季刊誌「お元気ですか」2025年10月号

清水 宏保さん

「私の健康法」

自分のやりたいこと、自分にとって大切なこと、
仕事をやり続けられる体でいることこそが私にとっての健康です。

元スピードスケート選手
長野オリンピック金メダリスト
清水 宏保さん

―今回は元スピードスケート選手の清水宏保さんにご登場いただきました。長野五輪500mで世界新記録を樹立し金メダルを獲得。ロケットスタートと圧倒的なスピードで日本中を熱狂させた、まさに伝説のメダリストである清水さんに、現役時代の貴重な体験談や今後の夢など数々のお話をいただきました。

スケートとの出会いは
喘息を克服する一歩

私のスポーツ人生は健康課題の克服から始まりました。小学生の頃、喘息持ちで、その克服のためにスケートを始めたんです。他のスポーツも試したところ、どれも長続きしませんでしたが、なぜかスケートの練習だけは自分から「行きたい」という強い思いが生まれたんです。

喘息があるからこそ自分の体をよく知る必要がありました。喘息の経験はトレーニングで体の感覚を掴む上で有利に働いたのかもしれません。それが私のスケート人生の基盤となったんです。

引退後の健康観の変化

現役時代は、あまり健康を意識することはなく、せいぜい体重管理くらいでした。40代後半から徐々に「健康」を意識し始め、50歳を超えてからは一気に危機感が募りましたね。引退後も時間を作ってトレーニングを続けていましたが、50歳を境に体力が著しく落ち、筋肉のつき方や落ちるスピードも明らかに変わりました。視力や動体視力も衰えを感じています。

病と怪我から得た学び

これまで最も大きな怪我というと、腰のヘルニアとすべり症、狭窄症、分離症で、二度手術を経験しました。手術する前は、10分歩いたら休憩が必要なほど辛くて、体力、筋力があるうちに手術した方がいいと決断しました。そして術後二日目からリハビリを始めていました。

一時的に尿酸値が上昇したこともありました。腰の手術後、トレーニングができない時期に体重が増加したことが原因でしたが、ダイエットをして内臓脂肪が下がると尿酸値も下がりました。この経験が食事と運動の重要性を再認識させてくれました。

最近受けた健康診断では、食事1時間後の血糖値が異常に高いことが判明し、糖尿病のリスクがあると診断されました。父が糖尿病の合併症でがんになったという経験があるため、自分も予備軍である可能性を自覚し、今は炭水化物の摂取を控えています。これをきっかけに、3か月おきに採血検査をし、大腸・胃カメラも定期的に受けるようになりました。体調不良があれば、時間を惜しまず「ちゃんと病院に行って見てもらう」ということを徹底していますね。

精神面の強化と座右の銘

もともと「プレッシャーに弱いタイプ」だという認識がありました。長野オリンピックで金を取ることを目標にしていたのですが、開催の2年半前から出場が決定したんです。もちろん結果を出していたからこそではありますが、これは異例の出来事であり、同時にメダル獲得への期待というのも非常に強いものでした。周りの選手からも妬みや嫌味を言われたり、マスコミからも辛辣な批評が続き、まさに極限状態でした。あまりのプレッシャーに悪夢を見たり、血反吐を吐いたり、練習にいく足がどうしても動かないといった経験もしました。「世界大会の優勝者は金メダルを取れない」そんなジンクスも知っていましたが、結局、プレッシャーは「逃げる」のではなく「慣れる」ことが私の対処法だと覚悟しました。その結果、スピードスケート500mで日本人初の金メダル、世界記録も出すことができ、本当に多くの方から称賛をいただきました。

私がスピードスケートを始めた頃は、今に比べるとマイナースポーツであり、新聞で記事が掲載されても写真がないという時代でした。スピードスケートをもっとメジャーにしたい、もっと注目してほしい、という夢は達成できたのではないかと思います。「もうやめたい」と思うことは何度もありましたが、その期間を乗り越えられれば「急な成長が待っている」ということを経験から知りました。これを「熟成期間」と捉え、前向きに進む原動力にしています。今でも落ち込むことは日々ありますが「良いことも悪いことも寝たらリセットする」ことを心がけ、反省点を成長と捉え、次の仕事へ意識を切り替えています。

私の座右の銘は「我以外皆我師」です。他者から学び、それを自分流に応用することで、常に成長し前進するための指針です。とにかく私は「体験型」で、実際に体験しないと理解できないタイプだからこそ、実践を通して学び、応用することを大切にしています。

趣味とこれからの夢

現在は車が好きで、レース参戦が趣味でしたが、趣味から仕事に変りました。時間には限りがありますので、体力があるうちに好きなことをやろうと思っています。

清水 宏保さん

そして今後の大きな夢は「健康」に関わる事業、特に介護分野に貢献したいと思っています。自身の経験から、現在は北海道でデイサービスやリハビリにも対応するセミパーソナルジムの運営を行っています。またこの10月には念願であった「放課後等デイサービス」をオープンさせます。軽度の障害を持つ子供たちに運動機会を提供し、将来的に就労支援からグループホームへと繋がる「親亡き後も預けられる環境」を作っていきたいです。人生の折り返し地点で「あと何年できるのか」というカウントダウンを意識する中で、これこそが社会に貢献できる形だと信じています。

私にとって「健康」とは、「自分のやりたいこと、自分にとって大切なこと、そして仕事をやり続けられる体でいること」です。見た目の健康だけでなく、体調の悪い部分があれば、面倒でも時間を惜しまず、しっかりと専門家に見てもらうこと。そうすることで、人生を悔いなく、好きなことを全力で楽しめる。そう信じてこれからも前向きに進んでいきたいと思っています。(談)

清水 宏保(しみず ひろやす)さん

<プロフィール>
清水 宏保(しみず ひろやす)さん
1974年生まれ。北海道帯広市出身。
1993年、イタリアでのW杯に18歳で初出場し初優勝という快挙を達成し、その直後群馬県伊香保で行われた世界スプリントでも総合3位に入り、世界のトップスケーターとして注目を集める。
1998年長野オリンピックで金メダル1個、銅メダル1個、2002年ソルトレークシティオリンピックで銀メダルを獲得。
現在は有限会社Shimizu所属兼取締役。スポーツキャスター、実業家として活躍中。

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