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同友会メディカルニュース

2026年2月号
― 人間ドック・健診で見つかる「心房細動」は重大なサイン ―
心房細動の早期発見と専門医受診の重要性

昨年10月、京都大学および広島大学の研究チームが、就労世代の健康診断データの大規模解析の結果を発表しました。健診で偶然見つかった心房細動は、その後の脳梗塞や心不全リスクが大幅に高まることを示したもので、働く世代でも注意深い対応が不可欠であることが明らかになりました。(働く世代の健診で心房細動発見―脳梗塞5倍・心不全18倍リスク― | 京都大学)

この研究では、全国健康保険協会の35〜59歳、約950万人の健診・医療データを3年間追跡。健康診断の心電図で新たに心房細動が確認された人は毎年約2,400人に1人にのぼり、その後の追跡で脳梗塞リスクは約5倍、心不全リスクは約18倍に増加していることが分かりました。
心房細動は症状が出にくい不整脈であるため、健診時の偶然の発見が将来の重大な心血管イベントの前兆となる可能性が示された点は非常に重要です。

「メディカルニュース」2017年6月号 では、心房細動の治療としてカテーテルアブレーションを紹介しました。その後の9年間で、アブレーション治療件数は飛躍的に増加しました。日本循環器学会が発表している、循環器疾患診療実態調査(JROAD)では、不整脈治療におけるカテーテルアブレーションの件数が年々増加し、2024年には122,533件の実施が登録されています(グラフ)。これは、安全にアブレーションを行う新しい技術が開発されたことと、多くの施設で実施体制が整ったことが理由としてあげられます。

また最近では「パルスフィールドアブレーション」(PFA)という新しい方法が開発され、2024年9月から保険収載されたことで大きな話題となっています。従来のアブレーションは「熱」や「冷気」で心筋を焼灼していましたが、PFAは「電気の力(パルス)」で心筋細胞を選択的に破壊します。このため、周辺の食道や神経を傷つけるリスクが極めて低く、治療時間も大幅に短縮され、より安全でスピーディーな治療が可能になります。実際に、パルスフィールドアブレーションを受けた17,642人を対象にした多施設多国籍研究であるMANIFEST-17K研究では、従来のアブレーションでは発症するリスクがある食道合併症、肺静脈狭窄、持続性横隔麻痺の発症が認められませんでした。

心房細動は、心房が不規則に震える不整脈で、血栓ができやすくなり、心機能低下とも関係します。その結果として脳梗塞や心不全のリスクが高まるわけですが、自覚症状がない人も多く、見逃されがちであるとともに、指摘されても次の一歩に結び付かないことが多い点が大きな課題です。その原因の一つに国民認知度の低さがあるのではないかと感じています。

最近、芸人のなかやまきんに君を起用し、「なかやまけんみゃくん(検脈)」というフレーズで日本心臓財団がACジャパンと連携して行っている広報活動があります。これは、自己検脈や健診を通じて心房細動を発見することの大切さを啓蒙することが目的であり、このような取り組みは非常に意義深く、CMを見た方も多いのではないかと思います。一方で、なかやまきんに君や「検脈」のキーワードが目立つ形となり、現状では「心房細動」という疾病名やその危険性が十分に伝わっていない懸念があります。せっかくのPR機会ですので、国民に心房細動という名称を覚えてもらうとともに疾病リスクを理解してもらう機会として最大限活かされることを期待しています。

検脈は自身で実施する必要があり、慣れていないとわかりにくいこともありますが、健診の心電図検査でははっきりと「心房細動」と診断がでるので、その診断を見逃さないことが大切になります。重要なポイントを以下にまとめます。

  1. 心電図で「心房細動」を指摘された場合は必ず循環器内科を受診すること
    → 軽視せず、専門的な評価と適切な治療・フォローアップを受けることが重要です。
  2. 早期発見による治療・管理で脳梗塞・心不全の予防につなげること
    → 抗凝固療法・生活習慣改善・必要に応じたカテーテルアブレーションなどの選択肢が広がっています。
  3. 人間ドック・健診時の心電図を軽視しない体制づくり
    → 健診は単なるチェックではなく、重大疾病の早期発見の重要な機会です。

最近ではAIを用いて心電図を解析することで、これまでの読影では正常と診断される心電図でも、将来心房細動になるリスクを評価する事も可能となってきました。治療法も進歩する中で、ますますスクリーニングが重要になってくることが予想されます。

心房細動は決して稀な病気ではなく、早期発見がその後の予後を大きく左右します。
特に人間ドック・健診で指摘された不整脈は、そのサインを見逃さずに循環器専門医への受診につなげることが、重篤な合併症の予防につながるので、もし心房細動と指摘されたら迷わず受診をお願いします。

グラフカテーテルアブレーション件数
グラフ:カテーテルアブレーション件数

日本循環器学会 循環器疾患診療実態調査(JROAD)報告書より

同友会からのご案内

参考文献

  1. Screening-Detected Atrial Fibrillation and Cardiovascular Outcomes in Working-Age Adults
    Yuichiro Mori, et.al. Circulation. 2025 Nov 11;152(19):1338-1347.
  2. Safety of pulsed field ablation in more than 17,000 patients with atrial fibrillation in the MANIFEST-17K study.
    Emmanuel Ekanem, et.al, Nat Med. 2024 Jul;30(7):2020-2029.
  3. 一般社団法人日本循環器学会「循環器疾患診療実態調査報告書」

同友会メディカルニュース / 医療と健康(老友新聞)

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