同友会メディカルニュース

2026年5月号
プレコンセプションケア ~働く女性の今と未来を守るために~

最近、医療や企業の現場で注目されているキーワードに「プレコンセプションケア(通称:プレコン)」があります。2024年に政府が「プレコンセプションケア推進5か年計画」を策定し、企業や自治体、教育機関で正しい知識を広めるアドバイザー「プレコンサポーター」を、5年間で5万人以上養成することを目指しています。2025年度からは「健康経営度調査」にプレコンに関する項目が追加され、優良な企業ほどプレコンを単なる福利厚生ではなく経営課題として積極的に推進するようになるなど、啓蒙活動や人材育成も本格化して今まさに注目が集まっています。

プレコンセプションケアとは

「プレ(Pre)=前の」「コンセプション(Conception)=妊娠」という意味で、一見すると妊活に関わる取り組みと思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、「将来健やかに子どもを授かる可能性を保持すること」と「現在から将来に渡って自分自身が良好なコンディションで働くこと」は密接な繋がりがあり、妊活中に限った話ではありません。「産む・産まない」の選択を尊重しつつ、妊娠を計画している人だけでなく幅広い世代が「将来のライフデザイン」と「今の健康管理」を紐づけて考える新しいヘルスケアの概念です。

なぜ今「働く女性」に必要なのか

メディカルニュース2024年1月号「働く女性の健康管理について」でも触れていますが、人口減少社会における働き手として期待される女性にとって家庭と仕事の両立は今なお容易ではなく、忙しさから生理不順やホルモンバランスの乱れ、貧血等があっても放置しがちです。これらは現在の生産性の低下(PMS=月経前症候群や更年期症状に伴う体調不良によるもの)だけでなく、現在及び将来の不妊リスクにも直結します。こうした背景から冒頭の国の施策が立てられ、会社側も健康経営の一環としてピル服用や卵子凍結、サプリ購入への費用補助を始めるなど、支援の輪が着実に広がっています。

健診・人間ドックを「プレコン」に活用するには

このように社会共通の概念として普及しつつあるプレコンセプションケアですが、健診・人間ドックの結果をより意識的に見ることで有効に活用することが出来ます。

血液検査で女性に見られがちな貧血は本人の疲労感だけでなく早産や低出生体重児のリスクを高めることが知られており、軽度なうちから早めの対処が望まれます。また血糖値についても妊娠糖尿病(妊娠中に分泌されるホルモンの影響で血糖が上昇すること)になるとやはり早産や難産のリスクに繋がるため、血糖値がボーダーラインであっても油断せずに改善に努めた方が良いでしょう。

その一方で近年は女性の痩せすぎが問題視されており(同友会メディカルニュース2025年5月号)、月経異常や低体重児出産の要因になることが知られています。国際的な肥満度の指標であるBMI(Body Mass Index)は体重(kg)÷身長(m)²で算出されますが、18.5~24.9が適切な範囲であり18.5未満は「やせ」と定義され、排卵障害のリスクが2倍に増えるといった報告もあるので適切な体重を維持することが重要です。

貧血や血糖、肥満・やせの程度については多くの健康診断結果に含まれていますが、プラスアルファでオプション検査を追加すると情報の質を更に高めることが出来ます。一例として甲状腺機能の異常は女性の体調不良の原因として潜在的に有している方も多く、やる気が出ない、記憶力が落ちるなどして本人の生産性が低下するだけでなく、不妊や流産のリスクにも関わります。

感染症の検査も重要で、妊娠中の風疹(3日ばしか)感染は胎児に先天性風疹症候群(白内障、心臓病、難聴など)を来す恐れがあり、麻疹(はしか)も流産や早産のリスクを高め妊婦本人の重症化(肺炎、脳炎など)を来す可能性が高いとされています。B型・C型肝炎も自身の健康に関わるだけでなく母子感染で黄疸や発育不良の原因となりますので、前もってチェックしておきましょう。

他にも梅毒・HIVといった性感染症の有無や、ビタミンD・亜鉛など微量元素の定期的な確認も大切です。最近は対象になる受診者が多い健診機関では卵巣予備能を測るAMH検査などプレコンに特化した検査が用意されている場合もあり、ライフプランを立てる指標に役立てることが出来るようになってきています。

プレコンチェックのすすめ

プレコンの概念は実は女性だけに限らず、その先には男性のプレコン(メンズプレコン)もあるようですが、まずは女性にとって大切な概念として社会と職場における理解を深めていくことが望まれます。下記参考資料にある国立成育医療研究センターのプレコンセプションケアセンターHPで公開されている プレコンチェックシート も参考に、将来妊娠を計画している方は元よりそうでない方も、これからの社会に必要とされる「働く女性のコンディショニング」の視点で自身の健康を振り返ってみましょう。

参考資料

  1. こども家庭庁「プレコンセプションケア推進5か年計画」
    https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/355db5bf-037d-4d17-bd25-d1382da80d5f/4b48d6d0/20250522_councilspreconception-care_01.pdf
  2. こども家庭庁「はじめようプレコンセプションケア」
    https://precon.cfa.go.jp/
  3. 国立成育医療研究センター プレコンセプションケアセンターHP
    https://www.ncchd.go.jp/hospital/about/section/preconception/
  4. 人的資本経営時代の新常識「プレコンセプションケア」とは https://www.nissay-biz-site.com/article/u92bzdux

同友会メディカルニュース / 医療と健康(老友新聞)

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