同友会メディカルニュース

2026年3月号
GLP-1ダイエットの注意点

1.はじめに

「GLP-1ダイエット」という言葉を見聞きした事がある方も多いと思います。GLP-1受容体作動薬(以降GLP-1RAと略します)は2010年に糖尿病治療薬として発売された薬剤です。GLP-1には食欲抑制作用があり、減量効果が期待できるため糖尿病の方以外にも使用されてしまうなど発売当初から社会問題となりました。その後様々なGLP-1RAが発売となり、最近では糖尿病治療薬として発売になったセマグルチド(2021年発売、商品名オゼンピック)とチルゼパチド*(2023年発売、商品名マンジャロ)は特に減量効果も優れている事もあり、両剤とも2024年に肥満症に対する適応が認可されています(商品名はウゴービとゼップバウンド)。私も外来診療でGLP-1RAをよく処方いたしますが、安易な使用は厳に慎むべきですので、今回取り上げさせて頂きました。

  • * チルゼパチドはGLP-1受容体だけでなくGIP受容体にも作用する作動薬です

2.GLP-1RAの減量効果

前述いたしましたように、GLP-1RAの減量効果は食欲抑制作用によるものです。よって治療により食欲が抑制されても、食習慣が変化しなければ減量はできませんので注意が必要です。治験のデータでは生活指導など教育的介入を合わせて行った場合、セマグルチドやチルゼパチドの高用量では平均で15-20%の減量効果が期待できます。

しかしながら実際の減量効果は治験結果の半分程度となります1)。主な理由は、高用量を継続して使用する事が難しいためです。GLP-1RAの減量効果は用量が多いほど強くなりますが、消化器症状(下痢・便秘・腹部膨満感など)が比較的出現しやすく高用量に出来ないケースが少なくありません。またGLP-1RAは比較的高価な薬剤ですので、コスト等が理由となって中断に至りやすい事も理由となります。実際、SURMOUNT-42)という臨床試験でも投与を継続すれば減量が維持される一方で、投与を中止すると徐々にリバウンドしています(図1)。この研究では生活介入も併せて行っているのでリバウンドは比較的緩やかですが、生活介入が不十分の場合はリバウンドが強くなる事が予想されます。最近報告があった研究でも抗肥満薬による治療は生活改善介入群よりも減量効果が大きいものの治療終了後のリバウンドが強く、特に新しいGLP-1RA(セマグルチドとチルゼパチド)では顕著でした(図2)3)

図1チルゼパチド治療を継続した場合と中止した場合の体重変化
図1:チルゼパチド治療を継続した場合と中止した場合の体重変化

JAMA 2024;331:38 Figure2 より作図

図2肥満治療法別にみた治療終了後の体重変化
図2:肥満治療法別にみた治療終了後の体重変化

BMJ 2026;392:e085304 より作図

他にも減量効果が強いからこそですが、GLP-1RAには体脂肪だけでなく筋肉などの除脂肪体重も減少しやすい問題点もあります。筋力の低下は体力(生命力と言っても良いかもしれません)低下に結びついてしまいます。健康のためには、減らしたいのは脂肪であって筋肉量や筋力は維持向上したいところです。実はGLP-1RAによって筋肉量や筋力が低下しない(むしろ増加する)という報告も複数ありますが、これらにしても減量効果があまりないGLP-1RAに限る結果となります。またGLP-1RA投与によって(筋力低下が背景にあると思われる)転倒リスクが増加したとする日本人を対象にした研究結果4)もあり、GLP-1RA投与による筋肉量減少や筋力低下の懸念は払拭できません。さらに食欲抑制効果を背景に必要な栄養素が不足しやすい課題もあります。特に問題となるのが、蛋白質・ビタミン・ミネラルの不足です。

3.GLP-1RAは生活習慣改善とセットで

これらを踏まえますと、安易なGLP-1RAの使用は厳に慎むべきです。GLP-1RA使用時の注意点について書かれたレビューが複数の医学雑誌に昨年投稿されていますが、生活習慣について主に書かれています。3つの報告5-7)を元に主な内容を箇条書きでまとめさせて頂きます。

GLP-1RA使用時に推奨される生活習慣改善のポイント
  • 摂取カロリーは1日1800Kcalまで(女性は1500Kcalまで)を目安とするが、食生活の質が大事。
  • 食事パターンとしては地中海食*、DASH食**、Plant-based(植物性食品を主体にする)を推奨する。
  • 蛋白質は魚介類や植物性食品を主体に1日60g以上摂取する。
  • 食事量の1/2は野菜、1/4を主菜、1/4を主食とする。
  • 推奨する食品:野菜(イモ類など糖質が多いものは除く)、魚介類、豆類やナッツ、全粒穀物(玄米など)など。
  • 制限すべき食品:加糖飲料、アルコール飲料、砂糖、菓子類、ソース、バター、飽和脂肪酸、哺乳動物の肉(牛肉や豚肉など)、加工肉、精製穀物(白米など)など。
  • 有酸素運動を週150分以上行う。
  • 筋肉トレーニングを週2-3回行う。
  • * 地中海食については同友会メディカルニュース 2015年9月号 を参考にして下さい。また地中海食の考え方に近く日本の食文化に即した The Japan Diet(2022年12月号)も参考にしてください。
  • ** DASH食は「Dietary Approaches to Stop Hypertension」の略で、血圧を下げる事を目的とした食事法です。 野菜・果物・豆・低脂肪乳製品を豊富に摂取し、塩分・菓子類・肉類・飽和脂肪酸・加工食品の摂取を控える食事であり、 地中海食との共通点が多いです。

要すれば、「健康的な生活習慣を実践しましょう」ということです。生活習慣を改善して継続すれば、GLP-1RAによる除脂肪体重減少や中止後のリバウンドといった課題を小さくできます。

4.さいごに

肥満症の方にとって新しいGLP-1RAの減量効果は魅力的ではありますが、GLP-1RAに頼りきった減量には問題が多く、健康的な減量のためには生活習慣の改善を併せて行わなければならないことを述べさせて頂きました。食習慣の改善において、甘いものや飲酒といった嗜好品がネックになることが多いと感じています。そしてGLP-1RAにはこれら嗜好品に対する渇望感を和らげる効果がある可能性が複数報告されています。健康的な減量とその維持のためにはGLP-1RAに頼るのではなく、生活習慣改善に取り組みつつアシストしてもらう考え方が必要です。

参考文献

  1. Gasoyan H, et al. Changes in weight and glycemic control following obesity treatment with semaglutide or tirzepatide by discontinuation status. Obesity 2025;33:1657
  2. Aronne LJ, et al. Continued treatment with Tirzepatide for maintenance of weight reduction in adults with obesity The SURMOUNT-4 Randomized Clinical Trial. JAMA 2024;331:38
  3. West S, et al. Weight regain after cessation of medication for weight management: systematic review and meta-analysis. BMJ 2026;392:e085304
  4. Suzuki Y, et al. Longitudinal association of SGLT2 inhibitors and GLP-1RAs on falls in persons with type 2 diabetes. Sci Rep 2025;15:9178
  5. Mehrtash F, et al. I Am Taking a GLP-1Weight-Loss Medication – What Should I Know? JAMA Intern Med 2025;185:1180
  6. Mozaffarian D, et al. Nutritional priorities to support GLP-1 therapy for obesity: a joint Advisory from the American College of Lifestyle Medicine, the American Society for Nutrition, the Obesity Medicine Association, and The Obesity Society. Am J Clin Nutr 2025;122:344
  7. Mehrtash F, et al. Integrating Diet and Physical Activity When Prescribing GLP-1s Lifestyle Factors Remain Crucial. JAMA Intern Med 2025;185:1151

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