(ホルモンなどを産生する)腫瘍や悪性腫瘍があります。

わが国の副腎偶発腫瘍 3,678例の集計では、男性 51.9%、女性 48.1%、平均年齢 58.0 歳で、その内訳は非機能性副腎腺腫が 50.8% と最も多く,次いでコルチゾール産生腺腫 (クッシング症候群、サブクリニカルクッシング症候群)10.5%、カテコラミン産生腫瘍(褐色細胞腫)8.5%、アルドステロン産生腺腫(原発性アルドステロン症) 5.1% となっています。その他、転移性悪性腫瘍、骨髄脂肪腫、神経節神経腫、囊胞、悪性リンパ腫などがあります。

副腎のサイズが大きいほど副腎がんの可能性が高く、4 cm以上の腫瘍では、無症状でも悪性の確率が高いため、手術を考慮します。但し、大きくても、嚢胞や血腫など良性病変の場合もあります。

[ 図2 ] 副腎偶発腫瘍の内訳(文献2.より引用作図)

副腎偶発腫瘍の内訳

副腎偶発腫瘍が見つかったら

症状が無くても、機能性か非機能性か、悪性の可能性がないかを検査します。
早朝空腹で血液検査・尿検査を行い、機能性が疑われる場合は、負荷試験(薬剤によるホルモンについての詳しい検査)を行います。また、造影CT検査、MRI検査、PET-CT検査、シンチグラフィーなども、腫瘍の状態や悪性の可能性の評価に有用です。

機能性腫瘍、悪性が疑われる場合

良性のホルモン産生腫瘍の場合は、手術治療により治癒(ホルモンの正常化)が得られます。ホルモン異常の種類とその程度によっては、術前の投薬や術後のホルモン補充療法が必要となります。悪性の場合も、転移がなければ手術治療により治癒が得られます。副腎腫瘍は悪性であっても進行が緩徐のものも多く、術後しばらく経過して局所再発や遠隔転移が見つかることがあります。副腎皮質癌の5年生存率は60-80%、ステージ(病期)が進行すると30-50%となり予後不良です。また、悪性リンパ腫などの特殊な疾患では化学療法等を行います。

良性かつ非機能性腫瘍の場合

手術せず経過観察の方針になった場合でも、増大傾向やホルモン異常が徐々に現れ手術治療の方針に変わる症例が数%あるため、6~12カ月後にCTやMRIの画像検査、1年後にホルモン検査を行います。その後、1年ごとに3年間(可能であれば10年間)フォローしていきます。

[ 図3 ] 副腎偶発腫瘍の診断・治療の流れ

副腎偶発腫瘍の診断・治療の流れ

高血圧や糖尿病、肥満、それらの悪化が、実は副腎のホルモン過剰(ホルモン産生腫瘍)が原因であることもあります。一度精密検査について、主治医と相談なさってみてはいかがでしょうか。

人間ドックや健診で、「副腎腫大」、「副腎腫瘍疑い」と指摘された場合は、放置せずに内科外来を受診し詳しい検査を受けてみて下さい。

参考文献

  • 一般社団法人 日本内分泌学HP
    http://square.umin.ac.jp/endocrine/ippan/03_disease/02_04.html
  • 一城貴政,他.本邦における5年間の継続的副腎腫疫学調査―最終報告―厚生労働省研究補助金難治性疾患克服研究事業 副腎ホルモン産生異常に関する調査研究,平成 16 年度研究報告書.2005, 121-129.
  • 一城貴政,他.副腎偶発腫長期予後調査最終報告.厚生労働省研究補助金難治性疾患克服研究事業 副腎ホルモン産生異常に関する調査研究,平成 26 年度総括・分担研究報告書.2015, 51-59.
  • Sturgeon C, et al. Risk assessment in 457 adrenal cortical carcinomas: how much does tumor size predict the likelihood of malignancy? J Am Coll Surg. 2006, 202(3):423-30.
  • Fassnacht M, et al. Management of adrenal incidentalomas: European Society of Endocrinology Clinical Practice Guideline in collaboration with the European Network for the Study of Adrenal Tumors. Eur J Endocrinol. 2016, 175(2): G1-G34.
  • Jung-Min Lee, et al. Clinical Guidelines for the Management of Adrenal Incidentaloma. Endocrinol Metab. 2017, 32(2): 200–218.

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