同友会メディカルニュース

2026年7月号
若年女性の「やせ」について

厚生労働省が実施した令和元(2019)年の国民健康・栄養調査によりますと、BMI 18.5kg/m²未満の「やせ」の人の割合は、男性3.9%、女性11.5%でした。
「やせ」は、若い女性に多いことが特徴です。

また、糖尿病でない方が、GLP-1受容体作用薬を美容痩身目的で使用したため、本来使用されるべき糖尿病の患者に薬が回らない事態が発生し、社会問題になりました。

GLP-1受容体作用薬とは、食事の際に体内で分泌されるホルモン「GLP-1」の働きを助け、血糖値が高いときに膵臓からのインスリン分泌を促し、血糖値を下げる薬です。さらに、胃の動きを遅らせて食欲を抑制し、体重減少効果も期待できるため、2型糖尿病だけでなく肥満症治療薬としても使用されます。また、注射薬と内服薬があります。

GLP-1受容体作用薬の詳細につきましては、同友会メディカルニュース2026年3月号「GLP-1 ダイエットの注意点」を御参照下さい。

今回は、若年女性の「やせ」について解説させて頂きます。

1. 女性の痩身傾向

厚生労働省が実施した令和元(2019)年の国民健康・栄養調査によりますと、日本の成人女性の11.5%が「やせ」に分類されており、この比率はOECD(経済協力開発機構)に加盟している38ヵ国中で最も高い水準です。

「やせ」の割合は、若年(15~19歳、20~29歳)で高いですが(2019年で20%強)、30代や40代でも増加傾向がみられました(図1)。

また、20代女性の体形は、戦後約70年間(1950~2018年)で平均身長が8.4cm(150.3→158.7cm)伸びましたが、平均体重の増加は3.3kg(49.7→53.0kg)にとどまり、その結果、平均BMIが約2kg/m²減少し(22.0→20.1kg/m²)、全体として背が高く細身の体形へと変化しています。

さらに、日本人の1~25歳のBMI成長曲線からは、乳児期に増えた体脂肪が幼児期に減少し、その後成人期に向けて再び増加する「体脂肪リバウンド adiposity rebound(AR)」が男女ともに早期化していることが判明しました。ARが早期化すると成長完了後のBMIが高くなるはずですが、女性ではARの早期化にも関わらず、10歳前後からBMIの増加が鈍り、10代後半以降のBMIは以前より低下していました。この10代での体重増加が不十分であることが、成人以降の「やせ」につながっていると考えられます。

2.「やせ」の健康への影響

「やせ」の健康への影響につきましては、同友会メディカルニュース2025年5月号「女性の痩せによる健康障害について」を御参照下さい。

3. 健康上の問題のない「やせ」と「不健康なやせ」

「やせ」には、元々細身の体形の人(体質的やせ)や、適切な食事・運動により骨や筋肉などが維持された人のように、健康上の問題がない「やせ」が含まれています。食べ物のカロリーや体重のみに注目したダイエットで減量した、いわゆる「不健康なやせ」と区別する必要があります。

また、肥満者(成人男女)の9割以上が減量を望むのに対し、「やせ」の人で増量を望む人は5割にとどまると報告されています。「やせ」の人は、自身の体形への不満度が低い傾向があります。「不健康なやせ」であったとしても、問題意識を持ちにくく、適正体重を目指しにくい人が多いと推測されました。

4. 女性の痩身願望の背景

若年女性は、他の年代の女性よりも、体形において「他者との比較」に敏感であることが知られています。「やせ」を礼賛するメディアやSNSなどの利用が、若年女性において、瘦身体形への理想化や、他者との外見比較を促している可能性があります。

例えば、メディアやSNSに登場するアイドルやモデル、女優、アニメのヒロインなどは、圧倒的に細身であることが多いです。この女性たちが、他者から賞賛を獲得している姿を見ることによって、「やせ」体形と社会的成功が結びつくメッセージとなっているのではないかと考えました。

また、若年女性における痩身願望を持つ人の割合は、人口規模の小さい地域よりも大都市部で高くなっています。「やせて美しくなる」ことへの文化的・社会的圧力が強い環境に身を置いている影響が考えられます。

5. おわりに

ボディイメージには、身体不満や体形認知の歪みを伴う「ネガティブ・ボディイメージ」と、自身の身体を受容し好意的に評価し尊重する「ポジティブ・ボディイメージ」があります。

若年女性のやせ問題解決には、「ネガティブ・ボディイメージ」を低下させ、「ポジティブ・ボディイメージ」を高めることが重要です。

そのためには、ボディイメージのずれの是正に向けたアプローチや、社会全体で「やせ」が美しく値打ちがあるかのような固定観念を修正していくこと、正しい健康情報へアクセスできる環境整備などが求められます。

参考文献

  1. 永井成美 : 女性のやせと健康への影響-どのような栄養と運動が望ましいのか―. Otuka & NSCA Jap Sports Nutr Acad, 28, 9-16, 2021.
  2. 永井成美 : 若い女性のやせの背景とその健康影響. 肥満研究, 24, 22-29, 2018.
  3. Tylka, et al : The Body Appreciation Scale-2 : Item Refinement and Psychometric Evaluation. Body Image 12, 53-67, 2015.
  4. 厚生労働省 令和元年国民健康・栄養調査報告
    https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/eiyou/r1-houkoku_00002.html
  5. 「日本人の食事摂取基準」策定委員会:「日本人の食事摂取基準(2020年版)」策定委員会報告書,令和元年12月,65.
    https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_08517.html

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